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市場地位別競争戦略を考える

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
戦略を作るといっても、どんな戦略が自社に合っているのかなんて、熟達者でない限り判断に悩みますよね。そんな時に役立つのが市場地位別競争戦略という考え方です。自社がどのポジションにいるのかによって、おおよその戦略の方向性を導き出すことができます。
ということで、今週は市場地位別競争戦略について記していきます。


市場地位別競争戦略とは

市場地位別競争戦略は、ボストンコンサルティンググループが提唱したPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の考え方と、ポーター氏が提唱した差別化戦略の考え方をベースに、コトラー氏が主張した「市場地位別に競争戦略を考えるべき」とするものです。
市場シェアを基準に、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つの市場地位ごとに戦略の方向性を示しています。
それぞれの地位別に詳細を見ていきましょう。

1. リーダー

リーダーは業界で最大のシェアを誇り、豊富な経営資源を有する企業を指します。基本戦略は全方位戦略となります。
リーダーの最優先目標は市場の支配力を維持し、拡大することです。市場シェアの向上と収益最大化が、リーダーにとっての指標となります。市場全体の規模拡大も担っていきます。

リーダーの方針

  • 製品・サービスの革新: リーダーは市場を牽引する存在として、常に最新技術や新機能の導入を行い、競合他社をリードする製品を提供することが求められます。

  • ブランド価値の向上: 強力で一貫性のあるブランド戦略を展開し、消費者に対して信頼感を構築します。

  • グローバル展開: 新しい市場への進出や国際的な拡大を通じて、成長を促進します。

リーダーの4P設計

  • 製品 (Product): 中高級品のフルライン生産

  • 価格 (Price): 付加価値を反映した競争力のある価格または、高いシェアを獲得するための低価格

  • 販売促進 (Promotion): マス広告を利用したブランドイメージの向上を図るための効果的なプロモーション戦略

  • 流通 (Place): グローバルな流通網の構築と最適化による広範なチャネル展開

リーダーは市場の牽引役として、競争の激しい環境で常に進化し続ける必要があります。革新とブランド価値の向上により、競合他社に差をつけ、市場での主導権を確立します。

2. チャレンジャー

チャレンジャーは業界の2番手3番手の企業を指します。市場リーダーに立ち向かい、自社の地位を向上させることを目指します。新規顧客の獲得や市場シェアの拡大が焦点になります。

チャレンジャーの方針

  • 差別化戦略: 競合他社との差を明確にし、独自性を強調した製品やサービスを提供します。

  • 攻勢的なマーケティング: ブランド知名度向上のための広告や宣伝を増強し、リーダーに対抗します。

  • 顧客ロイヤルティの構築: 質の高い顧客サービスと満足度向上を通じて、既存顧客の維持と新規獲得を促進します。

チャレンジャーの4P設計

  • 製品 (Product): 差別化を意識した他社と異なる付加価値を提供する製品の開発

  • 価格 (Price): 競合他社に対抗できる価格の構築

  • 販売促進 (Promotion): 競争優位性をアピールする効果的なマーケティング活動

  • 流通 (Place): 顧客にアクセスしやすい流通網の構築

チャレンジャーは積極的なアプローチと市場における差別化が成功の鍵です。リーダーと同様のマーケティングミックスで勝負しても経験効果の点で敗れる確率が高いので、消費需要の変化へのいち早い対応や、流通チャネルの新規開拓などで、リーダーを出し抜いていく方向で戦略を検討します。

3. フォロワー

フォロワーはシェアは大きくなく、経営資源でもリーダーやチャレンジャーに劣る企業を指します。市場の動向を見極め、リーダーおよびチャレンジャーに追随することで、安定的な収益を追求します。

