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「ハンズ・アップ」は本当に必要なのか?!(p043)

 「セット・アップ定位置」に関する記述と同様に、白ペデの内容の中で、皆さんにイマイチ伝わっていない部分ではないかと思います。

 その一要因として、ブロッカーの配置、すなわちブロック陣形(シフト)に関わる用語(【バンチ・シフト】【スプレッド・シフト】【デディケート・シフト】)における写真で、ブロッカーが揃いも揃って、ものの見事に古典的な「ハンズ・アップ」の体勢で構えていることが災いしているでしょう。。。(次回のメジャー・アップデート時には、必ず修正いたします)

 「ハンズ・アップ」するメリットは、一般に「ハンズ・アップした方が、手をネットの白帯までの距離が短くなるため、手を短時間で白帯の上に出せる」点にある、と認識されているように思いますが、果たしてこれは本当でしょうか??

 p122 にある参考文献として掲載した、こちらの論文をご覧下さい。
Journal of Sports Science and Medicine(2011) 10, 452-45

 これによれば、従来から行われてきた「ハンズ・アップしながらブロックに跳ぶ方法」に対して、スパイク動作のように腕を振ってブロックに跳ぶ【スイング・ブロック】(p043)(論文の中では【スイング・ブロック】をさらに、 "Swing" と "Chicken Wing" の2種類に区別して扱われています)の方が、「より短時間で手を白帯の上に出せる」だけでなく、「より高く、より前に(相手のコート側に)手が出せる」ことが報告されています。

 では、なぜ?! 「ハンズ・アップ」がこれまで、強く推奨されてきたのでしょうか?

 その根拠とは言えませんが、その手がかりが以下に紹介する論文にあるように思います。

・「バレーボールにおけるブロック時の選択肢数がブロック動作時間に及ぼす影響」(『バレーボール研究』第14巻第1号より)

 この論文は、【リード・ブロック】における「ヒックの法則」の重要性に言及した注目すべき論文でもあります。


 その内容はさておき、注目して頂きたいのは、ブロック動作に要する時間を測定する際に「ボール型のセンサーをある高さに設置して、それに触れるまでの時間を測定している」点です。

 この論文における実験では、ボール型センサーの一番高いところが275cmの高さになるように設置されています。ということは、センサーの一番低いところは255cm程度の高さでしょうか。その高さにあるボールに手が触れるまでの時間が計測されるわけです。しかも、被験者の指高の平均値は250cmを超えています。

 要するに、この実験において被験者は、必ずしも「全力でブロックに跳ぶ必要がない」わけなのです。

 一方、先ほど提示した "Journal of Sports Science and Medicine" の論文では、被験者は設置されたセンサーに手を触れることを要求されているのではなく、あくまで「全力でブロックに跳ぶこと」が要求されているのです。

 ですから、ブロックに跳ぶ毎に被験者は、「今のブロック動作は全力で跳んだか?」と尋ねられ、そうでなければやり直しとなる方法で計測されています。

 果たして、どちらの方法が、実際の試合の場面に近い状況でしょうか??

 参考のため、また別の論文を提示しておきます。

「バレーボール男子世界トップレベルチームの戦術プレーに関する研究」
(『バレーボール研究』第11巻第1号より)

 これも内容はさておき、論文途中に「表1」2006年世界選手権における、ブラジル男子とイタリア男子の両チームのスパイク打点高が、n 数が少ないながらに提示されており、両チームとも310cmを越えています。

 この論文では打点高はボールの中心で計測されているため、先ほどの論文におけるボール型センサーに喩えるなら、320cmを越える高さに設置されたボール型センサーを意味しています。

 それでも皆さんは、まだ「ハンズ・アップ」を推奨しますか?!


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