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日本におけるイーサリアムコミュニティの夜明け、ヴィタリック・ブテリン初来日(レポート)

Web3領域特化のコミュニティスペース「Centrum(セントラム)」(東京・渋谷)にて11月29日、「Monthly Ethereum powered by Arbitrum Japan Vol.1」が開催されました。Arbitrum Japan(アービトラムジャパン)が主催するこのEthereum(イーサリアム)イベントは、今後も月1回のペースで実施される予定です。第1回となった今回は、「日本におけるイーサリアムのこれまでとこれから」というテーマのもと、Ethereum Japanのオーガナイザーでもある株式会社Yoii(ヨイ)CEOの宇野雅晴さんをゲストに迎えたArbitrum Japanの鈴木雄大さんとのパネルディスカッションも行われました。

宇野さんがEthereumに出会ったのは2016年後半から2017年にかけての頃でした。Ethereumの生みの親であるヴィタリック・ブテリンとの出会いや、2017年頃の日本国内におけるEthereumのコミュニティの様子について、当時の貴重な写真も披露しながら語られました。そんなパネルディスカッションの一部を紹介します。


Omiseでヴィタリックたちと出会う

鈴木:まず前提としてうかがいますが、宇野さんご自身はいつ頃、なぜEthereum Japanに入ったのでしょうか。

宇野:Ethereumとの関わりですが、皆さん、「OmiseGo(現・OMG Network)」をご存じですか? 東南アジアの決済スタートアップであるOmiseが開発したEthereum上のブロックチェーンプロジェクトなんですが、私はその当時、決済側の日本法人のカントリーマネージャーとしてOmiseで働いていました。OmiseGoは別チームだったのですが、ホワイトペーパーの翻訳や日本展開の一部を手伝っていました。その時に初めてBitcoin(ビットコイン)やEthereumを知ったわけですが、とにかく盛り上がっていることはすぐに伝わりました。気になってサトシ・ナカモトのホワイトペーパーを読み、メディアでの情報を読み漁る中でEthereumに出会いました。時期としては2016年後半から2017年だったと思います。

その当時、Omiseにはアドバイザーとしてヴィタリック・ブテリンやジョセフ・プーン(Bitcoinのライトニングネットワークの共同創始者)、ロジャー・バー(暗号資産起業家兼投資家)などそうそうたるメンバーがいたことで注目されており、私がタイに出張するとオフィスにヴィタリックがいることもありました。そういったことからEthereumに興味を持ち、知れば知るほどEthereumのすごさを肌で感じました。

当時、まだ20代前半だったヴィタリックをはじめ、才能に溢れたEthereum Foundationの初期メンバーが新しいインフラを作っていました。これまでのテックとは違って若い世代が、私からすると非常に難関なことにチャレンジしている姿を見て、何かすごいことが起きそうな予感がありました。Ethereumに関わっていると分かると思いますが、コミュニティがとにかくアツい。特に開発者のコミュニティが活発で、和気あいあいとした雰囲気があります。その雰囲気の中でEthereumが段々と好きになり、Ethereumを通じてつながりができ、もっと関わっていきたいと思ったのがEthereumに関わったきっかけでした。

Hi-Etherに集った開発者たちの情熱

鈴木:2016年という時期を考えると、Web3という言葉も世の中ではまだ広く浸透していなかった頃ですよね。当時、Ethereumのコミュニティにはすでに人が集まっていたのでしょうか。雰囲気としてはEthereumの勉強をしていたという感じでしたか。

宇野:私の記憶ではそれほど人は多くなかったと思うんですが、2017年にはHi-Ether(ハイイーサ)という開発者のコミュニティができ、開発者同士でスマートコントラクトの開発を教え合うような取り組みなどもありました。今のコミュニティではアプリケーションの開発などが多いと思うんですけど、当時はブロックチェーンを自分たちで作るとか、ブロックチェーンの仕組みをどう理解するかというような、CS(コンピュータサイエンス)に近い勉強会が多かった気がします。

Hi-EtherではEthereum技術者たちが活発な議論を交わしていました

宇野:Hi-Etherは当時、町野明徳さん(前・READYFORのCTO)たちが中心メンバーとして活動されていて、 Ethereumを活用したサービスを開発するための情報共有や質問の場、開発者同士が交流する機会になっていました。当時のプロジェクトとしては、LayerX(レイヤーエックス)のメンバーが開発に取り組んでいたり、メルペイのメンバーがTendermint BFT(BFT=Byzantine fault-tolerance/ビザンチン障害耐性コンセンサスをベースにしたブロックチェーンソフトウェア)の調査をして発表したりという取り組みもありました。

