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「#シッティングバレーボール 観戦のすゝめ 〜 初めての #シッティングバレーボール 観戦を通して見えてきたもの 〜」 #コラム #volleyball2 #vabotter #バレーボール #パラスポーツ

―― 千葉へ、人生初のシッティングバレーボール観戦


 座った状態でプレーするバレーボール、「シッティングバレーボール」

 何度か映像で目にしたことはあったものの、実際に会場に足を運んで観戦したことはないこの競技の国際大会が、5月に千葉ポートアリーナで開催されることをネットで知り、「これは行くしかない!」と友人を誘って千葉まで観戦に行ってきました。

 『バレーボール・スクエア』へ寄稿した過去の記事でも書いていますが、私はイタリアのバレーボール(特に女子)を応援しており、この大会にイタリアチームが参加することも、観戦を決意する後押しになりました。


 今回観戦したのは「シッティングバレーボール チャレンジマッチ2019」という大会で、なんと16年ぶりに日本で開催された国際大会でした。イタリアの他に世界ランキング2位の中国、同6位のカナダと、日本の4チームが参加しました。


・シッティングバレーボールの世界ランキング(男女)は下記リンクを参照


 来年開催される東京パラリンピックでは、シッティングバレーボールの会場が千葉の幕張メッセとなることに合わせ、今回千葉ポートアリーナでこの大会が開催される運びとなったようです(*1)。


◎ シッティングバレーボールって、どんな競技?

 シッティングバレーボールの名前は知っていても、競技の中身については、私も観戦当日までわからない点が多く、会場で配布されていたガイドブックはとても役に立ちました。


 シッティングバレーボールは6人制のバレーボールと同様、ラリーポイント制を採用しており、1セット25点先取の5セットマッチで行われる(5セット目は15点先取)点も、6人制バレーと全く同じです。

 使用するコートやネットは、座ってプレーすることを考慮して設定されており、コート全体のサイズはサイドラインが10メートル、エンドラインが6メートルと、6人制バレーのサイズよりも小さく(6人制はサイドラインが18メートル、エンドラインが9メートル)なっています。

 一方、ネットの高さも男子は1.15メートル、女子は1.05メートルと、座った状態のままでもスパイクが打てる高さに設定されています。

 6人制バレー同様、ローテーションのルールも存在します。セッターやミドルブロッカーなど、ポジションも分かれており、リベロのルールも採用されています。しかし、コートを自在に動き回れるわけではないので、どのポジションであっても全てのプレーをそつなくこなすことが求められてきます。


 さらにシッティングバレーボールでは、障害の程度によって各選手にクラス分けがなされます。四肢切断など中程度から重度の障害の場合は「SVⅠ」、人工関節や軽度の機能障害の場合は「SVⅡ」と分類され、登録選手12名のチーム編成においてSVⅡの選手は最大2名までしか登録することができません。また、コートに入ってプレーできるのも、SVⅡの選手は1名のみという制限があります。


 シッティングバレーボールならではのルールも、少しご紹介しましょう。

 「シッティング」の名のとおり、プレー中におしりがコートから離れると【リフティング】という反則を取られます。レシーブの際に、少しの時間おしりがコートから離れる程度であれば反則にならないようですが、その基準は審判に委ねられるようです。

 さらには6人制バレーと違い、サーブをブロックできるのもシッティングバレーボールの特徴です。

《相手のサーブが打たれた場面。前衛のプレーヤーはサーブの軌道を予測して、
ブロックできるように腕をネット上に出している》


 もっと、シッティングバレーボールの詳しい内容が知りたい! という方は、公益財団法人日本障害者スポーツ協会が作成した『かんたん! シッティングバレーボールガイド』を、ぜひご覧ください。

http://www.jsad.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_19.pdf


◎ 6人制バレー以上に求められる1本目の「時間的余裕」

 千葉で開催された「チャレンジマッチ2019」は、5月23日(木)から5月26日(日)の4日間の日程で行われました。

 私は友人と一緒に土曜日と日曜日に足を運ぶことに。この2日間は会場近くの広場でパラスポーツ(障害者スポーツ)応援企画も行われており、大会を観戦する人たちには親子連れの姿も多く見られました。

