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言葉の収集

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少々収集癖がありまして 読書をする際、 お気に入りの一文、一説を書き留めている所存。
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記事一覧

インクのように

しかし何よりも奇妙だったのは、 かまどの下でちろちろと燃えている青白いほのをだった。 瓦斯…

名前の知らない友だち

「…君は、」 名前を訊ねようとしたぼくをさえぎって、少年は笑みを浮かべた。 「野暮なことは…

約束守るなかれ

大体人間の身体は細胞が何年かですっかり新しく入れかわるのだそうで、 「あれからみんな細胞…

人間世界

私自身は、エルフの説が最も真実に近いと確信している。 エルフ主催の《5つの未解明の蕾学校》…

このほんをよむひとへ

ずがこうさくの じかんは、  じょうずに えをかいたり じょうずに ものを つくったり す…

通行料

夢も見ずに眠ったという訳ですか。 しかし夢は眠りの残りの浅い時にこそ 見るモノだとも言われ…

雑音ーノイズー

「ほんとうだ。ソォダ水のはじける音がする。  雑音ーノイズーの音なんかぢゃない。  宵里の云うとおりだ。」 ー中略ー 「それにしても、きみたちはなんて古いレコォドを聞いているんだろう。  雑音ーノイズーがひどいね。」 「でも先生、ぼくたちにとってはこの雑音ーノイズーが、  何より重要なんですよ。」 宵里はアビに目配せをしながら、そう云ってレコォドを止めた。 長野まゆみさんの紡ぐ言葉の色が好きです。 ブルー、青色を表現する言葉が特に美しいと 読んでいてたびたび思います。

夢みる少年の昼と夜

太郎は缶の蓋を明けた。 その中には雑多な物が詰め込まれている。 太郎は一つ一つ大事そうに取…

あとがき「機械について」

中世には、機械を動かす人は魔術師だった。 それがだんだんと、普通の人が機械を動かすように…

蓄音機

蓄音機が完成した暁に 望み得られることのうちで私が好ましいと思う一つのものは、 あらゆる「…

実験室の記憶

実験台の上にはいろいろは小道具大道具が 雑然と積み重なり、戸棚の中はもちろん その上までわ…

フェッセンデンの宇宙

「さっきもいったとおり、  これは古今の科学者がとりおこなった実験のなかでも、  最大のも…

金剛石のレンズ

この世界が かくまでさびしく 運命づけられているとは、何と奇妙な ことであろう。 私は少なく…

瞑想の機械

「エレベーターは猿から出たんですよ、あなた。  このホテルは処女林なのです。  これらの真直ぐな壁は、近寄って平行に立っている木の幹です。  猿は絶えず攀じ上って、また下がりといったことを、  連がっている地から頂に、頂から地に  繰り返しているんです。  直接に幹に攀じ上ることはできないんです。  ええ出来ませんとも。  そこで、幹の高さに沿うて走っている蔓の助けをかりて  攀じ上るんです。  この、エレベーターが、あなたの猿が、  くっついている頑丈な網がそれですよ。」