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「そんなの無理」から始まったメリークリスマス

サウジアラビアから凱旋した照寿司のなべちゃん、ともに世界を目指そうとマカオで一緒にイベントした年からクリスマスセッションを一緒にすることになった。今年でもう5年目になる。昨日の僕らのメニューはこの5年間の努力が結集されたようなメニューとなった。それを支えるチーム力、5年間を支えた裏側の努力とチーム連携があるからこのイベントが可能となる。やりきることがとても重要だなといつもそう思う。

「そんなの無理だろ」

僕らはいつもそこから始まる。25名に対してワンカウンターで和牛と寿司のフルセッションをしているレストランは世界でも僕らだけだろうと思う。世界的なシャンパン不足を予見したかのように盟友の宮森兄弟(宮泉銘醸)と一緒に動き出していたスパークリング日本酒は、3年目にして初めてドンペリを超える販売本数になっている。いよいよ7000本の生産に向けた体制がスタートする前哨戦だ。なべちゃんも「S(スパークリング日本酒)が一番出るようになったねぇ」と感慨深そうに話す。人には信じるという優れた能力があって、あとはチーム団結してやり切るということの差だけだと思う。

コロナが始まったときに「きっと大変だろうから、先払いしたい」と海外のゲストから予約未定のディナー代金の支払い要請があった。そのリクエスト自体がありえないのだが、「必ず日本にくるからそれまで取っておいてくれ」とのことだった。その冬も来られず、その次の春も来られず、そしてついにそのゲストがやってきた。直前の連絡だったが、「すべてをやりきるぞ」とスタッフに緊急ケアの体制を連れて行く。文字通りのVVIPケアモードである、そりゃそうだ。人が大変なときに遠い日本のレストランに未来の予約をしてくれたのだ。そんなゲストはこういった「あの日本酒のスパークリングを飲んでみたいんだ」そう彼は伝えて確かめるようにその味を感じていく。「これは飲んだことがないぐらい旨い」と伝えて、スタッフ全員で一本飲んでくれと粋なオファーを頂く。

当初予定がなかったプライベート熟成の骨付の神戸の塊を切り出す。このアドリブ感が僕らのクリスマスだ、毎セッション変わっていく。豪快に焼いてから、それを今回は照寿司のあの庄分酢の赤酢のシャリで握る。裏面に胡椒を当てて頂くのだが、これが肉寿司の中で本当の王様だろうなぁっと思うぐらい旨いのだ。追いかけるように大間のトロを贅沢に叩き、ベッタラと合わせたトロベタの巻物が続く。料理しながら、思わず僕らも食べたくなるようなそんな豪華なライナップだ。

最後は北欧からのスペシャルゲストもやってきて、イタリアの友人が焼き立てを直送してくれたパンドーロとヘーゼルナッツソース、そして恒例のグラッパと続き夜は更けていく。「そんなの無理だろ」を悩む人たちにこそ、このクリスマスセッションを観てもらいたいと思う。世の中、やり切っていくと聖夜に鐘は高らかになるものだ。ゲストの皆さん、今夜もどうぞ宜しくお願いします!


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