 土曜日は予選ラウンドの最終戦、日曜日は優勝決定戦と3位決定戦が行われました。個人的に応援しているイタリアは、金曜日の予選ラウンドで世界ランク上位のカナダに見事勝利し、リオのパラリンピックで銀メダルを獲得した強敵・中国と優勝決定戦を戦うことになりました。

 実際に試合が始まると、6人制バレーとの違いに戸惑いを覚えながら、試合展開を見ていました。

 まず感じたのは、コートの大きさの「感じ方」の違いです。先ほどシッティングバレーボールの競技の説明の際、コートのサイズについて述べましたが、実際会場でコートを見るとその「狭さ」を実感します。コートが狭いのに加え、座った状態でプレーするためか、6人制バレーより対面する選手同士、味方選手同士の距離がぐっと近く感じられます。

 放たれるスパイクがディグされるまでの時間も6人制バレーより短くなるため、よりスピーディな試合展開になりやすいように感じました。

 さらに、座ってプレーすることによる動きの制約も、6人制バレーとの大きな違いです。選手は腕の力を使って移動しますが、おしりを離すとリフティングの反則を取られるため、速い移動はなかなかできません。

 この点は、ブロックにおいて、横移動が素早く行えないことにつながります。ブロックに当たったボールがコート外へ弾かれてしまうと、追いかけることも難しくなります。一方、スパイクにおいても、セットが流れるとスパイカーが打ちそびれるということもあります。

 これらの特性を踏まえてシッティングバレーボールをプレーすることが、試合に勝利するための鍵になります。

《イタリアと中国の優勝決定戦の1コマ。
試合を終えた日本やカナダの選手もコートエンドから試合の行方を見守っていた》


 イタリアと中国の優勝決定戦は、中国がその実力をいかんなく発揮して、セットカウント3-0でイタリアを下しました。中国は、スパイクやサーブでイタリアを圧倒していましたが、何より上手いと感じたのは1本目の処理です。

 先ほども述べたとおり、シッティングバレーボールではおしりをコートにつけたまま腕の力を使って移動するため、ボールの落下点に素早く入るのが難しいという特性があります。中国の選手は1本目のボールをコート中央に山なりに高くあげ、2本目のボールを触る選手に時間的余裕を持たせます。時間に余裕があれば、次にボールに触る選手も慌てずにボールの落下点に入ることができます。

 この「1本目のボールを余裕を持ってあげる」ことによる利点のもう一つは、攻撃の準備ができるということです。6人制バレーのようにスパイクするために必要な「助走動作」はシッティングバレーボールにはありませんが、それでもスパイクがいつでも打てる体勢が整っている選手が多くいれば、横移動が素早く行えない相手ブロッカーの数を、効果的に減らすことができます。

 以上のことは6人制バレーでも同様のことが言えると思いますが、シッティングバレーボールでは動きに制約があるからこそ、1本目の処理の重要性がより際立つように感じました。


◎ 来年の東京パラリンピックでは、シッティングバレーボールも観に行こう!

 このコラムを読んでくださった方の多くは、きっとバレーボールという「競技」に興味を持っている方だと思います。シッティングバレーボールの国際大会は、冒頭でも述べたとおり日本では頻繁には開催されておらず、テレビやネットで見かける機会もあまりないため、日本にとってはあまり馴染みのないスポーツかもしれません。

 しかし、来年には東京パラリンピックが開催されます。これまで望んでも手が届かなかった、シッティングバレーボールを目の前で観戦できるチャンスがやってきます。

 シッティングバレーボールの開催地は冒頭で述べたとおり、千葉の幕張メッセです。

 チケットの価格は1,400〜3,600円と、6人制バレーボールのチケット(最高 54,000円)に比べ、かなり良心的な値段設定となっています(*2) 。

 ぜひこの機会に、会場まで足を運んで、普段見慣れたバレーボールとはひと味違う、シッティングバレーボールの面白さを感じてみてください。

(*1) 仮想東京パラで学んだシッティングバレー(『NHK NEWS WEB 2019年5月27日』より) 
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190527/k10011930721000.html

(*2) 東京2020パラリンピック観戦チケットについて(『公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 公式サイト』より)
https://tokyo2020.org/jp/games/ticket/paralympic/


photo & 文責:Masayo Iwabuchi
2011年ワールドカップ女子大会のテレビ観戦をきっかけに、シニアの国内および国際大会を中心に観戦。 現在はイタリア女子やオランダ女子を応援中。





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