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5Gが切り拓くポスト・テレビゲーム時代

超⾼速・⼤容量/超⾼信頼・低遅延/超⼤量端末同時接続と、⾆を噛みそうなスローガンもようやく定着しました。しかしながら、メディアの煽りに共感できない一方で、実態にピンと来ていないので反論もままならない、というのが正直な感想ではないでしょうか。

本⽇は、5Gが⽀える新たな世界のイメージを持っていただきます。次に、我々の業界にとって何の意味があるかを掴んだ上で、⽴ち向かい⽅につき考えるヒントが提供できればと思っています。
次なる時代は、Physical 世界とDigital 世界とが交錯し、クラークの3原則ではありませんが、「⼗分に発達した科学技術は魔法と区別がつかない」状況になっていきます。

演題のポスト・テレビゲーム時代とは、平⾯画⾯とスピーカーから出⼒される「テレビゲーム」の次の時代を指しています。実際には数年以上先になるでしょうが、新しいアイデアでゲームを開発するのに何年かかりますか? 3年、5年は未来ではありませんよ。


5Gが支える世界のイメージ

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これは、モリカトロンの森川さんに描いていただいたイラストです。
4Gまでの世界では、元の世界が平⾯のディスプレイから出⼒されています。ゲーム業界では3Dという単語をよく使いますが、これは画⾯内の描画を指しているので混同を避けるため、ここでは「平⾯出⼒」とします。⼊⼒もデバイスの仕様に依拠した極めて限定的なものです。ちなみに、360度カメラもプラネタリウムも平⾯ですよ。

他⽅、5G以降の世界では、元の世界がそのまま再現されています。また、猫君が⿂にちょっかいを出して、波紋が出来ていますね。重要なのは、元の世界にも波紋が出来ている点です。インタラクションの次元が変わるのです。

空間の共有ができる点が5Gの⾶躍ポイント。遠隔⼿術やロボットなどが例⽰されているので皆さんもイメージできると思います。
元の世界がPhysical、Digital であるかを問わず、空間を共有する事が当たり前になると、⼈間のものの考え⽅、⽂化も変質していく事でしょう。

例えば、VR会議。
まだ初期の段階なのでテレビ電話とあまり変わりませんが、実際には⼤きなポテンシャルを秘めています。
我々が現在会議で使っているツールは、ペーパー、ホワイトボード、ディスプレイ等、全て平⾯出⼒であり、プレゼンの際の表現はツールの制約を受けています。4象限で区分けしてみたり、樹形図を書いてみたり、これらは全て2D。グラフも何もかも2D。
目下のVR会議はこれをそのまま持ち込んでいるだけ。
ところが、VRで共有する空間では⽴体物を出⼒できます。プレゼン素材が⽴体物になっていくと⾯⽩いですね。複雑な関係図も表現しやすいでしょうし、グラフも3Dがデフォルトになれば、思考の在り⽅も変わってくるはずです。

5Gが⽀える世界は「新しいシステム」と捉える

さて、感覚的な導⼊をしたところで、ここからは新しい世界の捉え⽅につき、⼆点お話しします。
5Gを単品として捉えると間違えます。さらに単品どころか、その⼀部機能のみをつまんで、これまでの技術の延⻑として理解しようとすれば、⼿痛いしっぺ返しを⾷らうでしょう。「これまでよりさらに⾼精彩な8K動画が⾒られます」などというのは、矮⼩化の極致で論外。
新たな世界は、5Gを基礎とする「新しいシステム」と捉えるべきだと考えています。これが第⼀点。

