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お坊さんですか?

ランニング中、自販機でお茶を買っていたら、声を掛けられた。「お寺の人ですか?曹洞宗とかの‥」、見ればウォーキングの格好の男性。お坊さんに見られても仕方ないか。スキンヘッドにして一年が経った。セミロングになりかけの頭からの坊主頭だったので、それはびっくりされた。似合う似合わないの問題じゃなく、極端な髪型は「どうかしたのか」と思われても仕方ないのかも知れない。私だって周囲の誰かがいきなり剃髪してきたら、びっくりするだろう。

出所して来たその筋の人、放射線治療中、精神性の変化、反省ボウズなど、冗談も交えて色々言われた。どれも違うし、どうインパクトがあろうと「切りたいから切った」それだけなのだ。還暦を前に、もうメイクも含めて、飾る事を辞めたのだ。世の中の「当たり前」から降りたのだ。

それはそうと、話し掛けて来た男性は、私が大体どの辺りを何時位に走っていると知っていた。そして早朝降られた今日、スタートを遅くした私に「いつもより遅いですね」と言ったのだった。

「そうか、お坊さんだと思われてたんですね、女性でボウズなんて居ませんからね、もっと増えるといいんですけど」言うと、「世の中の流れからしたら、良いんじゃないかな」と言った。

付近には実際に古刹がある。男性に挨拶して、そちら方面に進路を取る。山を切り通した道の脇は、地元の手により管理された紅葉や桜の並木が続く。今は松葉が散り敷いていて、走れば私の足音に驚いた金色のカナヘビや、枯葉色のバッタが急いで移動する。歩道を愛らしいセキレイが路面を叩きながらウロウロしている。

ただ走る、という行為を気に入っていて、大事にしている。いつまで、とか何の為に、などと考えない。走ろう、と思った時、私は走り出す。頭を剃ろう、と思った時に剃ったように。

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