【No.1019】 手中の鳥を探せ
「エフェクチュエーション」という起業家に共通する思考パターンをまとめた理論があります。
その中に「手中の鳥」という原則があります。
これは「すでに持っている鳥を大切にしよう」ということで、つまり「必要なものはすべて自分の手元に持っている、それを元に新しいものが生み出せる」ということを意味します。
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言われてみればそれはそうなのですが、問題は、自分の手中に何があるのか、何がその「手中の鳥」なのかを自分で理解するのが難しいことです。
先日美容師さんとの会話からその一端を感じました。
僕のお義母さんは、純日本人ですが、現在ハワイに住んでいます。これに対して美容師さんが「(僕の)娘さんにとって、自慢のおばあちゃんですね」と言うのです。
意味が分からなかったので詳しく聞いたところ、
例えば、夏休みにどこに行ったのかと聞かれた時に、娘さんは「おばあちゃんのところ、ハワイに行ったよ」と答えられるわけです。
それってカッコよくないですか?と。
しかも、よくわからない国ではなく、日本人にとって憧れのハワイ。最高じゃないですか、と教えてもらいました。
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確かに!
僕は全く気づいていませんでしたが、確かに娘にとっては自慢のおばあちゃんかもしれません。
小学生時代を思い出すと、おじいちゃんやおばあちゃんが遠くに住んでいる友達を羨ましく思っていました。なぜなら、夏休みになって帰省をすると、それがほとんど旅行みたいな体験になるからです。
僕の場合は、おじいちゃんおばあちゃんの家まで車で2時間だったので、小旅行でした。
僕よりも近所に祖父母が住んでいる友達は、「うちのじいちゃんばあちゃん、もっと遠くに住んでくれたらいいのに」と言っていました。もちろん、祖父母からすれば、そんな恨み言はいわれのないことです。
でも子供たちからしたら、そう思うのも無理はない。完全に忘れていましたが、確かに祖父母が海外に住んでいるなんて最高ですね。僕の出身は田舎だったので、夏休みに海外に行くなんてことがあったら間違いなくヒーローでした。
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しかし、今の僕から見ると、そんな感情は全くありません。お義母さんがハワイに住んでいることは結婚前から知っていたし、自分もインドネシアに住んでいたから。海外に住むこと自体が特別なことではありませんでした。
でも、娘の帰省話を聞いた人からしたら「おばあちゃんがハワイに住んでるなんて、すごい!」なんですよね。
美容師さんに言われて思い出しました。祖父母が遠くに住んでいると自分もヒーローになれる、という小学生時代の感覚を。
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大したエピソードではないのですが、本当に自分の手中に何があるのかを認識するのが難しいことを痛感しました。
自分が日々見ているものは、自分にとっては当たり前なんですよね。でも、他人から見たらそれが当たり前でないかもしれない。そういえば「自分の常識は、他人の非常識」という言葉もありましたね。
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エフェクチュエーションにおける手中の鳥の語源ついては、
『“Bird in the hand is worth two in the bush”という英語のことわざに由来します。「手中にある1羽の鳥は、捕まえられるかどうかわからない茂みの中の2羽に値する」と訳されます。』とのことです。
参考:https://smbiz.asahi.com/article/14827687#inner_link_002_1
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ただ問題は、捕まえられるかどうかわからない茂みの中の鳥は見えるのに、自分の手中の鳥は見ようと思わないと見えないということです。
じゃあどうやって見るかというと、人と話をするしかありません。自分にとっては見えない鳥でも、他人から見ると「お前、手の中にすでに鳥持ってるじゃん」と気づかされることがあります。
そして気づかされたならば、否定せずに真剣に見つめ直す必要があると思います。いやいや、持ってませんなんて、手中の鳥を握りつぶすような真似はせずに、マジすか?としげしげと見つめる必要があるでしょう。
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でも、もしも本当に何の鳥も持っていないようなら(何も持っていないなんて絶対にあり得ないことですが、そう思ってしまうのであれば)、こんな言葉もあります。
僕が勝手に師匠だと思っている、メルマガ「平成進化論」の鮒谷さんの言葉で、「“ない”という状態も資産である」と。
例えば、何も守るものがないからこそ、なりふり構わずチャレンジできたりしますよね。
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あなたはどんな手中の鳥を持っているでしょうか?
透明で見えていないだけでも、実はたくさんの鳥を持っているかもしれません。
また、もしかしたら、他人からも見えづらい半透明の鳥かもしれません。そういう場合は自分で色付けして、他の人からも見えるようにしないとね。
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以上、手中の鳥を探してみましょうということでした。
今日も僕は「優柔不断は誤った決定よりもなお悪い」で頑張ります!
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