少し脇道に逸れますが、システムの意味につき、お話ししておきます。和⾵に表現すれば、システムの位置づけは、守破離の離とも⾔えます。
乗り物を例にとりましょう。⾺を既存テクノロジーとすると⾃動⾞が新テクノロジーですね。新テクノロジーが現れて間もなくは、旧テクノロジーの代替と映り、⽂句しか出ない。⾺はどこでも⾏けるが、⾞は道しか⾛れない、電⾞に⾄っては線路が要る、⾺は草なら⼤概⾷うが、⾞は特定の燃料でしか動かない、⾺は動⼒源として汎⽤性があるが⾞にはない、などなど。ところが、時がたつにつれ、新テクノロジーの良さが際⽴ってきます。⾞は圧倒的な⾺⼒(この期に及んで⾺なのが⾯⽩い)と疲れを知らぬタフさで、社会になくてはならないものになります。
ここまででも⼗分に画期的です。この⾶躍の局⾯はこれまでも散々研究されており、「イノベーションのジレンマ」などもその⼀つですね。既存テクノロジー内の進歩が持続的イノベーション(守)、新テクノロジーへの進化が破壊的イノベーション(破)。ちなみに、テレ・コミュニケーションのテクノロジーにおいては、4Gまでの道は、これに当たると思っています。
さて、新テクノロジーが定着してから、ネットワークになり、システムになると別次元になります(離)。
乗り物の例に戻れば、乗り換えサイトが登場し、移動がシステムとして理解されるようになります。この会場まで、電⾞、⾃動⾞、徒歩すべてを選択肢に⼊れて、最短で、あるいは最安で来るにはどうすればいいのか、瞬時に答えが出ます。
この、システムへのジャンプが重要なのです。
Uber の登場もシステムの延⻑で当然の帰結。⽬下話題のMaas も想定の範囲内。⾃動運転は、⼩型バスが個⼈対応になり、たまたま運転⼿がAIというだけですから驚く事ではありません。

5Gも単品ではなくなりシステムにジャンプします。
それではシステムを構成する要素とはどのようなものなのでしょう。

5Gが⽀える新たな世界は、同時多発的かつ有機的進歩ゆえに、時を追って⽣成されていく

正しくシステムとして捉えると、ようやく本当の価値が予感でき、同時に予測の困難さが実感できてきます。ある時点で完成形になる事はありません。つまり、今後の発展は複雑だと⾒切る事が第⼆点です。

画期的なテクノロジーが定着し、社会が受け⼊れ消化するまでには、結構時間がかかります。農業⾰命、産業⾰命は⼈類の歴史を変えましたが、随分と時間をかけている、⾃動⾞も誕⽣から普及までには100年以上かかっており、最近めっぽう早くなったとは⾔え、PCがスマホに結実するまで40年、インターネットで30年。また、PCが完全に定着してからインターネットが普及し始めるまで10年程度猶予期間がありました。早いとは⾔え、なんとか付いていけたんですね。
ところが現在進⾏している⾰命は、これまでだったら、どれ⼀つとっても主役を張れたレベルのテクノロジーが、同時に、しかも同時であるがゆえに相互に影響しあいながら、推進している。さらにややこしい事に、これらは⼯学的な議論ですが、理学、⼯学の往復のスピードも増した。⼈間社会が消化する猶予が全くない。その事⾃体が重要な論点として浮上している時代です。

そのテクノロジー群がこれです。

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勿論、⽣命科学系など、これ以外にも存在しますが、本⽇は5Gがテーマなので絞ります。

AI:Physical 世界の情報をDigital世界に翻訳する能⼒が格段に上がり、今後さらに加速します。従来、⼈間のインプットに限定されていた Digital 世界への情報の⼊り⼝が突然広がりました。 これと並⾏して Digital 世界におけるビッグデータの解析能⼒が⾶躍。⼤量であるだけではなく、多次元の処理ができる事で、⼈間の⼿の届かないところに向かっている。

IoT:妖怪で⾔えば百⽬ですね。実際には各種センサーであるため⽬に限定されない。この会場の状況を1万個のセンサーで把握しているとします。画像、⾳声、温度、気圧等、様々な⾓度で感じ、AIとセットになって会場全体を「認識」している。最早、この会場は新しい⽣物になっていると⾔えるかもしれません。

