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#ガンダムSEEDFREEDOM のネタバレ感想 これはひどい(大爆笑)(大満足)

後半でのあの開き直った展開をずっとやりたかったんだろうなって。
ただ脚本の人が今も健在だったらどうなってたかなぁとも。

エンタメガン振りの映画です。
くだらねぇ事なんて笑い飛ばしてやろうぜって意気を感じたし、
私も制作者の術中にハマりました。

はじめに ガンダムSEEDシリーズの思い出

シン・アスカ カナード・パルス スウェン・カル・バヤン
好きなのを並べるとこのスリートップになります。

結論から言ってしまうと、特にDESTINYは、
シンプルに力不足な人が手に余るスケールの話をやろうとして、
案の定、しかも何の工夫もなく破綻したと私は思っています。
おまけに現場でゴタゴタをやらかしたのを隠す事すらできなかった。
この評価は今でも変わっていませんしこれからも変わらないでしょう。
(こんな失態を鉄血と水星で二度も繰り返したの馬鹿じゃねぇのかとも)

でもそれはそれとして登場人物の行く末は気になっていましたし、
シン・アスカは大好きです。すごい思い入れがあります。
今思うと単純に力不足な構成脚本ではあるけれど、
情念みたいなものはあって、そこに惹かれたのかな…なんて。
そして高山版とか無双とかスパロボZ、
更にそれ以降もいい感じの再構成が入ってよかったなとも。
どんな理由であれ、生み出されたキャラクターが動き出す事もある。
そんな彼や彼女が人々に愛される事も。

いなくなってしまった両澤千晶女史

この方はもうこの世にいないんだってのを、
特に映画の前半で強く感じました。
SEEDとDESTINY特有の台詞回しであるとか、
(特に男男の)情念であるとかは、
ほぼほぼ両澤千晶女史が担っていたのだろうなと映画を見た後は思います。
上手くはなかったし基礎力もなかった、でも情念は唯一無二だったんだと。
良くも悪くも。…本当に良くも悪くも。

残されたスタッフが頑張って両澤女史のやり方をトレースしようとしてた、
例えばなんか無理やりねじ込まれる男女のもつれであるとか、
でもその辺は型を作って魂を入れずまでしか行けなかったな…
とは正直思いました。リスペクトはすごく感じたのですが。
なのでSEEDシリーズ特有の男男の特大感情を期待して見に行くと、
それはもう二度と見れないんだ、という感想になってしまうかも。
あれは両澤千晶女史にしか出来ない事だったんだなって。
放送当時は正直描き方が気持ち悪いと思ってたんですが、
それ故の引力もあったんだと。

一方で余人だからこそ見えるポイントも抑えてはあるんですがね。
例えばキラとアスランが殴り合う(実は一方的に殴られる)所とか。
これは無印放映の頃からやっとけや君ら(カズマやヴァンの同類って意味で)バカなんだから、と思ってました。

解き放たれたシン・アスカ、あるいはリブートされたシン・アスカ

で、誤解されそうな言い方をすれば。
福田両澤体制の呪縛を一番受けていたのがかつてのシン・アスカでした。
だったのですが。

君そんなキャラだったっけ、と劇場では思いました。
具体的にはビュッフェで茶色いものいっぱい食べてた所とか。
憑き物が落ちたと言われたらそれまでですが、
DESTINYでボロクソ言われた所はほぼ消え去っていました。
えっそこまで変わる…というか戦災以前に戻るの、位に。

「戦争を終わらせる」という単純で強い軸はあるけれど、
環境が良くなかったり本人が冷静になれなかったりで、
DESTINY(アニメ)のシンはああなってしまった。
…というかまぁ有り体に言ってしまえば脚本構成が座礁したので、
その煽りを一番受けてしまったんですが。

何というかこう、リブートされたなぁって。
これはこれでいいと思うし、
当時はあんな扱いをされて憤懣やるかたなかったんですが。

ボッキリ折れた脚本構成の被害を最も受けた所も、
「シン・アスカ」の一部だったのかもなぁと、
それが劇場版で消えてしまった今となっては思います。
無い方がいいに決まってるんですけどね、
それはそれとして理不尽な寂しさも感じるというか。

