「学生起業家」の1つの時代は近いうち終わると思っています。

こんにちは、BEという小さなスタートアップで役員をやっています、上出といいます。
前回の記事ではスタートアップが創業期に取るべきでない選択を実体験ベースで書きました。今回は、会社の経営に携わってみて感じたことをベースに、少しマクロ視点の分析を入れて、今後「学生起業家」という存在がどのようになっていくのか、という分析をしてみたいと思います。

あまり分析、意見発信のnoteは書かないようにしてきたので、かなり拙い部分があると思いますが、その辺りはご容赦いただけますと幸いです。
また、同様のテーマで別の考えをお持ちの方や、補足、指摘などがある方は是非コメントやTwitterで教えて下さい。

総論

ざっくり結論を言うと「普通の大学生起業家のシード資金調達難易度は1年くらいを目処に上がる」ということを私は思っています。

※ここでいう普通の大学生起業家で想定しているのは私のように、大学2,3年生でスタートアップに初めて触れ、インターンをして、21、22くらいで起業する人です。

理由として考えているのは主に3つです。
①VCの変化
②融資ハードルの上昇
③「若手」のレンジの変化
まずこれらに触れる前に、簡単に学生起業家の歴史についておさらいしましょう。

学生起業家とは?

ここでいう学生起業家とは、学部在学中にサービスリリースや会社設立を行い、いわゆるエクイティファイナンスで資金調達を行う人のことを指します。(エクイティだけが資金調達じゃないとか、VCありきの起業以外もあるみたいな議論はここでは省きます。)
学生起業家が最も脚光を浴びたのは、2014、2015年近辺だと思います。
このくらいの時期に創業あるいは資金調達を行った起業家として著名なのは、
Candle金さん、Progate加藤さん、BASE鶴岡さん、dely堀江さん、ジラフ麻生さん、アラン花房さんなどが挙げられます。
彼らの偉大な実績がきっかけで、2016年~2018年にかけて多くの学生起業家がシードラウンドの資金調達を行っています。
この流れの最後の世代になると思っているのが、18~19年調達組や、97年生まれ組(Taimee小川君や、PoliPoli伊藤君など)になります。
学生起業家の世代に関する話は、ある程度意見も分かれますし、本題ではないので、参考までにご紹介する程度にとどめ、次の項目から本論に入ります。

①VCの変化

2017年後半から2019年にかけて、シードラウンドを中心に投資をするベンチャーキャピタル(以下シードVC)に起こった大きな変化だと思っているのは、ファンドサイズの大型化です。
上述した14,15世代の学生起業家に投資をしていたシードVCのファンド規模は、13、14年くらいに組成されたものだと仮定してだいたい2~5億円程度であると推測されます。
それと比較して2017年~19年に組成されたファンドは30億円以上のものが散見されます。
ファンドサイズが大型化した場合、投資件数を増やすか1社当たりの投資金額を増やす(最初の投資金額を増やすだけでなく、アーリー以降のラウンドにフォローオンすることも含む)の2パターンになりますが、各種リリースを見る限りだと、投資金額を増やすことを軸にした戦略を取っているVCが多いように思われます。
1社当たりの投資金額が増えると、投資先に求められるイグジット時のバリュエーションも高くなります。(但し前提として、投資金額の増加は握るシェアの増加ではなく投資時のバリュエーションの増加により行われていること。実態として2014年周辺から、シードVCが投資するラウンドの平均バリュエーションが上がっていないのであれば、この議論は怪しくなります。)

投資時の平均バリュエーションが上昇しており、VCに求められるファンドリターンが低下していないという前提が正しければ、おそらくVCは今まで以上に高いリターンを出すことのできるファウンダー・事業領域に投資をすることになるでしょう。
多くの場合、高いリターンを出すことのできるファウンダーとは、メルカリの山田さんやラクスルの松本さんなど、経験や実績の豊富な方が想定されます。また、後述しますが、高いリターンを出せるファウンダーの条件の1つとして考えられるのが、グローバルにビジネスを展開できることです。そのためには、語学力は当然として、現地の商習慣の理解や、現地の人脈も必要になります。
従って、学生起業家をメインに高いリターンを出そうというVCは、かなり稀有な存在になると思います。