XR:⼊⼿⼒デバイスの事。VR、AR、MRと⾯倒なのでXR。今のごついHMDが、コンタクトレンズ等に洗練されていく過程で定着していきます。留意点の⼀つ⽬は、あくまで⼊⼿⼒デバイスでしかない旨忘れない事です。PCからスマホに⾄る過程で⼀体型モデルに馴染んでしまいましたが、5G以降の時代では機能が分化して環境に溶けていきます。留意点の二つ目は、視聴覚に限定されていない事。少なくとも五感は対象になりますが、知覚のきっかけは波動なので、例えば⾚外線カメラでしか⾒えないものがあるように、可視光線外、可聴域外、さらには、現在の⼈体を前提とした触覚の外も対象になってくるかもしれません。そもそもNEURALINK なんて話が出てきていますから、それそら超越するかもしれません。

クラウド:仮想化技術が進み、機能分化のスピードが上がっていく点が重要です。

ブロックチェーン:ここまでは、まぁなんとか共感していただけるかもしれませんが、ブロックチェーンには⾸をかしげる⼈も多いと思います。勿論、暗号通貨の話ではありません。
スマートコントラクトで⼀例をあげてみますね。未来のインテリジェントビルを想定しましょう。3階で出⽕したとすると、張り巡らされたセンサーとAIによって、炎や煙がどのように広がるかは計算できる。中にいる⼈たちが⾝に着けているデバイスに、各⼈別の避難誘導が通信されます。ここまでは簡単に想像がつきます。問題はここから。1000⼈の内、10⼈を犠牲にすれば他は助かり、犠牲者なしの解はない場合、AIは機能しません。なぜなら、ビルオーナーは後⽇の訴訟を回避するため、AIの誘導精度を下げるからです。結果200⼈が亡くなる事態は起こりえます。仮に私であれば、健康な5歳以下の幼児は私の命に優先してもらっていい、脳に重篤な後遺症が残るのであれば助けてもらわなくてもいい、といったリスク選考を持っています。各⼈のリスク選考を随時登録しておき、各種業者に免責を宣⾔しておく。平等になるように、⽣存確率の上限を決めておき、それを満たす選考を⼊れておくわけです。あるエリアやビルに⼊る時はこの登録がなければ⼊れないようにする。こうすればAIが機能する確率は格段に上がるはずです。リスク選考は随時変更でき、また極めて重要な情報なので改竄は許されない。そこでスマートコントラクトの登場になります。こう考えれば、ブロックチェーンは、先端テクノロジーが社会実装されるために必須のインフラと言えます。いわば、分権社会における「社会契約」とも捉えられます。毎朝 Alexa が「おはよう洋⼀、今⽇は設定は変えなくていいの?」などと語りかけて⼀⽇が始まるようになるかもしれません。

5G:以上の全てを⽀えるインフラが5Gになります。システム全体として捉えれば全く違う姿が⾒えてくると思います。


新たな世界では体験の解像度があがる

ますます分からなくなったじゃないか、と⽂句が出るタイミングでしょうか。
以上を要すれば、4G以前と5G以降とでは、元の世界からの情報のリダクションの度合いが圧倒的に変わります。我々の業界に引き付ければ、「体験の解像度が向上する」と表現できます。脳内補完の要素が減る、あるいは変質するという事ですね。

解像度向上の中⾝は、知覚の進化とレスポンスの⾼速化に分解できます。
知覚の進化については、先ほど XR の箇所でも少し⾔及しました。脳内補完の脈絡でなぞれば、記号からリアル、リアルから超リアルへと進化するという意味です。ここでは混乱するので避けますが、本当は脳内補完という単語も要注意です。脳の知覚⾃体に侵⾷するのが新たな時代ですから。
レスポンスの⾼速化は地味に聞こえるかもしれませんが、⾺⿅に出来ません。速度で歴史をなぞってみましょう。⼿紙から、電信、電話、e-mail、チャットと進歩する流れは、我々のコミュニケーションの取り⽅、コミュニティの形成のされ⽅に⼤きく影響を与えました。新たな世界では、デジタルかつリアルタイムになります。勿論、電話の時代からリアルタイムだったわけですが、中⾝がデジタル情報なためにコンピュータ処理が出来てしまうところが重要です。デジタル情報である事を前提として高速化、さらにはリアルタイム化になれば意味が変わってきます。先⽇話題になった、中国のライブストリーミングの美⼈フィルターがわかりやすい例です。