デスティニーは格好良かったんですよ。
それは間違いないですし見たいものも見れた。
プラモ、高山版、GENERATION of C.E.、スパロボとかで、
本編の無念を晴らす勢いですんげぇかっこよく描かれてるのを、
「本家の力を見せてやる」ってのを強く強く感じました。
…というかアニメスタッフからして、
放映当時から悔しさを隠してなかったのが、
ようやっと本編でも形にできたというか。

一方でダメだった所には筋が通った

・兎にも角にも説明が足りてない、というか制作者が作品を整理できてない
・おそらくそのせいで特に無印後半とDESTINYで急に人間味が消えた

福田両澤体制でダメだった以上の二点は、
徹底的に手直しされて頭にも心にもすっと入る作品になってました。
脚本構成の交通整理が出来たというのかな、酷い渋滞を起こしてたのが。
たぶん世間で好評を博しているのはここがすっきりしたから。

連合ザフトオーブ、アズラエルジブリール、ラクスカガリ、
もっと言えば主人公のキラシンアスランでさえ、
君ら結局なんでこんな事してるの?
ってのがアニメだけではさっぱり分からなかったのがSEEDシリーズでした。
ここを小説版とか漫画版とかスパロボとかが、あるいは視聴者一人一人が、
断片しか示されていない中から何とかつなぎ合わせていたのです。

しかし。劇場版ではものすごくシンプルで明白な軸が入ったのです。
「愛」というたった一文字。
「必要とされるから愛するのではなく、愛しているから必要なのだ」
というとても分かりやすい軸が劇場版でいきなり提示された。
ちょっと唐突だと思わなくもなかったけれども、でも一気に腑に落ちた。

これを踏まえて劇場版を見ると(正直かなり強引ではある)展開が、
すっと頭に入ってくるのです。
登場人物たちが何を求めて何をしているのかもよく見える。
無印とDESTINYも…とは流石にいかないんですがそれはともかく。

ロジックが成立していて、かつ見れば分かるように描いてある。
今回の劇場版は今までみたいに暗中模索する必要がなかった。

「脚本」は福田己津央氏、後藤リウ氏、両澤千晶女史。
この三人のうち誰か、あるいは複数人がいい仕事をした。
誰の仕業かな?

からの。

なんでルルーシュとギアスなんだよwww

実際こうなってしまって大笑いしそうになったのを頑張って堪えました。
堪えきれてなかったので私の姿はたいそう気持ち悪かったでしょう。

いやプロデューサーが同じだし無印で意識もしてた、
「反米やるならブリタニアなんて呼ばずにアメリカって名付けてる」
なんて言ってたのは谷口悟朗氏だったか黒田洋介氏だったか、
とにかくギアスはガンダムSEEDの影響も受けていた作品ではあります。

だからってまんまルルーシュ出すヤツがあるか!?
キーボード打鍵してビーム曲げる武器の解説した挙句に「問題ない、新兵器がある」なんて言い出してねぇこれ絶対「ルルーシュで宜しく」って福山潤氏に演技指導したよね?!
更にラクスがCCみたいな馬乗りモンキーポーズで支援メカに乗りだした所でもう私は笑いを堪えるのに必死になってました。
オマージュ元がオマージュ先をやり返すのはルールで禁止ッスよね?
加減しろ莫迦!

…ごほん、ともかく。それはそれとして。
他にも色々な所からのオマージュやパロディ
(セルフパロディもあるよ!)で作った「型」が、
別の生き物になって元気よく跳ね回るのが、
最高に面白い映画でもありました。
思い出せる所だけでもファウンデーション(ハインラインを名乗るキャラを出しておいてアシモフを意識してませんなんて絶対ありえないでしょ)
スクライド(ブラックナイツのノリ)、
逆襲のシャア(あんな上手くアグネスでクェスをエミュレートするとは)、
Gレコと水星の魔女とゲッターロボアーク(なんか変な粒子で周りを無力化しつつ全方位サンダー)、
ライブアライブのセントアリシア(あれステラなのかシンの心中なのか。…正直これは我ながら言いがかりだと思います)
小説版ファーストガンダム(最後はセイラさんが裸で自由に泳ぎ始めるあの結末を意識してたんじゃないかな)など。
あと言われてみるとディスラプターもまんまバスタービームでガンバスターですね。無印で1st、運命でΖやっての、劇場版でΖΖのハイメガキャノンだとばかり。

