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ウィンザーノット

転職活動中にて斡旋会社を通じて紹介された会社へ面接に行った。久しぶりにスーツに袖を通しネクタイを結ぶ。高校3年間は毎朝ネクタイを結んでいたので結び方は手が覚えており難なく結べた。結び方はウィンザーノット。祖父が教えてくれた結び方だ。ウィンザーノット以外も練習はしたが祖父が教えてくれたこの結び方以外はどうにも上手く決まらない。

ネクタイを結ぶとき自分の手に祖父の手が重なる。亡くなってもう10年か。高校入学時に鏡を見ながらネクタイの結びかたを教えてもらった記憶がある。やけにやさしく丁寧に教えてくれた気がする。祖父なりに孫の成長が嬉しかったのだろうか。祖父は若いときに大病して高校を辞め、その後も身体のハンデを抱えながらタクシー運転手、保険代理店の営業など様々な仕事をして家族を養ってきた。僕が幼い頃は仕事場へ一緒に連れて行ってくれたりしたので、スーツ姿で働く祖父をよく覚えている。幼心にカッコイイと思った。

年々僕の顔は祖父に似てくる。小さい頃から祖父の友人には、よく似てる、よく似てると言われてきたが、実感は無かった。20歳過ぎ頃から自分が顔も体型もそっくりだと意識し出した。少し面長で骨張った顔立ち、細い体型。年を追うごとにその特徴は祖父により近づく。遺伝子ってすげえなと思う。

今日は暑い。面接を終えて上着を脱ぎネクタイを解く。車の中で熱い吐息を吐きながら思った。
スーツ仕事は無理だな。

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