ゲーム業界が取り組むべきテーマ

5Gが⽀える新たな世界の捉え⽅につきお話ししました。空間の共有といった状況を考えた時、ゲーム業界が特異な⽴場にある事にお気づきでしょうか。ゲーム業界は唯⼀、「元の世界」をデジタルで完全に作ってきた業界です。他の産業では⽬的に特化した空間は作りましたが、ゲーム業界のように、⼈間の Physical 世界に近い、総合的なDigital 世界を造る事に腐⼼してきたところはありません。

Physical 世界と Digital 世界が交錯する来るべき世界にあって、ゲーム業界においては、デジタルに翻訳するまでもなく、元の世界が Digital 世界なわけです。
SFは⽂章で未来を⾒せてくれました。シド・ミードのようなアーティストはデザインで未来のリハーサルをしてくれました。これからは、ゲーム業界が、未来の体験のシミュレーションを提供する責務があると考えています。

やや脇道に逸れますが、私は応援のつもりでよく esports  をディスります。インタラクティブに処理できる Digital 世界が作ってあるのに、わざわざデータを劣化させて静止画を⼀⽅向にユーザーに配信し(60回/秒)、さらに、旧態然とした物理的イベント興⾏のビジネスモデルを志向している。
逆でしょう。esports で数多実験を繰り返し、それをリアルスポーツ、つまり Physical 世界に応⽤する事こそが、ゲーム業界に期待されているのだと思っています。

さて、話を戻しますが、⼩説や映画とは異なり、コンピュータゲームはインタラクティブである点に特徴があります。
新たな世界では、⼈間の知覚が拡張され、同時に、環境が⼈⼯的なアルゴリズムとして⼈間に関わってきます。到底、考えてもわからない。テクノロジーが先⾏して、⼈間が未消化なまま世界が歪に出来てしまえば、事後的に修正するのは⼤変困難です。従って、コンピュータゲームが、社会実装の前に「体験」そのものを提供し、各⼈に未来をシミュレートしてもらう事に価値が出てくるのではないでしょうか。勿論、ここで⾔う未来のシミュレーションとは、未来を題材にしたゲームという意味ではありません。

先ほど挙げたインテリジェントビルの例で⾔えば、AIが機能しうるためには選考項⽬をどのように散らしたら良いか、この仕組みで⾃殺や殺⼈が出来てしまえないか、等々を、プレイしてもらいながら、いわば制度のデバッグをする事になります。現実の家族構成、友⼈関係もゲームの世界に⼊れてみて、何百回も⽕災を起こし、どのような条件なら感情的な整理がつくかといった観点の検証もできそうですね。
実際には、このようなインテリジェントビルを実現するまでには、スマートコントラクトを有効にするためいかに制度を⼿当てするのか、リスク選考の登録⾃体許されるのか(臓器提供の援⽤?)、デバイスの性能による機会不均等をどのように排除するか等々、いくつも検証のハードルがあります。
急進派は現状制度など壊してしまえと息巻き、穏健派は制度の⼿当てができるまでは実装まかりならんと籠城する。双⽅間違っています。制度改定作業を地道に⾏うと同時に、社会実装の前に生身の人間が演習しておくのが正しい姿なのだと信じます。デジタル特区の考え方ですね。

