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CEP カテゴリーエントリーポイント

今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
マーケティング戦略を考えていると、必ず課題になるのが「どうやって自社ブランドを想起してもらうか」という点ですよね。もっとそれっぽく言うと、「どうやってメンタルアベイラビリティを確保するか」です。
メンタルアベイラビリティとは、消費者が持つブランドに関する記憶であり、消費者が何かを購入しようと思ったときに、自社ブランド(ロゴや商品のデザインなど)を想起させる能力の高さを指します。
メンタルアベイラビリティ研究の第一人者であるジェニー・ロマニウク氏は下記のように定義しています。

メンタルアベイラビリティとは、購買環境下で購買客に想起してもらいたいブランド特性のことだ。

ジェニー・ロマニウク『ブランディングの科学-独自のブランド資産構築編』朝日新聞出版

このメンタルアベイラビリティを支えるのがCEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)です。今回はそんなCEPについて学んでいきたいと思います。


CEP(カテゴリーエントリーポイント)とは

まずは、カテゴリーエントリーポイントの概略を押さえていきましょう。
CEPを簡潔に説明すると「何かを買いたいと思った時に、それを検討するきっかけ」です。
もう少し詳しく説明すると、何かを買おうとするとき、消費者はそのカテゴリの購買客になります。そのカテゴリに触れるきっかけとなるのがCEPです。お酒を例に考えてみましょう。
友人と居酒屋に入って一杯目を頼む時、お祝いの席で乾杯する時、寒い日に体を温めるためにお酒を飲む時、、、などこれらがCEPです。
居酒屋での一杯目といえばビール。お祝いのお酒といえばシャンパン。体を温める酒といえば、熱燗。といった具合に、CEPに対応する商品が想起されます。(細かいことを言うとまだカテゴリの域で、寒い→熱燗を飲もう→男山にしよう。のように特定のブランドに結びつくものが本来のCEPです)
このように、同じ商品カテゴリでも購入のきっかけとなる状況(CEP)は多岐に渡り、それぞれの状況でリンクする製品ブランドが異なっています。

戦略上のCEP

ここまでで記述した内容を整理すると、CEPはブランドを想起する状況の記憶の引き出し(こういう場面ではアレが欲しくなるといった経験記憶)です。ファストフード店で味の濃いものを食べて喉が渇いた時はコーラが飲みたくなりますし、発熱して喉が渇いている時はポカリスエットが飲みたくなります。そのような自社ブランドを想起するきっかけ(製品ブランドにリンクされた状況の記憶)は多い方がいいことは言うまでもありませんね。きっかけの引き出しが多いほど、見込み顧客をホットリードにする事ができるからです。
実際に、市場シェアの多いブランドほどリンクしているCEPが多いという研究があるそうです。CEPが多くなる程メンタルアベイラビリティが向上すると言い換えることもできます。

ビジネスホテルを例に考えてみましょう。
ビジネスホテルといえば、その名前の通りリンクするCEPは「ビジネス出張」であることは間違いありません。しかし、実際に泊まってみると学生さんらしき人や、小さな子連れを目にすることも珍しく無いですよね。
これは「ビジネス出張」以外にも、「格安旅行」や「家族旅行」といったCEPを獲得しているからです。これは単純に、利用機会を増やすだけでなく、「ビジネス出張」というメインCEPのリンク強化にもつながります。
「ビジネス出張」する人が家族で旅行することもあれば、毎週末旅行をするのを趣味にしているかもしれません。
「格安旅行」というCEPから購買したことのある人が、いざビジネス出張となった時に以前泊まったホテルを想起する可能性が高まりますよね。
なので、より多くのCEPを獲得しておくことがメンタルアベイラビリティを高めることにつながります。

ビジネスの成長とCEP

ビジネスを大きくさせていくには、そのカテゴリ内でのシェアを拡大することと、カテゴリ自体の拡大(=市場拡大)が必要になります。
市場シェアが小さいブランドほどカテゴリ内でのシェア拡大が重要になり、市場シェアの大きいブランドほど市場の拡大が重要になると言われています。後者の場合、競合は他のカテゴリになります。例えば「素早く済ませる昼食」というCEPにおいて、コンビニエンスストアとファストフード店が競合するかもしれませんよね。

シェア拡大はCEPのリンクを増やす

市場シェアが小さい場合、まずはそのカテゴリ内での地盤を固める必要がありますよね。そのために必要なのは、想起してもらえる場面=CEPを増やすことです。
CEPは商品・サービスが想起されるシーンを5W1Hで考えてみるとわかりやすいです。

・When いつ使用するのか
・Who 誰と使用するのか
・Where どこで、どんなシーンで使用するのか
・Why 使用する目的・理由は何か
・What 何に使用するのか
・How どのような気持ちの時に使用するのか

これらの要素の組み合わせがCEPになると考えられます。
自社のCEPだけでなく、競合が持つ(奪えそうな)CEPも検討してみると良いかもしれませんね。

例えば、「高級パーソナルジム(お金をかけても絶対痩せたい)」というCEPで成長したRIZAPは、「コンビニジム(気軽にお金をかけずに運動したい)」というCEPを獲得するためにChocoZAPを展開し成功していますね。
CEPが多いほど多くの顧客を取り込むことができるということですね。

カテゴリ成長もCEPのリンクを増やす

カテゴリ内のシェアが大きい企業も基本方針はCEPを増やすことです。
シェアが小さい企業と違う点は、カテゴリーシェアが小さいCEPに目を向けるという点です。
ウイスキーのシェアNo.1のサントリーは、ウイスキーというカテゴリが進出できていなかった「一軒目で飲むお酒」というビールがほぼ独占していたCEPを狙ってハイボールを生み出し、成功しました。

まとめ

ここまでCEPについて説明してきました。CEPとは、ある状況においてある製品を想起するきっかけ(状況記憶)です。より多くのCEPと商品・サービスを結びつけることができると、獲得できる顧客数も増えていきます。
想起のされやすさ=メンタルアベイラビリティを向上していくには、CEPを適切に把握していくことが重要です。

あとがき

今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
もうすぐで100記事になるんですが、最近、テキトーに書き出しても大体2000〜3000文字の間でキリのいい感じ記事を書けるようになってきました。笑
最初の頃はちょうどいい文字数にするのに苦労した記憶があります。これが反復訓練による効果なんですかね。
そんな感じで、自分自身も成長しながら続けていきますよ〜!
それではまた来週お会いしましょう。



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