私をすくってくれた、ことば。
ことばのパワーって本当にすごい。
ことばは、一度口にすると、受け取り手に委ねられる。語り手の想いとは裏腹に。
それによって、傷つけたり、喜ばれたり。
2019年最後の1日に書くnoteは、「 #君のことばに救われた 」。
私がことばに触れる機会と言えば、多くが歌詞や詩だった気がする。
正直なところ、本を読むことが不得意な子どもで、ハリーポッターを母に読み聞かせてもらっていたこともあるくらい。ちなみに、母や父は読書好き。
今日は私が大好きな詩人、谷川俊太郎さんの詩とことばを紹介したいと思います。
いやだ と言っていいですか
本当にからだの底からいやなことを
我慢しなくていいですか
我がままだと思わなくていいですか
親にも先生にも頼らずに
友だちにも相談せずに
ひとりでいやだと言うのには勇気がいる
でもごまかしたくない
いやでないふりをするのはいやなんです
大人って分からない
世間っていったい何なんですか
何をこわがってるんですか
いやだ と言わせてください
いやがってるのはちっぽけな私じゃない
幸せになろうとあがいている
宇宙につながる大きな私のいのちです
いや 谷川俊太郎
学生時代、今よりも深刻に悩んでいたことも多かった時期。
1冊の文庫になった谷川俊太郎さんの詩集を読んで、出会ったのが「いや」という詩でした。
今でもちょっとその気質があるのですが、当時の私は「いやだ」と言えなかったんです。
「誰かに嫌われたらどうしよう」「どう思われているんだろう」「誰も信じられない」
考えてもどうにもならない不安や怒り、そして悲しみ。そんな感情でいっぱいになった私を救ってくれた、いや心のなにかのしっとジメッとした土のような何かをサクッとすくいあげてくれたのがこの詩。
気づけば、心がケロっとして。
つらいことがあったり、壁にぶち当たったりしたときに、幾度となくこのことばを思い出しています。
***
そして、社会人になって上京し、谷川俊太郎さんと覚和歌子さんの対詩ライブに出かけ、生身の谷川さんの姿をみて、声を聞くことができました。
私はこの対詩ライブに、1度目はひとりで、2度目は大学生時代からの友人と一緒に行きました。(vol.4とvol.7。来年1月のvol.8は満席とのこと、残念。)
谷川俊太郎さんと覚和歌子さんが、数行ずつ交代で一編の詩を書く「対詩ライブ」。
ライブでの対詩は世界でも初の試み。
目の前で詩が生まれていく真剣勝負を目撃してください。
詩人がいかにして詩を創作するのか。
詩人とはどんな人たちなのか。
詩と詩人を身近に感じられるイべントです。
「対詩」とは、複数の詩人がリレー形式で詩を書いていく「連詩」の2人バージョン。谷川さんと覚さんが互いの書いた言葉を受けて数行の詩を交互に創作していきます。
(晴れたら空に豆まいてより)
ことばが生まれていく瞬間の静けさや、キーボードで文字を打っては消してを繰り返している様子など、ワクワクしながらその空気を味わって、にんまりしていました。
そんなとき、ポツリとこぼれた谷川さんの言葉。
「ぼく、時間は伸びたり、縮んだりすると思うんだよね。」
はっとした。
感じる時間のスピードは、そのときにやっていることや感情次第で変わる感覚はあったものの、なんて言うんだろう…。
当たり前に思っていることほど、違ってみてみてもよくて。ある意見が多数だからといって、それに流される必要はなくて。
そんなことを勝手に思ったのでした。
ことばは、語り手の元を離れてから誰にどう届くのか。
そこにはちょっと不安と楽しみが混在していて、スリルがあります。
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