ところで、ゲーム業界では、ナラティブにつき、これまで随分と議論してきました。

ストーリーとは異なり、ユーザーの物語り体験にするのがナラティブ。知覚したものを繋いでいって⾃⾝の物語にするのは、⼈間の本性の⼀⾯だと思います。しかしながら、新たな世界では知覚がハックされます。
90年代の「ゲーム」という映画をご存知ですか? マイケル・ダグラス演ずる富豪が奇妙な「ゲーム」に参加するというもの。周りの何⼈ものサクラが芝居をして騙していくんですね。主⼈公は、徐々に現実とゲームの区別がつかなくなり、最後ビルから⾝を投げます。
新たな世界では、⼈を雇って芝居をさせなくても簡単にこのような状況は作れてしまいます。放置すれば⼤変な事になるので、新たな世界でのナラティブは、ゲーム業界が率先して定義していくべきだと考えます。
人間は現象を時間で織り上げて体験を作るので、時間についてもよく考えなければなりませんね。ゲーム脳なんて勘違い論議ではなく、真に深刻な事態になります。
ゲーム業界は、ゲームの中での体験の作り⽅、さらにはトランスメディア⼿法によるゲームの外も活⽤した体験の作り⽅、いずれについても、これまで取り組んできた知⾒があります。他産業には、このような問題意識の発⽣するきっかけがなかったでしょうから、私が何を⾔っているのか理解されにくいかもしれません。随分と傲慢に聞こえるでしょう。でも、ゲーム業界に携わる⼈には意識して欲しい。

ちなみに皆さんにとっては、攻殻機動隊やMatrix を例に出した⽅がわかりやすかったかもしれません。しかしながら、これらは皆さんの中で消化され過ぎているので、固定概念から離れにくいのではと考えました。思考実験する際には、異物として再検証した⽅が有効だと思います。


5G時代の戦略

業界の使命といった、私の趣味に引きずられる話をしてしまいました。まぁ、儲かる話でもなければ、すぐに起こる話でもありません。以降は、もっと、未来過ぎないビジネスに引き付けて考えていきます。

以下、戦略の留意点を3点お話しします。

1.各要素の進歩の違いによる局面の変化を理解する

5Gが支える新たな世界のテクノロジーを、ゲーム産業の観点で3つの要素にしてみると下図にようなイメージになります。

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先程述べた通り、各テクノロジーが各々進歩し、かつ相互に影響を与え合いますからややこしい。従って、この図の現象⾯にも跛⾏⾊が出ます。

現状の進捗はだいたい下図の通りでしょうね。

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XRのデバイスは、物理的に製造しユーザーに買ってもらわなければなりませんから、なかなかに時間がかかります。規格統⼀も簡単ではないでしょうから、その上で⾛るコンテンツ、サービスも限定的になり、普及を遅らせます。
また、Physical 世界と Digital 世界の交錯は、全ての要件が整った上で完成しますから、当初はあくまでも限定的な使い⽅と割り切るのがいいでしょう。⾔い換えればフェイクをいかに作るかがポイントになるはずです。先ほどのシミュレーション談義にも通じますね。
これらから、当⾯はインタラクティブ要素が先⾏すると思います。

跛⾏⾊の中でどのような展開をするのか、クラウドゲームを例になぞってみます(この辺りは「クラウド・ファースト」で論究したので、呼んでいただいた方は飛ばしてください)

始まりの前夜。

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クライアント側で処理していたものをサーバー側にもっていっただけ。冒頭述べた通り、既存テクノロジーを新テクノロジーで代替させるだけなので、不便しか表⾯化しません。帯域、レーテンシーについての⽂句が出るだけで市場ができるはずもない。

ここからスタート。クラウドでしか出来ないことにフォーカスした展開。

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ちなみに図の中の年次は、実装検証の開始できる時期であって普及時期ではありません。シンラ・テクノロジーでやろうとしたのは、世の中をここまで早く持ってくる事でしたが、シャットダウン。5Gが定着する前に「演習」しておく事に意味があったのですが、残念でしたね。ここまで誰も実験してくれなかったので、今から積み上げるしかない。ただし、条件が整ってきたので、コンテンツを真⾯⽬に作ればそろそろ商業ベースに乗りますよ。

さて、現時点では、このレベルの演習ができるようになりつつあります。

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まだ⼤仕掛けなビジネスにはなりにくいので、⼀点突破のサービスで未来を拓くのがお勧めです。
ゲームはこれまでプレイヤーだけの市場だったのですが、ノン・プレイヤーもユーザーとして市場に関わってきます。うまく設計できれば化けると思います。

これは少し先ですね。

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クライアント側にディスプレイが少なくなっていますね。これがポスト・テレビゲームの時代。
実装実験は無理なので、思考実験を繰り返し、議論を盛り上げておくのだと思います。
ちなみに2025年などというのは当てずっぽ。さっぱり読めません。誰も読めないはずだと断⾔できます。