福田己津央監督にとってのクロスアンジュ、富野由悠季監督にとってのブレンパワード

なお私はクロスアンジュ未見です。だいたいどんな作品でどんな扱いだったかを聞いてる位の知識。今度ちゃんと見ないと。

監督(スタッフもかな?)がやりたかったんだろうなぁと思える、
怒涛のオマパロ祭りの中で、もっと根本的で大きな源流を感じたのが、
「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」でした。
いや怒涛のギアスネタからオルフェがヴィルキスもどきに乗り出した所で、
「お前エンブリヲのポジションだったのかよ?!」
で完全にガードを粉砕されて、
後の私は制作者のなすがまま、完全陥落もしたという経緯もあるんですが。
もっと根本的な話でもあり。

まぁ敢えて言いますとね、特にSEED DESTINYで、
福田己津央監督の評判は浮世で大分落ちたんです。
放送当時からしばらくインターネットで散々書かれてました。
かくいう私も正直いい評価はしていなかったです。
演出は上手いんだけど位の存在でした。

そんな扱いを自らの手で粉砕したのがクロスアンジュだったんです。
エログロが悪趣味だって言うなら本気で殺ってやる、
更に俺のやりたい事をやりきってやる!
…というテンションだったかは本人ではないので分からないのですが、
しかし何か意趣返しをやろうとはしたんじゃないかな。それも強烈に。

富野監督がブレンパワードで搦め手も使いつつ描きたいものを描いて再起に成功したように、
たぶん福田監督もクロスアンジュで再誕したんだと思われます。
具体的には性欲肉欲の割合がSEEDの頃から大分すごく増えたのは、
おそらくクロスアンジュで何かを掴んだからです。
「愛している」なんてあんな堂々と言うのは、
SEEDやDESTINYの頃では無理だったんじゃないかな。
これはクロスアンジュを経由したからこそ言えた言葉である筈。
…あるいはいなくなってしまったあの人への言葉なのかもしれないと思うと途端に辛くなるんですが。

すごくかっこいいアスラン・ザラ、言われてみると全てが面白いアスラン・ザラ

ズゴックに乗ってくるなんて聞いてねぇよ!

脚本構成の破綻で一番酷い目に合ったのがシン・アスカである一方、
脚本構成に愛されたせいで酷い事になってたのが、
特にDESTINYでのアスランでしたが。

この劇場版ではひと味もふた味も違う。
みんなが見たかったであろうアスラン・ザラを二十年越しにやってくれた。
(正直盛り上げへの都合に見えてあまり乗れなかった)キラ曇らせを修正!
絶望的な状況に全く動じず皆を引っ張る!
白兵戦でもモビルスーツ戦でも最強の戦士として大立ち回り!
ストライクフリーダムに乗ってドラグーンも使うぜ!
(完全にキラだと思ってました。ストライクないしフリーダムに乗せる妄想はしてたんですが公式に先を越された)
カガリは誰にも渡さない!
でも他人に見られる前提であんな妄想するのはどうかと思うぞ!
面白かったけど!

文句なしに格好良かった。
いやキラを修正した後のセリフには「お前が言うな?!」とも思ったけど、
それはそれとしてあそこはアスランが修正しないとダメだった。
一方で他にも色々と突っ込みどころもあるんだけど、
その全てを面白ポイントにしたの脚本構成の妙だなって思いました。
この辺は後藤リウ氏の仕事なのか福田己津央氏の仕事なのか、
(多分違うと思うけど)あるいは両澤千晶女史の遺稿だったりするのか。

このかっこいいアスラン・ザラを見たかった。
&アスカガ民はこの映画で涅槃に行けたと思います。
二十年越しに完璧を超えるアンサーを出してきました。

外伝はいったん忘れよう←追記 ごめんなさいあれガーベラストレートだ

劇中であの状況になったら該、ミナ様、カナード、
特にミナ様が動かない筈がないですし即座に軍神になりそうですが、
外伝まで拾ってる暇はなかったよなぁとも思います。
それはスパロボとか、あるいはアストレイ公式に期待しておきます。
…ときた洸一先生に話が回るんじゃないかな。絶対いいの描いてくれる筈。

・追記
決着をつけたマイティストライクフリーダムのあの刀が、
ガーベラストレートの直系だとの噂を聞いて自分の不明を恥じました。
アストレイやスタゲの皆は多分あの刀に全てを託したのか…
ときた先生! コミカライズお願いします!!

