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桑原弘明 展によせて。


桑原弘明 展@ギャラリー椿

(撮影と公開の許可は頂いてます。)

手のひらサイズの真鍮の箱。
覗き穴を見ると中にはミニチュアの景色が。
例えば中にさりげなく置いてある椅子も、米粒より小さかったりします。


一年で10個も作れない精巧なミニチュアですが、今、京橋で大規模な展覧会が開催されてます。
過去に作られたスコープ60個(前期30個 後期30個)をコレクターからお借りして、一気に展示。おそらく作者ご本人ですら、これだけ御作が並んで見る機会は、まずないと思われます。
桑原さんの人生の時間がこれらに結晶化されていると思うと、リスペクトをはるかに超えて、荘厳な気配さえ感じます。
(ちなみに動画途中、ガラスケースに並んでいるのは後期に展示予定の30個)

顕微鏡に見えるスコープも、覗き穴自体も、丸い造形の真鍮ものは全て旋盤で削り出されてます。
中の景色は東欧か、地中海の古い石造りのヨーロッパの景色で、ジブリみたいな景色といえば分かりやすいでしょうか。
人物は誰もいなくて、鑑賞者はただ打ち捨てられた景色に取り込まれるのです。
表面に開いている丸い窓は、懐中電灯をあてるポイントで、作品によっては上下左右、複数の窓があり、もちろん見られる景色がかわります。
例えば三つの窓がある作品だと、ある窓の明かりは手前の部屋しか見えず、また別の窓にあてると、奥の部屋だけが見える、もう一つの窓を当てると両部屋が見える、などの工夫がされてます。

また最後の青いスコープはご本人の手による紙で作った模造品。毎回、作品の人気投票を選んで連絡先を登録すると、会期後の抽選で紙スコープが貰えるのです。実作は新車の軽自動車が買えるくらいなので、この紙スコープか、動画のはじめに映る絵葉書が、庶民の楽しみです。

桑原さんもいらして、しばしお話。御作から無口で気難しい方なのではと思われるでしょうが、とても気さくでお話し好きな方です。技法的な話も隠さずになんでも教えてくださいます。(教えられても、どなたもマネできないでしょうが。。。)道具や部材を確保する難しさや、加齢による視力の低下など、困難な事はたくさんおありのようですが、是非制作を続けて頂きたいものです。

会期は12月24日までです。

今生でここまで多くのスコープを一気に覗ける機会はまずないでしょうから、ご都合の合われる方は是非。
お勧めです。
(会場のギャラリー椿は、銀座線京橋駅 3番出口徒歩3分)


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