もう1点、こちらはファクトが足りていない甘い仮説ですが、2015年以降に積極的に学生起業家に投資をしていたファンドのいくつかが、そろそろ新規投資をしなくなる頃合いなのではないでしょうか?こちらも学生起業家にとって大きな転換点となるはずです。

②融資ハードルの上昇

スタートアップの創業期の運転資金として、VC、エンジェル投資家さんからのエクイティ出資と並んで選択肢に入りやすいのは、政策金融公庫の創業融資であると思います。
しかしながら、政策金融公庫の創業融資も今現在は学生起業家に対して十分な運転資金を提供してくれるかと言われるとそうでもないというのが現状です。
実態の売上がなく、キャッシュポイントもまだ甘く、その業界での実務経験もなく、貯金も殆どないファウンダーに対して、今の公庫は非常に冷たい印象を受けます。
もちろん、「増資してれば公庫は余裕」みたいな風説が、厳しく感じる原因の1つでもありますので、公庫の判断は極めて合理的なものだと思います。
しかしながら、学生起業家にとって創業期の資金となる要素が欠けてしまうのは非常に手痛いです。

③若手のレンジの変化

今のスタートアップ界隈において、若いと言われるのはU20、場合によってはU18になっていると感じます。私は今年23で新卒1年目の代ですが、自分より圧倒的に優秀で多くのチャレンジをしている未成年に出会う機会があり、そのたびに自分の不甲斐なさを感じます。

「若くて、ガッツがあって、成長率が高そうで、素直」こういう評価がつくのは、大学2,3年生から、高校2,3年生にシフトしていくのは、容易に想像がつきます。


学生起業家の未来は?

2020年以降に起業して資金調達をする大学2,3年生は、どのようなチャンスがあるでしょうか?

①VCのポートフォリオ?
運用総額が50億を超えるようなVCだと、ひょっとしたらポートフォリオの切り口の一種として、学生起業家というカテゴリも想定しているかもしれません。(これは特にそういう話を聞いたわけではないので、完全に想像です。)

②FoFの可能性
若手キャピタリストの育成や、2巡目起業家(1度起業経験のあるファウンダーのリトライ)を狙うような、短期的リターンにとどまらず中長期のエコシステム構築に視点を向けているVCなどでしたら、22~25歳くらいのスタートアップコミュニティ出身の若手をGPに据えて、1~2億円程度のファンドをFoF(ファンドを切り出してさらに小さいファンドを作ること)で組成し、親ファンドのGPがリーチできない若手起業家に対して初期接点を取る可能性も考えられなくはないと思います。

③グローバルを狙えるファウンダーを目指す
高いリターンを出せるファウンダーの条件としておそらく上位に来るであろう要素として、「グローバルの市場が狙える人物である」という点があり得ます。
2020年以降、国内で確立された比較的新しいビジネスモデルを、東南アジアやアフリカなどの成長率の極めて高い市場でタイムマシン経営ができるファウンダーというのは、重宝されるのではないでしょうか?従って、言語はもとより、それらの国の商習慣や現地で頼れる人材とのつながりを作るためにも、今後起業を志す学生は、海外のイケてるスタートアップにインターンするとかもアリかもしれません。

④創業期のメルカリやスマートニュースを探せ!
今現時点では立ち上げて間もない4,5名のスタートアップだが、将来的に大きく成長して、海外市場も狙っていけるようなプロダクト・ビジネスを持っているスタートアップの社長にDMして、フルコミットインターンとしてジョインするというのもアリかもしれません。
ただし、これに関しては言うは易く行うは難しですが。

終わりに

本noteは、特定の会社や人物を批判したり中傷したりする目的で書かれたものではございません。万一これをお読みになった方で、不快感を感じられた方がいらっしゃいましたら、お手数ですがご教示ください。当該箇所は削除もしくは編集をさせて頂きます。

また、冒頭でも述べましたが一部かなり甘い仮説を元に論じられている部分もございます。事実ベースでの違いや、別の解釈がある方は是非ご教示いただけますと幸いです。

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