武蔵野の森スポーツプラザについて

 TWICE、Hey!Say!JUMP……。オープンして1年未満にも関わらず、数多くの著名アーティストがこぞってイベントを開くコンサート会場がある。収容人数1万人を誇る、武蔵野の森スポーツプラザ メインアリーナである。

 東京多摩エリアのスポーツ拠点として整備された本会場は、新宿から25分、京王線飛田給駅が最寄りだ。隣には味の素スタジアムがある。敷地はサブアリーナをあわせて3.3万平米。東京都が持つスポーツ施設としては5つ目の拠点になり、メインアリーナは東京オリンピックでフェンシング会場として使われる。

 総工費は350億円。設計は日本設計が行い、メインアリーナを竹中工務店・奥村組・株木建設・白石建設・東起業JVが104億円で、サブアリーナを鹿島・東急建設・TSUCHIYA・京急建設JVが71億円で行った。
 競争入札では一悶着あった。入札は2回行われ、1回目は東京都の予定価格が安すぎるとして全社が辞退。2回目の予定価格は労務費高騰や資材価格の上昇を織り込んだ上、1度目の入札で含んでいた外構工事や味の素スタジアムへの連絡橋の新設、歩道橋の移設などを除外し、一部の天井材のグレードを下げるなど仕様を見直した。その結果、メインアリーナ棟が8億1990万3000円増(約8.5%増)、サブアリーナ・プール棟は2億509万6500円増(約2.9%増)となった。
 ほかにも空調施設を三建設備工業などのJVが29億円で、電気設備をきんでんなどのJVが25億円で、給水衛星設備を体制設備などのJVが18億円で落札した。

 運営は指定管理者制度を活用し、東京スタジアム・シミズオクト・東京ドームなどから構成される東京スタジアムグループが落札した。代表団体の東京スタジアムは、隣接する味の素スタジアムの運営企業でもある。
 スキームとしては、東京都が施設を所有し、東京スタジアムグループが運営。東京都は指定管理料として年間約2億580万円を東京スタジアムグループに支払う。東京スタジアムグループは利用者が払う利用料金などを得る一方で、人件費などの運用コストを支払う。

 音楽イベントでの使用の際は、チケット代金が7000円以上で土日であればメインアリーナのみで全日500万円程度の使用料となる。物販会場としても活用できるサブアリーナは160万円程度だ。
 1.7万人を収容できる横浜アリーナが同条件だと650万円程度のため、立地を考えると若干強気の価格設定にも思える。

  東京スタジアムのデータによれば、利用者の利用料金などを含む体育施設利用収入は17年10月から18年3月末の半年で1.7億円程度。この間に音楽系のイベントは合計16日あり、準備日を15日間、サブアリーナの使用を18日間と推定すると、およそ売上は1.5億円と見られる。実際の金額との乖離は小さいため、ディスカウントや直前割などはせず、ほぼ定価で貸し出していると思われる。

 会場が強気の営業を行える背景に、都心においてハイグレードのコンサート会場の需要がいかに逼迫しているかが透けて見える。
 興行の観点では、天気に左右されず、一回のコンサートで十分な利益を出せる規模の会場は非常に重要である。具体的には、都心からの立地がよく、全天候型で、音響がよい(指標としては残響時間などがある)、5000〜20000席程度の会場だろう。
 イベントのコスト構造上、人件費が非常にかかるため、利益を出すには席数を増やし、チケット単価を上げ、一定数のグッズを販売する必要がある。ブルーレイや生中継、VODサービス等での映像展開を考えると、一定の会場の広さがないと映えない。
 首都圏でこの条件を満たし、かつ恒常的に音楽系のイベントとして使用できるのは、日本武道館、横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、幕張メッセイベントホール程度しかなかった。


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