『美しいとき』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 17/19〜

1968年の五月革命やサルトルとボーヴォワールのさるぼぼコンビ(勝手に命名、この二人のいわゆる“契約結婚”の欺瞞を暴いた映画『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』は、今日的なフェミニズム視点からも必見)の思想的活躍などを受け、女性解放運動が盛り上がりを見せた1970年代、田舎の農場からパリに出てきたデルフィーヌと、スペイン語教師で熱心な活動家キャロルの道ならぬ恋を描く。
なかなかにどっしり構えた映画ですね〜、前半はフェミニストたちの“過激な”活動の様子がいきいきと捉えられ、あらゆる政治運動はまず第一に“途中参加が許された青春”として経験されるという本質がマジメに観察されます(とはいえ、政敵の講演を妨害した彼女たちが逃げ出すシーンでJanis Joplinの「Move Over」がかかるセンスはどうかと思いますが·····その手の無邪気さ、ひねりのなさがわが国ではあさま山荘事件という陰惨な結末に繋がり·····ってのは読みすぎィ!)、キャッキャウフフなムードから一転、後半は女性解放論者の自己矛盾、政治運動やレズビアンに向けられる差別感情、女性の自立を阻む因襲的な田舎社会、といったシリアスなテーマが浮かび上がってきます。
中でも、情熱家としての側面が地元イデオロギー(これこそひとつの政治性!)と旧弊な価値観(その代表が母親)によって見事に去勢されたデルフィーヌと、そんなしがらみなどおかまいなしにふるまう都会の女キャロルとの対照は苛立たしいほどリアルで、最後に下される選択が二転三転する演出含め、実に手ぬかりない、ものの、ちょお〜っとだけ、マジメすぎる気も·····

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