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映画評

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劇場もしくは家で見た映画について。かたいものからやわらかいものまで、変幻自在。
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記事一覧

影を慕いて 〜青春の終わりを容赦なく描ききった名作『暗殺の森』〜

影に憑かれた男の映画である。 影とは叶わぬ夢が見せる幻、失われた青春の残照。 13歳の時に性…

脱輪
3週間前
12

『パンチドランク・ラブ』 〜電話、移動、連結が生むマジカルなラブストーリー👊🏻💞…

ポール・トーマス・アンダーソン監督の『パンチドランク・ラブ』(02)見た。 なんで? なんでこ…

脱輪
2か月前
9

あゴッホよりふつ〜うに 〜おもしろくてやがておそろしき傑作ドキュメンタリー『クラ…

アメリカンアンダーグラウンドコミック界の先駆者ロバート・クラムを追ったドキュメンタリー『…

脱輪
5か月前
5

Twitterで話題の謎の映画を見てみた 〜あるいは80年代カルチャー入門〜

Twitterで謎の映画として話題になっていた作品を見てみた。 『悪魔ですとーりー』(DEVIL DE S…

脱輪
4か月前
24

2023年最後の映画日記 〜ホラー、終末、フェミニズム、“sweet home”〜

2023年12月30日 大脳辺縁系系の映画に続けて当たった。 サルとヒトの境界線なり突然変異的進…

脱輪
4か月前
7

殺し屋系Youtuberのモーニングルーティーン 〜『ザ・キラー』は本当におもしろい映画…

・プロローグ〜なにを見てもフィンチャーを思い出す、が·····?〜 ハリウッドの鬼才デ…

脱輪
4か月前
26

2023年ベスト映画3

①ファブリス・ドゥ・ヴェルツ『依存魔』 ····· ②デヴィッド・フィンチャー『ザ・キラー』 ····· ③Youtube『日本一ホストどっこい翔平チャンネルのキング回』 ·····

『THE BATMAN』は失礼な映画? 〜フィクション作品における礼儀とリアリティライン〜

『THE BATMAN』、公開当時「バットマンにしては異例の重くて暗いゴシックミステリー」とかで評…

脱輪
6か月前
11

言葉を忘れて森へいこう 〜ファブリス・ドゥ・ヴェルツ『依存魔』からゴシックの美学…

言葉を忘れて森へ。 時折そう思うことがある。 例えば容赦なく照りつける夏の日射しと騒々しい…

脱輪
7か月前
13

『君生き』〜眞人は母を愛していなかった!?〜 (無修正ver.)

『君たちはどう生きるか』を巡る様々な言説、「炎に巻かれて焼け死んだ母を助けられなかった息…

脱輪
8か月前
20

唇の裂け目は鏡の向こう 〜映画史上最凶の天才アンジェイ・ズラウスキー監督の謎めい…

・プロローグ 触感に優れた映画だ。 手と指。 口と唇。 言葉と欲望。 そして、ザ・ダブル(…

脱輪
9か月前
12

眼刺しのラブレター ~『女王陛下のお気に入り』解体~

どきどきしていた。わくわくしていた。アメリカ版のティーザー動画が上がったのが去年暮れ。『…

脱輪
5年前
6

ヨルゴス・ランティモスと神話的リアリティの地平~作家論に代えて~

先の記事 (しらない恍惚を盗む人〜聖なる鹿殺し、ヨルゴス・ランティモス、神話的境界〜|脱輪…

脱輪
5年前
6

しらない恍惚を盗む人〜聖なる鹿殺し、ヨルゴス・ランティモス、神話的境界〜

聖なる鹿殺し。前作『ロブスター』で未婚者が動物に変えられてしまう寓話世界を描き注目を集めたギリシア出身の監督ヨルゴス・ランティモスによる五つ目の長編作だ。 主人公は高名な心臓外科医。眼科医の妻に娘と息子の二人の子供を持ち、庭付きの家で裕福な生活を送っている。ある日、主人公と曰くありげな交流を持つ少年が一家を訪ねるところから、恐るべき異変が起こりはじめる。息子は突然立てなくなり、次いで娘までもーーそれまで礼儀正しかったはずの少年は牙を剥いて主人公を弾劾し、待ち受ける残酷な運命に