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【ふぃろさんコラボ企画】サンタに大切なモノを奪われました【ショートショート】

今日はふぃろさんのこちらの企画に参加させていただきます。

今日は思い付きで書きなぐっていきます(笑)

ーーーーー以下本編ーーーーー



ぼくは、この村で一番の歌手。

今日も村の大聖堂で、コンサートを終えてきた。


僕が歌うと、拍手が沸き起こる。

泣いてくれる人までいる。

本当は、それで満足するべきなのかもしれない。

でも僕は、満足できなかった。



子供の頃は、一つも得意なことがない、普通の子だった。

クラスの人気者を見るたびに、自分にも特別な才能があれば、と思っていた。

音楽の先生に褒められたのが嬉しくて、この歳まで毎日歌うことを続けた。

おかげで、歌を仕事に生きることができるまでになった。


だけど、ここは到達点じゃない。

努力だけでは、どうしても覆せないもの。

天性。

前にどこかの街でのコンサートホールで、

とても特徴的な声の歌手の歌を聞いた。


正直、歌の技術はそれほどでもなかった。

でも、聴いた人はみんな泣いていた。

神が与えた「才能」だった。


悔しかった。

ぼくがずっと欲しかったものだ。

その日、ぼくは知らないおじさんから

一冊の古文書を買った。


なんでもサンタを呼び出すことができるのだとか。

そういえば、うちにはサンタはきたことが無かったな。

大人になって、プレゼントをもらうのも悪くない。



揃えるものを揃えて、召喚の呪文を唱えた。

緊張して、ちょっと噛んでしまった。

・・・何も起こらない。

すると、ノックの音がした。



「どなたですか?」

「お前が呼んだんだろう。」

(あ、普通にドアから入ってくるタイプなんだ、、、)


ぼくは彼に、特別な声が欲しいと告げた。

彼はぼくにこういった。

「いいだろう。お前の望むものを与えよう。」

「一人でも合唱できるほどの、素晴らしい声を授けよう。」

「その代わり、ワシもお前から1つ、貰っていくぞ。」


気が付くと、男は消えていた。


ぼくは恐る恐る声を出してみた。


最高の声だった。

一人で話しているのに、複数が話しているような。


でもすぐに、おかしなことに気づいた。

一つの音しか出せないのだ。

なるほど、あいつはぼくから「音程」を奪ったのか。

どうしよう、明日は大事なコンサートがあるのに。



コンサート当日。

一か八か、音程はとれないけれど、

せっかくこんな声になったんだからと、

コンサートで歌ってみた。

ははっ、今日でぼくの歌手生命も終わりか・・・。


(・・・いや、これはこれでウケるんかい( ^ω^)・・・)


そして、ぼくは気づいた。

彼が奪ったのは、音程だけではなかった。


ぼくは今まで「才能」がなかったから、

せめて音程だけでもと、必死にボイトレをやってきた。


でも、今日の観客は、音程なんか気にせずに拍手をくれている。

昨日偶然手に入れた、たった一晩で得た才能。


ぼくのプライドはズタズタだ。

もう何も練習しなくても、この声さえあれば

ご飯は食べていけるだろう。

代わりに、生きがいは失ってしまった。


なんてやつだ、、、

まるで悪魔のような・・・


その100円が、ワディのゼンマイを回す