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筒美京平を偲ぶ 東京ららばい

 筒美京平を偲んで、彼が作曲した曲をいくつかとりあげてみたいと思います。
 もちろん、私が口出しをするのは、原則
、歌詞が中心になると思いますが。

 第一弾は、「東京ららばい」。
 中原理恵のヒット曲で、作詞は、松本隆です。1978年、私が18 歳の時の歌です。
 この歌詞は、都会の情景を表現する作詞として、非常にテクニカルで、さすが松本隆、と、彼の才能に惚れ惚れする一品です。
 でだしは、
♪ 「午前3時の東京湾(ベイ)は、
 港の店のライトで揺れる」
 冒頭の設定、見事な情景描写です。
 これが2番になると、こう相対します。

♪「午前6時の山手通り
  シャワーの水で涙を洗う」
 この歌…タイトルの「東京ららばい」のテーマは、まさに、大都会の【ないものねだりの子守唄】です。
 
 決めの歌詞は、1番が、
「地下や高層ビルがあり、星に手が届くが、触れ合う愛がない」
 そして2番が、
「夢や明日がなくて、さらに人生は戻れない。それを【あなたもツイてない】につなげます。
 最後は、
「部屋があって、窓があって、タワーは見えるのに、幸せが見えない」と、駄目押し。
 ただし一点。
 この歌詞のエンディングは、
♪「だから死ぬまで、ないものねだりの子守唄」 なのですが、
 私ならここは、
「だからあしたも、ないものねだりの子守唄」にしますね。
「死ぬまで」は、ドギツすぎます。

 さて、40年前から、多くの人は気づいていたのです。これは決して、松本隆のフィクションにとどまりません。
 養老さんなどは、都会で仕事をする人は、半強制的にでも、数年ごとに田舎と参勤交代をすべきだと、言い続けています。私もまったく同感です。
【東京ららばい】という流行歌を聴いて歌った人のうち、何人がそのことに気づいたでしょうか? そして、実際に危機感を抱き、自分の人生を操作したでしょうか?
 歌は世に連れ、世は歌に連れといいますが、この歌が生まれたあとも、首都圏集中現象は継続しました。
 歌や歌詞から、何を感じ、そしてそれをどれほど自分の人生や魂に食い込ませるか?
 もちろん、リスクも伴いますが、私は、非常に大切なことだと思います。
 だから私は、今でも、真剣に歌を書いているし、そしてその反面、抽象度が高くてゆるい地方都市に住んでいるのです。

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