2.どの要素が産業に影響を与えるかを見極める

かなり⾜元の話になります。

5G以降、上りのウェイトが激増します。IoT もあるし、そりゃそうだわな、と看過しない⽅が良いですよ。
例を挙げます。3Gから4Gになって、ストリーマー市場が勃興しましたね。これは、通信性能が向上したからだけではありません。スマホとセットで普及する事で発信者が激増したのです。3G時代でも、PCにおいて、中国のワイワイ等、先⾏市場が存在しました。発信者のハードルを下げて市場を作ったわけですが、そうは⾔っても発信側には設備と覚悟が必要だった。このハードルがスマホになって取り払われたため、⼤ブレークしたわけです。

5Gはこのような質的変化を(単独であっても)起こし得ます。発信者の増加だけではなく、発信内容の⾼度化を起こします。インタラクティブ・ストリーミングが最も先⾏してムーブメントとなるのではと思っている根拠がここにあります。

また、5G事業には移動通信業の免許が必要という事にも要注意。
これは結構皆さん忘れていますよね。インターネット企業全盛だった過去20年、インフラなんて⼟管でしょ、と⽚付けていた。ところが、5Gが持つ機能のいくつかは、単なる繋ぎインフラでなく、それ⾃体が価値を持ってきます。
個人的に興味があるのは中国。
短期でBATやNetEase が急成⻑しました。過去5年間は無敵モードで1ミリの隙もなかった。しかしながら、彼らはインターネット企業なんですよ。移動通信の免許は持っていない。私は、中国政府が彼等に対して引き続き便宜を図るか否か、ずっと注意を払っていましたが、どうやらそうでもなさそうです。となると、産業のガラポンが起きる余地が出てきた。プラットフォームの態様が変わる余地が出て、コンテンツのスポンサーが、インターネット企業から通信キャリアに変わる可能性も出てきたという話です。
⽇本では、元々キャリアが強かったのでそこまで⼤きな変化にならないかもしれません。
注⽬はソフトバンクですね。⽇本を代表するインターネット企業であるヤフーと通信業者のソフトバンクを双⽅傘下に持っている。世界を⾒渡しても、双⽅において⼀流企業を持っているところは稀少。相変わらず、孫さんは引きが強い。

最後に、プラットフォームの再定義。
ゲームコンソール時代にプラットフォームのイメージが定着し過ぎました。プラットフォームがコンソールからネットに移⾏した時も、たまさかソニー、MSというプレイヤーが⽣き残ったため、変化の本質を検証しないままに流されてしまったのではないかと危惧しています。海外では、まずは steam のサービスが存在感を⾒せ、Google、Apple が世界を席巻しました。続いて中国企業が成長スピードの記録を塗り替えた。ネットへの移行がパキッと意識されています。この局⾯では、⽇本は出る幕なしでしたね。何が不味かったか整理できていないのでは?
これからは Xaas から組み⽴てる新展開になります。インターネット草創期の7階層ではありませんが、機能を分解して組み立てなおす必要がある。サービスの展開につきデザイン能力が重要になってきます。「どこに乗るか」に議論を矮⼩化させるのではつまらないでしょう。

3.まずはインタラクティブ・ストリーミング

散々⼩難しい事を⾔ってきましたが、まずはインタラクティブ・ストリーミングに真剣に取り組む事だと思います。
背景は縷々述べてきた通りですが、たった今取り組んでいい確かな対象です。


以上、5Gが⽀える新たな世界はどのようなイメージなのか。その時、ゲーム業界は何をすべきか。さらに、実務に引き付けて企業戦略として何に気を付ければいいのかをお話ししました。
射程距離の⻑いところから短いところまで同時にお話ししたので、わかりにくかったかもしれませんが、皆さんの考えるヒントになればと思います。

(本稿は2019年9⽉13⽇、東京ゲームショーの際、NTTドコモのブースにおいて⾏った講演に加筆したものです)

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