あ、やっべぇメカアクションの事書き忘れてた!

(この節をまるまる公開後に書き足してます)

冒頭でジンとダガーが交戦するんですが、
まずここからしてTVアニメと描き方が変わってました。
というかマシンガンの描写が全然違う。
後を意識してか火線がかなり細くなってました。

先に書いておくと多分ダガー、ウィンダム、ジンを描きたくて仕方なかったスタッフがいる筈。
特にジンってスタッフにこんなにも愛されてるんだなぁって思いました。
SEEDの世界観を象徴するモビルスーツだしそりゃ皆思い入れあるよね。

ライジングフリーダムのシールドドラグーン、
からのフルバーストしてのトドメ。
なんか謎技術でビームが通じない、どうする?!
ここまでの大立ち回りをするとは思ってなかったムラサメ。
ムウ専用機を出そうとすれば出せたであろうに敢えて一般機だったのは、
絶対制作者に強いこだわりがあったからでしょう。
艦長の元に舞い降りるシーン最高に格好良かったよ。
ルナマリアが1回目の狙撃成功で「やったか?!」からの2発目で案の定。
ドラグナーのキャバリアーかよ?!
「ジャスティスなんか」シンお前さぁ?! いや合ってなかったけど!
良く頑張ったよライジングフリーダム、君の勇姿は忘れない。

まさか不沈艦アークエンジェルがあんな原型を保たず沈むだなんて…

からのズゴック無双。&中から出てくるジャスティス。
うおお新型デュエル&バスターがミーティア付きで来たぞ!
えっフリーダム・ジャスティス・デスティニーを完品で仕舞ってたの?!
ヴィルキスだこれーっ?!
ミレニアムすっげぇ! 流石はアークエンジェルで戦艦対機動兵器アクションに先鞭をつけたSEEDスタッフだ!
レッドソードインパルスかっけぇ!
アカツキってレクイエムも完全反射できるんかーい?! それにそのバ火力はいったい…?
達人は心の表層で剣を振ってるわけじゃないんだぜ、いいお約束だった。
アスラン強いな! そして切り札はゴトラタン…いやアルトアイゼンだな!
ラクスが持ってきたアレは0ライザーオマージュでもあったかもね。
いや無法に強いねあの新型フリーダム!
BGM:Meteorだし負ける気がしないね!
もうちょっとだけブラックナイツのモビルスーツにそれぞれ個性があっても良かったかも…でも予想より全然頑張ってた。
ゆかり王国って誰が上手い事言えと。
今回の敵役はおそらく悲しき過去もあるんだろうけど、あの末路で良かったと思います。死ぬべき時に死ねる方がいい事もある。
愛か…それをSEEDやDESTINYの時に言い切れてたらな…

箇条書きになってしまいましたが本当にメカアクションが素晴らしかった。
大満足。「予想を裏切り期待を裏切らない」への120点の回答です。

自由になった「SEED」、荒野の自由から立ち上がった「SEED」

複数回ある「人間ポップコーン」(当時の公式の誰かの言い様)の所で、
「SEED」独自のポイントってそこじゃねぇよ?!
いわゆる「悪い所」を天丼するか?!
なんて辟易したりもしたんですが。

今になって振り返ると欠かせぬ柱であった人物を失い、
自由になったというより無辺の荒野に取り残されたSEEDシリーズが、
再び立ち上がってエンターテイメントをやりきった、
そしてやりたかった事も全部やりきったのが、
「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」なんだと私は思います。

十年以上前に、劇場版の話が出てきた時は「止めとけ」と思いました。
音信不通になった頃は「だろうな」とも思いました。
けれどSEEDのスタッフと福田己津央監督は諦めていなかったのです。

私はプロを舐めてました。ごめんなさい。
そしてこの劇場版が上映されるまで生きてて良かったです。

馬齢を重ねるってのも悪くはないとまたも思えた次第。


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