鈴木:あの時のHi-Etherは開発者たちがEthereumを本当にめちゃくちゃ追っていて、めちゃくちゃ濃いコミュニティでしたよね。

宇野:そうですね。当時はビジネス系の人はほぼいなくて、開発者が面白いと思うことを突き詰めて盛り上がっているような、すごく熱量が高かったです。

鈴木:1.0ETH(イーサ)以上保有していないとHi-EtherのSlackに参加できない仕組みになっていて、本気度を試されているようなコミュニティだった印象があります。

ヴィタリックがPlasmaの発表で初来日

鈴木:少し話は戻りますが、2017年8月10日、ヴィタリック・ブテリンが来日した時のお写真も宇野さんからいただいています。これはどんな状況なんでしょうか。

Plasmaの発表をするヴィタリック(右)

宇野:ヴィタリックにとっておそらく初めての来日だと思うんですが、皆さん、Plasma(プラズマ)を知っていますか? Ethereumのレイヤー2(従来のブロックチェーンの仕組みを利用して処理能力を増強し、多くの処理をブロックチェーンの外側で実行する仕組み)の走りみたいなもので、ヴィタリックとジョセフ・プーンが共同で考案しました。写真はそのホワイトペーパーの内容をヴィタリックが発表している様子です。ビットコイナーが集うダイニングバー「KITSUNE」が渋谷にあるんですが、ビットコイナーしかいないところに彼が乗り込み、こんな感じでPlasmaのホワイトペーパーを発表していました。

後日談ですが、OmiseGoがPlasmaの開発を先導していたこともあり、sg代表の落合渉悟さんから「このホワイトペーパーを翻訳したい」と言われました。そして彼と協力者たちが全訳したんですが、この頃からコアな人たちが盛り上がっていました。

鈴木:ヴィタリックがKITSUNEに乗り込んだ時はどんな雰囲気だったんでしょうか。ヴィタリック自身もBitcoinのコミュニティ出身ではありますが、BitcoinとEthereumは相いれない時もありますよね。

宇野:あちらに当事者がいますよ。(参加者に呼びかけて)どうでしたか?

参加者:よく覚えていないんですが、KITSUNE自体はあんまり開発という空気じゃなかったですよね。みんな、どのぐらい儲けたか、次は何が欲しいか、みたいな話をしていた気がします。私自身はPlasmaにすごく衝撃を受けて、調べた内容などを発表していました。このホワイトペーパーはすごく注目されましたよね。

鈴木:2017年当時としては、ヴィタリックが日本に来たことはどのくらい反響があったのでしょうか。

宇野:KITSUNEでヴィタリックがあるメディアから取材を受けていたようですし、同時期に別のメディアでもヴィタリックのインタビュー記事が出ていましたが、当時としては一部の人たちが知っているというぐらいの反響だったかもしれません。ヴィタリック自身というよりもEthereumでどう開発するか、というマインドの人が多かったという感じでした。でも2018年、2019年には一気にヴィタリックが時の人になって騒がれるようになったというわけですが。

鈴木:当時としてはメディアでの発信を通じて段々と広がっていったという感じでしたよね。

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パネルディスカッションではその後、2018年に渋谷で誕生したブロックチェーン特化のコワーキングスペース「Neutrino(ニュートリノ)」や、同じく2018年に立ち上がった学生を含む若い世代を中心としたWeb3コミュニティ「CryptoAge(クリプトエイジ)」、コロナ禍でのコミュニティ活動など、Ethereumに関するトレンドやコミュニティについての話もありました。同イベントの第2弾となる「Monthly Ethereum powered by Arbitrum Japan Vol.2」は2024年1月31日に開催予定です。


Arbitrum Japan
Arbitrum Japanは、Fracton Venturesによって展開されます。日本におけるArbitrumエコシステムの迅速な展開と、そのコミュニティ形成が促進されるとともに、日本国内でのブロックチェーン技術の普及と成熟を更に推進します。

Ethereum Japan
Ethereum JapanはEthereumを中心として広くブロックチェーン技術の推進と情報発信を行っていく非営利の団体です。日本だけでなく、積極的に海外とのコミュニティとも連携して活動を行います。活動はX(旧Twitter)による発信や、定期的なイベント運営、研究など多岐にわたる予定です。過去には、Ethereum Foundationのコアデベロッパーを招いてイベントも開催しました。


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