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新しい消費者行動モデルEIEEB

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
このnoteでも過去にいくつか紹介してきた、消費者行動モデル。
購入後の共有に特徴を持つAISASや、SNS時代を象徴するようなULSSASなどたくさんのモデルがありますよね。今回紹介するは、提唱されているモデルのうち2021年に提唱された新しいEIEEBモデルです。これにはどんな特徴があるのかを見ていきましょう。


EIEEBモデルとは

EIEEBモデルは、産業能率大学の小々馬教授と株式会社インテージの共同研究により提唱されたZ世代を想定した新しい消費者行動モデルです。
情報との出会い(encounter)-情報探索(inspire)-調べた実感(encourage)-購買(event)-情報発信して高めあう(boost up)というステップを踏む行動モデルで、それぞれのステップの頭文字をとってEIEEB(イーブ)モデルと言うそうです。
インターネットが普及した社会での購買行動モデルの代表例といえば電通によって提唱されたAISASモデルです。認知(attention)-興味(interest)-検索(search)-購買(action)-共有(share)というステップを踏んでいくとする行動モデルですね。
最終的に情報発信するという意味ではEIEEBモデルも同様ですが、情報発信の意味合いが違うのだそうですよ。
AISASでのshareはどちらかというと「自己主張」や「承認欲求」が原動力になるのに対し、EIEEBでのboost upは「共感し合う→高めあう」という意味合いを持つそうです。「共鳴」と言い換えることもできますね。承認欲求ではなく、役に立ったと言う「自己肯定感」が原動力になるのだとか。
この自己肯定感がEIEEBモデルを理解する上で重要なものだと中の人は考えています。

EIEEBモデルのステップ

Encounter(素敵なものとの偶然の出会い)

EIEEBモデルでは、広告などによって(半ば強制的に)認知するのではなく、SNSなどで偶然その商品と巡り合う(Instagramの発見タブやYouTubeのインフルエンサーが身につけていたなど)と言う偶然性=セレンディピティを掲げています。
これにより、「自分で見つけた」と言う感覚が自己肯定感を高め、次のステップへと進んでいきます。

Inspire(共感し、情報探索を行い、自分ごと化する)

偶然接触した情報のうち、気になった情報について自発的かつ積極的に調べるフェーズです。
「自分で見つけた」商材に対して、自ら調べることで「本当に買って良いのか」「後悔しないか」といった不安を解消するのがこのフェーズの目的です。Z世代を含む若い世代には、失敗回避したいと言う傾向が情報探索意欲につながると言う特徴があるのだとか。
SNSで見かけた商材をSNSで情報探索を行い、検索エンジンなどで深掘りして調べるといった行動が見られるそうです。
ここでも、「自分で調べた」と言うことが自己肯定感を高めます。

Encourage(調べた実感を得て、購入を後押しする)

購買行動に移る直前のステップです。自分で見つけ、自分で調べたことで、自分がどんなものに興味を持つのか、どういった判断基準を持つのかなどのアイデンティティを自覚します。それらのプロセスが購入を後押し(勇気づける=Encoureage)するのだそうです。
自分で(調べることで)不安を払拭すると言う自己有用感を高めるフェーズなのだそうです。

Event(購入)

情報収集し、比較検討した結果、実際に購入するフェーズです。
購買をAction(行動)ではなくEvent(出来事)と表現するのも特徴的ですよね。自然の流れ(広告など誰かの意図によらない、自身の意思決定)によって生じる出来事という捉え方なのでしょうね。

Boost Up(共有・高めあう)

実際に購買した商材の良かったと思う点をSNSで周囲に共有します。
偶然の発見から得た幸福感を共有し、「他の誰かにも、私と同じようにときめく体験をして欲しい。高めあいたい。」という感覚で共有するのだそうですよ。
ここでも「誰かの役に立っている」という自己肯定感や自己有用感を高めているのだとか。

まとめ

以上、2021年に提唱された新しい消費者行動モデル「EIEEB」について紹介しました。インターネットが普及した現代の購買行動において、情報との出会いから、購買し共有するまで一貫して「自己肯定感」や「自己有用感」といったセルフエスティーム、もっと抽象的な表現をすると「ときめく」体験が重要とされています。
受動的な購買行動ではなく、自分で見つけ、自分で調べて、自分で判断するという能動性が大切だということが分かります。
情報との接触はセレンディピティ(偶然による幸福)が大事ということで、SNSでのオーガニック投稿やUGCの重要性が一層増してきそうですね。

参考文献

インテージ「知るギャラリー」2022年5月24日公開記事

日本マーケティング学会ワーキングペーパーVol.9 No.5

あとがき

今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
まだまだ文献の少ない情報だったので、多分に中の人の解釈が入っている記事ですので取り扱いにご注意ください。。。
EIEEBを調べていて、思ったのですが「自分がハンドルを握っている感」や「偶然性」を大事にするあたり、エフェクチュエーションの考え方に似ているような気がします。
また、情報接触から共有するまでの一連の体験設計がとても重要になってくる感じですね。
マーケティングに終わりはなさそうです。
それでは、また来週お会いしましょう。

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