太陽光パネルの大量廃棄を逆に環境負荷にしないための挑戦が始まっている

再生可能エネルギーや太陽光発電ウォッチャーでもある私としては、このタイミングで論じるべきことだと思い、今回のテーマを選びました。
そのテーマは、まもなく始まるといわれている太陽光パネルの太陽廃棄問題と、それに向けてすでに始まっている挑戦についてです。

太陽光発電が再生可能エネルギーの大本命であり、これまで着実に発電量の規模を増やしてきたことは、喜ばしいことだと思います。太陽光発電の普及が始まった当初は、日本が世界をリードする太陽光パネル供給国で、国内でも補助金の効果もあってどんどん普及が進みました。
今ではそのお株を海外に奪われたとの指摘もありますが、今もなお日本の太陽光による発電量は世界の第4位です。世界有数の太陽光発電大国である地位は依然として変わっていません。
それだけの規模で太陽光発電が普及しているということは、当然それに関連する廃棄物も多くなります。特に問題になると見られているのが太陽光パネルで、その寿命はおおむね25年から30年程度とされています。
太陽光発電の本格的な普及が始まったのは1990年代なので、いよいよその時期に設置された太陽光パネルは寿命を迎えつつあります。環境省は2030年代の後半に最初のピークが到来すると見ており、それに向けた対策を急いでいます。
この問題が特に不安視されているのは、まだ人類が世界中に設置されている莫大な量の太陽光パネルが寿命を迎えて廃棄される状況を経験していないからもあるでしょう。

ある日突然降りかかってくる問題ではないので、もちろんさまざまな技術が考案され、実用化されています。今回は大量に発生する太陽光パネルをリサイクル、リユースする技術の最前線をご案内したいと思います。

最初に紹介するのは、太陽光パネルの表面にあるガラスを割らずに分離する「ホットナイフ分離法」という技術です。これは東京のエヌ・ピー・シーという会社が発明したものです。
太陽光パネルは外に設置されるため、強靭さを確保するために強化ガラスで覆われています。これがリサイクルを阻んできたのですが、同社は約300度に熱したナイフで樹脂を切断し、ガラスを割らずに金属などを分離することに成功。これにより、太陽光パネルのリサイクル率は96.9%となります。ほとんどがリサイクルできるとあって、これは本当に素晴らしい技術だと思います。すでに国内だけでなく海外のリサイクル団体にも導入実績があるそうです。

次に紹介するのは、太陽光パネルを破砕後にガラスや樹脂部分、アルミニウムなどに分別する技術です。東京のリーテムという会社が考案しました。同社はもともと産業廃棄物の中間処理を手がけているので破砕技術に長けており、その技術を応用した形です。1日に40トンもの大量リサイクルにも対応できるとのことで、これも太陽光発電の環境負荷を低減できる素晴らしい技術といえます。

また、太陽パネルにはレアメタルと呼ばれる希少な金属が用いられています。日本はレアメタルのほとんどを海外からの輸入に頼っているため、国内で廃棄される太陽光パネルのレアメタルをみすみす捨てる手はありません。環境省もその有用性に着目しており、廃棄された太陽光パネルからレアメタルを取り出してリサイクルする技術の支援に乗り出しています。
すでにベンチャー企業を含むいくつかの企業が技術的な完成度を高めており、実用化や普及への期待が高まっています。廃棄された太陽光パネルが日本のサプライチェーンに貢献する日がやってきそうです。

迫りくる太陽光パネルの大量廃棄時代に向けて、もう業界は動き始めています。ピンチだと言われ続けていることをチャンスに転換して新たなビジネスを生み出そうとする動きに、今後さらに期待したいと思います。

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