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【10月のAudible読書メモ③】



『タイムマシンに乗れないぼくたち』寺地はるな

人知れず抱えている居心地の悪さや寂しさ。
そんな感情に寄り添い、ふと心が軽くなる瞬間を鮮やかに掬い取る。
注目の著者が放つ七篇。

「コードネームは保留」
楽器店で働く優香は、人知れず“殺し屋”の設定を生きることで、
味気ない日々をこなしていた。

「タイムマシンに乗れないぼくたち」
新しい街に馴染めない「ぼく」は、太古の生物が好きで、博物館が唯一落ち着く場所だった。
ある日、博物館で“現実逃避”をしているスーツ姿の男性と出会い――

「深く息を吸って、」
息をひそめるように日々を過ごすかつての「きみ」に、私は語りかける。

「対岸の叔父」
町いちばんの変わり者、それがぼくの叔父さんだった。

孤独と「戦う」わけではなく、また「乗り越える」でもなく、
仲良く手を繋いでとまではいかないけれども、
孤独とちょうどよい距離を保ちながらともに生きていこうとするような、
そういう人びとの物語を書きました。
――寺地はるな

Amazon Audible HPより

人を「頑張れ!」と言って励ますのは、実は、簡単で冷たいのだと思わされる。この短編に出てくる人たちのように、温かく寄り添うことができる人になれたらと思う。

くすっと笑えたり、心が温かくなったり、静かな余韻が残るお話。


『島はぼくらと』辻村深月

この島の別れの言葉は「行ってきます」。きっと「おかえり」が待っているから。   
瀬戸内海に浮かぶ島、冴島。朱里、衣花、源樹、新の四人は島の唯一の同級生。フェリーで本土の高校に通う彼らは卒業と同時に島を出る。ある日、四人は冴島に「幻の脚本」を探しにきたという見知らぬ青年に声をかけられる。淡い恋と友情、大人たちの覚悟。旅立ちの日はもうすぐ。別れるときは笑顔でいよう。

Amazon Audible HPより

島という設定が随所に利いているストーリーだった。キーとなる大人が優しかったり、ちょっぴり腹黒かったりするのがスパイスになっていてよかった。最後の展開が早くて、途中どこか聞き逃している部分があったのかもしれない、ともう一度最初から聴き直してしまった。すると、新たな発見や伏線を拾うことができて2度楽しめた。他の作品とリンクしているらしいので、そちらも気になる。


『犬がいた季節』伊吹有喜

1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら…。昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を、瑞々しく描く青春小説の傑作。

Amazon Audible HPより

瑞々しくて、美しくて、懐かしい物語。時代、時代に起きた実際の大きな事件や自然災害、流行した音楽やファッションが織り込まれているので、昭和が終わる頃、10代後半ぐらいだった人には、ものすごくはまる話だと思う。

物語に出てくる匂いや音楽、絵によって読みながら自分の五感を刺激されたせいだろうか、18歳の時に考えていたこと、過ごした時間、甘酸っぱい気持ちを色鮮やかに思い出した。

絵を描くことで、思いを永遠に残すことができる人が羨ましくなる。


スマホにダウンロードした本のストックがなくなると不安になる今日この頃。次は何の本にしましょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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