『アヴァ』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 18/19〜

問題作。
開巻劈頭、強烈な日射しが照りつける真昼のビーチ、水着でバカンスを楽しむ大勢の人々、その笑い声を不穏な弦楽器の音色が掻き毟り、いましがた暗闇から浮かび上がったような、真っ黒い犬が背を揺すって桟橋を歩き始めると、カメラが後を追い、やがて画面左手に横たわる少女のもとに辿り着く、アヴァ、犬の飼い主はジュアンという青年で、二人の点は黒い犬が描いた軌跡によって結びつけられる。
魔界の番犬ケルベロスが彼女を見つける、啓示的なその瞬間、絢爛たる闇を受け入れた代償としてアヴァは光を失ってゆく、バタイユの名作『眼球譚』のごときエロティックな球体幻想(病院の視力検査で黒い筒の中に置き去りにされた目、口に目玉を咥えた悪夢は眼球譚そのもの、銃口、パチンコ玉、現状の見える範囲を記録すべく新聞に描かれた円、幼く鮮烈な乳房)であり、それらイメージの蛇が愛情深く支配的な母の超克という幹にまとわりつき、死神を思わせる黒い馬と警官の揃って装着したフェイスシールドと意味深なセリフ「ここは地獄だ」が覗かせる想像力の別世界に向けて、得体の知れぬ確信が炸裂する、妖しくも美しいガールミーツボーイ神話。

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