BADモード

昨夜 23:55。

2日間の頭痛と闘い疲弊した私を癒やすはずの宇多田ヒカル新譜はすぐそこ。

「やれやれ、こちとらお先にBADモードだぜ?」と、キャラ設定にもう少し丁寧に時間をかけるべきであった口調でひとり、私は夜をすり減らしていた。

食のプロが品評会?の場などでいくつもテイスティングをする際に、味覚を一度リセットするために自身の体臭を嗅ぐという豆知識を思い出す。
この手の知識はアウトプットできるときに率先して消費しておかないと、棺桶や骨壷の中で結構なスペースを取るだろうと平素より危惧しておりましたので、既に期待値が臨界点を超えていた宇多田ヒカルの"BADモード"をまっさらな状態で聴くためだけに、私はひたすら体臭としてのMoneybagg Yoを聴いていた。

ふと気付けば、手元の画面左上には0:01の表示。

バッ    ドモーーーーード!と主人公CVで三角形をプッシュ。

一曲目のイントロが醸す、いつかのCalvin HarrisのFunk Waveなんちゃらを彷彿とさせる気持ち良ブリージンに早速やられてしまう。

あ、宇多田ヒカルもネトフリすんのかぁ

あ、宇多田ヒカルもウーバー頼むのかぁ

あ、宇多田ヒカルと風呂一緒に入れるオポテュニティもあるのかぁ

と放たれる言葉に翻弄されるがまま、あっという間にどこからともなく響き渡る美しが丘ストリングスに五感を絡め取られるや否や、南米の辺りへと丸腰のまま駆り出される。気持ちいい….

そして次へと。名曲"STAY GOLD"を彷彿とさせつつ、もうちょい無機質なピアノのアルペジオがそろりそろりとお出迎え。
人生狂わすタイプぅの呪文にまたしてもやられてしまう。復活後もすぐに「嘘じゃない〜」の行にもやられ早くも3キル残りライフ1。命がいくつあっても足りない─それが宇多田ヒカルの新譜ぅ。
このトラック、カウベル的な役割でピッと鳴るピアノでも金属音でもない、人間でももののけでもないもの連れてきた森の終わりだー!の音遣いがいいですよね。2分半あたりのぎゅ~ーーん!!!ぶぉーーーーーの謎シンセ・コミュニケーションもタイプぅ。

そんで次が説明不要のおっおっおっふ

続くはごつごつパキパキべろべろPINK BLOOD。いちばんよく食べてた頃のFlying Lotusでもここまで無骨には組まないリズムセクションのその隙間に、信じられないほどの質量と熱量のフロウ&パンチラインを桔梗屋工場の信玄餅詰め放題みたいにこなすので、こちらは咽る咽る。

水飲みてぇなという時頃に宇多田監督によるTime。これがすげぇ。このキャリアにしてデビューした頃のmaxellだかウォークマンだかのありそうでなかった架空のCMを再現するかの如く、個人的に宇多田ヒカルの歌唱における最高のスウィートスポットを出し惜しみなく披露うぉおうぉ〜。

"気分じゃないの (Not In The Mood)"では、UNKLEとかDJ SHADOWを思い起こさせるずどんずどんしゃんしゃん。

"誰にも言わない"では、ポップス録音芸術史では聴いたことのない様なヴォーカル録音マジックを地上波初披露。

Find LoveではRihannaの欲しいものリストから拝借したビートでもうあれよ…

その後は体力の都合で割愛しますが、とにかくFloating Points(以下、浮点)のモジュラーシンセポイント大還元セールのお得感がべらぼうにブラボーでありまして、小袋成彬とは掌の感覚が消え失せるまでハイタッチしたいんですよね、私はいま。南の一つ星を見上げて浮点の頭ぐしゃぐしゃに撫で回してサンキューなぁサンキューなぁってぐしゃぐしゃに浮点をもうぐしゃぐしゃにしてありがとう!ありがとう!ってしたい。

とにかく、これはヒューマンネイチャーの皆さん揃って同じ感想だと思うんですけど

「これ歌ってるのぜんぶ宇多田ヒカルなの?」

わかってますよ、マイキングとかイコライザーとか歌唱法とか、多少なりともわかってますよ。わかってます。

...これ歌ってるのぜんぶ宇多田ヒカル?

それがこのBADモードです。


週末に見逃し配信で今日のライヴを味わうのが楽しみです。
Radioheadの"In Rainbows – From the Basement"の映像監督が〜という一行だけでもうやばいよ。ピコとかコペラみたいな筐体の富士通のノートPCで一生懸命Windows XP動かしながら配信をチェックしてたあの頃の興奮が蘇る。

あぁ、長生きするもんだなぁ。コーラの摂取量すこし控えよ。

浮点のモジュラーシンセもっと聴きてぇ…

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