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賽の河原も令和だからさ

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「この令和に石積み作業ゲーって、時代遅れじゃないですか」 あの世とこの世の境界線『賽の河原』で働く鬼瓦は、石を積んでいる少年に「鬼さんが僕の積んだ石を破壊してくれるおかげで、リ… もっと読む
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賽の河原も令和だからさ 3話 「親が子を想うのは当たり前じゃないんだからさ」

 Demon Gameが新潟・青森拠点で導入されると、そのゲーム性の高さに三途川界隈で激震が走った。  まず、賽の河原へと強制送還された子どもたちは何も知らぜずに放置する。その人数は時期によって異なるが、多いときは一度に十人程度。わけも分からずにさせておくことで、ここは現世なのか異世界なのかを曖昧にした。最初のオリジナルの鬼が登場して一人目の犠牲者が出るまでの様子は、まさにデスゲームの緊張感そのものだった。一緒に困難を乗り越えようと意気込んでいた矢先、登場した鬼に一気に空気を

賽の河原も令和だからさ 2話 「積みゲーしかない時代じゃないんだからさ」

「もう積みゲーしかない時代じゃないんです。親不孝な子どもに適切かつ効率よく苦痛を与えるには別の方法が必要だと考えます」  賽の河原青森エリアを任されている餓鬼《がき》がプロジェクターに向けてポインタを振る。理路整然とした主張は、曲がった背中と異様に出っ張った腹には不釣り合いに映る。  まずはここまでで質問はありますかと餓鬼は聴衆に尋ねる。すると、審査員のひとりである菩薩が顎を触った。 「僕もね、最近は救いの幅が小さいなって思ってたんだ。なんていうの、サプライズ感? このま

賽の河原も令和なんだからさ 1話 「令和だからさ」

「鬼さんが僕の積んだ石を破壊してくれるおかげで、リセマラ《やり直し》の手間が省けてます」  それは鬼歴数百年の鬼瓦《おにがわら》ですら、初めての経験だった。  今しがた彼が作った石の塔を思い切り蹴飛ばして木っ端微塵に破壊した。しかし直後に、少年は嬉々とそう言った。   「今なんて?」 「石って、形が悪いと積み上げるの大変じゃないですか。効率よく積み上げるとしたら、やっぱりいい形の石を見つけないといけなくて。鬼さんが蹴り飛ばして形を変えてくれるおかげで効率化が」 「違う、そう