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機能的価値の競争とデジタルマーケの狂騒から抜け出すための情緒的価値とは?

前回は、インテリアショップでの私の個人的な体験をもとに情緒的価値についてお話しました。

前回はこちら

機能的価値と情緒的価値の違いをうっすらつかんだところで、両者がもたらす顧客への変化について考えてみたいと思います。


「思いもよらない提案」から生まれた情緒的価値

私の個人的体験を端的に説明すると、
「セールを待った方が安く買える」という一般的にはベンダーやサプライヤーの利益につながらない、むしろ不利益になるような提案を受けたことで、店員やショップへのロイヤリティが高まった。
という話でした。

「安いから」「品揃えがいいから」という移ろいやすいものはもちろん「使い勝手がいいから」「長持ちするから」といった製品やメーカー、ショップへの信頼につながる事柄もすべては機能的価値に分類されます。

“ブランド”も情緒的価値の一つ

一方、情緒的価値は、物そのものの価値だけでなく、そのものを体験を通じて得られる「感情を動かされる価値」のことを指します。

過去に紹介したフェラーリROLEXスターバックスなどもそうですが、

世界的な“ブランド”を持つ企業は、製品そのものではなく、そこにまつわる時間と体験を売ることで自身の価値を高めています。

機能的価値だけでは果てしない競争が続く

ブランド力とはまた別の話になりますが、機能的価値で選ばれる商品、店舗、企業は「一度は購入してくれるけど他との比較で機能的価値が劣るとわかればすぐに離れてしまう」という不安定さを持っています。

機能的価値を魅力として語ってくれるお客さまは、確かにリピーターになってくれて、何度も商品を購入してくれる“優良顧客”ではありますが、同業他社と比べて圧倒的な優位性を持っているとは言い難いのです。

情緒的価値はファンをつくりロイヤリティを生む

しかし、情緒的価値を認めて選んでくれている顧客は、いわばその商品や企業のファンでもあるので、価格ドットコムで価格と機能を比較することなく、その企業がつくった製品を手に取ることを第一選択肢にしてくれます。

言葉の定義はいろいろありますが、マーケティングでは、商品やサービスや商品のリピート回数が高く、多くのお金を使ってくれる顧客のことを優良顧客といいます。

一方で、商品やサービス、企業に対して信頼を寄せ、愛着を持つ顧客のことをロイヤルカスタマーと呼びます。ロイヤル(loyal)は「忠誠心」を表す英語ですので、顧客というよりファンやサポーターに近い存在だといえます。

ロイヤルカスタマーのつくりかた

優良顧客をいかにロイヤルカスタマーにしていくか? は、物価高、原材料費高騰に苦しむ現代を生きる企業では、「それができれば成功できる」という重要なファクターとして認識されていますが、優良顧客は機能的価値、ロイヤルカスタマーは情緒的価値で選んでいるということに気づけば、あとは情緒的価値を追求するだけ。
商品、モノやコトを提供する企業が、顧客との間にどんな関係性を築けるのか? 一つはサービスや製品に対する信頼でしょうし、一つは、例えばバリュエンスが積極的に取り組んでいる、すべての人の生活に関係する環境負荷、サステイナブルな取り組みを通じた「物語性」にあるのかもしれません。

バリュエンスが展開するブランド買取専門店『なんぼや』でも、過去の買取顧客の構成を見ると、初めて利用されるお客さまと二度目以降のお客さま、いわゆるリピーターでは、リピーターからの売上が半分以上となっていて、リピーターのお客さまに支えられていることがわかります。

「顧客全体の2割の優良顧客が売り上げの8割を占める」パレートの法則のとおり、優良顧客に向けた施策を売っていくのはもはや常識ですが、『なんぼや』では、単に優良顧客を増やすのではなく、1人でも多くのお客様により心の通った「ここでなければ売らない」というロイヤルカスタマーになってもらうための施策を始めています。

リピーターに注力しつつ、新規顧客もないがしろにしない

さらにロイヤルカスタマーとの関係を構築することは、新規顧客を軽視したり、集客が鈍るということにはつながりません。

私のインテリアショップでの体験を例にとれば、思ってもみなかった接遇を受けた私は、それを多くの人にポジティブに話します。その店員、お店、企業を褒めちぎり、もしかしたらそこでの買い物を友人に勧めることすらしちゃうかもしれません(笑)

これこそまさに、ロイヤルカスタマーになる可能性が高い新規顧客の獲得につながる、質の高い口コミマーケティングといえます。

デジタルマーケで消耗する時代は終わり?

ここ数年、私の実感としてSEOやリスティング、広告を使ったマーケティングに翻弄され、消耗している感覚がありました。

これらの施策は、例えばGoogleの仕様が変わってしまえばたちまち通用しなくなり、その仕様に合わせて再度調整を行わなければいけなくなります。つまり主導権を他の誰かに握られているマーケティング手法を採ることになっているのです。

インフルエンサーを使ったバイラルマーケティングも、情報を精査する現代の消費者には通じなくなってきています。

顧客の心を動かすような体験を通じて、ロイヤルカスタマーを増やすことができれば、利益率が上がるだけでなく、これまで使っていた広告費を大幅に削減できます。

誰かが決めたルール、誰かのさじ加減に左右されることなく、ファンをつくることができるとするなら、そこに投資をすることが企業としての確かな財産になるはずです。

もっと言えば、小手先のマーケティング手法やテクノロジーでは本当の意味でお互いの心が近づくことはありません。

費用対効果、機能的価値ではなく、情緒的価値で選んでもらうためには、むしろ超アナログな方法が有効なのかもしれません。

「なんぼやに売る理由」「ALLUで買う理由」「なぜバリュエンスのサービスを利用するのか」の情緒的価値に基づいた理由をつくることこそが、これから全社を挙げて取り組んでいかなければいけないことだと強く感じています。

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