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海へ向かう道

海へ南下する道を走る。車道を挟んで反対側の歩道を、同じくランナーが進んでいる。黒い背中は段々と離れて行く。やがて国道。連休の朝の道は空いていて、横断歩道を渡り、更に海岸へと真っ直ぐ進む。やがて道は防潮堤に阻まれ、右へ一旦迂回した後、堤に上がる道に出た。野良猫がサーファーのおこぼれの食事にありついている。こちらを警戒する猫を横目に堤を上がり切り、自転車道へ降り立つ。

不規則に盛り上がっては窪む海面に、沢山のサーファーがくすがって波待ちをしている。そう言えば早朝の波は良い、と聞いた事がある。休みを満喫してるのか、それともこれから出勤なのか分からないけれど、朝の海に沖を向いて、上がったり下がったりしてボードに跨ってる暮らし方があるんだな、と思う。人の中に居てこその経験以外に、自然の営みに身を置く時間は、役割りや遠慮や保身から解かれて、自らの体力やアクシデント対応力を知る、とても贅沢な時間だ。

自転車道は海岸沿いに伸びて、弧を描いた先の灯台まで続く。走りながら、夏はあそこまで行こう、と決める。防潮堤に戻り、見当をつけておいた国道の大きな交差点まで復帰し、北上ルートを取る。部活の女の子達が自転車で追い抜きざま、挨拶をくれる。後ろから見ればおっさんの私は、返事の声は女なので、彼女らもちょっとびっくりしているかも知れない。

食を変えた。全部手作りにした。塩分を控える事が、スパイスやハーブ等の新たな味覚を開発し、料理が再び楽しくやり甲斐のあるものになった。カレールーも中華の素もドレッシングも、何だ自分で作れるじゃん。その方が美味しく安く上がる。探究心もわく。一石二鳥どころではない。インドの人が複雑な香りと味わいのカレーという文化を作ってくれて、本当に感謝。増えに増えたスパイスの小瓶を嗅いでは、どんな香りであれ、いちいち物珍しく、ああ良い香り。美味しくて健やかな食事に感謝。五月晴れの下、快適に走れている。

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