フォロワーの方針

  • 市場ニーズの把握: 消費者の要望やトレンドを敏感に捉え、それに合致する製品やサービスを提供します。

  • エミュレーション戦略: リーダーやチャレンジャーの成功事例を学び、それを元に製品やサービスを開発・提供します。

  • 効率的な運営: コストの最適化とリソースの効果的な活用に注力します。

フォロワーの4P設計

  • 製品 (Product): 既存の成功事例を踏襲しつつ、改良や調整を加えた模倣製品の提供

  • 価格 (Price): 競合他社との価格差を最小限に抑えつつ、低価格の実現を目指す

  • 販売促進 (Promotion): リーダーやチャレンジャーとの差別化ポイントを強調する対象を絞ったプロモーション

  • 流通 (Place): 顧客にスムーズなアクセスを提供する低価格志向の流通網の構築

フォロワーはリーダーやチャレンジャーが開発した製品を模倣することで、開発のリスクやコストを下げて、低価格を実現していくことが基本戦略です。医薬品のジェネリックのような考え方になります。

4. ニッチャー

ニッチャーは業界全体の市場シェアは低いものの、特定の異常において強みを有している企業を指します。特定の市場セグメントに焦点を当て、そこで圧倒的な専門性を発揮することで、限られた顧客層からの支持を得ます。

ニッチャーの方針

  • 特定市場セグメントの特定ニーズの理解: 需要のある特定の市場セグメントにおける顧客の細かなニーズを理解し、それに応じた製品やサービスを提供します。

  • 専門性の構築: 他社が追随できないような専門性を発揮し、市場での差別化を図ります。

  • コミュニティの構築: ターゲット市場との密なコミュニケーションを構築し、顧客との信頼関係を築きます。

ニッチャーの4P設計

  • 製品 (Product): 特定市場セグメントに最適化された独自の製品やサービスで狭いラインを狙う

  • 価格 (Price): 専門性や付加価値に見合ったプレミアム価格の設定

  • 販売促進 (Promotion): ターゲットを限定し、専門性と独自性をアピールするターゲット広告とイベントの展開

  • 流通 (Place): ターゲット市場にアクセスしやすい差別化された流通網の構築

ニッチャーは特定の市場において専門性を発揮し、他社が難しいと感じる領域で競争優位性を築きます。また、リーダーやチャレンジャーが参入してくるのを防ぐために、参入障壁を築いていく必要があります。そのために、技術力やブランド力を高め、顧客からの深い理解と密接な関係構築が、成功の鍵となります。

市場地位の分類方法

市場地位別競争戦略は、それぞれの企業の市場シェアが、リーダー40%・チャレンジャー30%・フォロワー20%・ニッチャー10%の場合に当てはまりが良いと言われています。
とはいっても、自社がどこに属しているのか、競合はどのポジションなのか分かりづらいですよね。
そこで活用されるのが慶應義塾大学名誉教授の嶋口氏の2軸4象限の枠組みです。横軸に経営資源力、縦軸に独自能力の蓄積度をとったマトリクス上の枠組みになっています。リーダーは高い資源力と高い独自能力を持ち、チャレンジャーは資源力は高いが独自能力は低い。フォロワーは独自能力の蓄積度も経営資源も低く、ニッチャーは経営資源が低い代わりに独自能力を蓄積しています。この分類を踏まえつつ、企業は自身の強みを最大限に活かし、競争力を強化していくことが重要です。

まとめ

市場地位別競争戦略は企業にとって重要な指針であり、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーそれぞれが異なる戦略を展開します。リーダーは革新とブランド価値の向上により市場を牽引し、チャレンジャーは差別化と攻勢的なマーケティングでリーダーに立ち向かいます。フォロワーは市場ニーズを把握し、柔軟に変化に対応し、ニッチャーは専門性を発揮して特定市場で成功を収めます。

企業の資源力と独自能力を考慮した分類によって、各企業は自身の位置を正確に把握し、適切な戦略を展開することが求められます。これらの戦略を総合的に考え、市場の変化に柔軟かつ効果的に対応することが、企業の持続的な成長につながります。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
今回ご紹介した市場地位別競争戦略は、基本戦略の方針を確認するだけでなく、立てた戦略の整合性を図る上でも役に立ちます。例えば、フォロワーのポジションにいるのに新商品開発に振り切っていると、資金力や経験効果などの点でチャレンジャーやリーダー企業に負けてしまいます。戦略とは、どこに経営資源を割り振るのかを考えることです。その一助となるのが市場地位別競争戦略ということですね。
やっぱり、「中の人」は解析系の記事よりも戦略系の記事の方が筆がのるみたいで、文字数が多くなりました。笑
それではまた来週お会いしましょう。

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