ウクライナ戦争の影響で加速する、世界的な再エネシフト

ウクライナ戦争の勃発から2か月以上が経ちましたが、まだまだ戦争の終わりは見えてこず、日々犠牲と破壊だけが積み上がっています。
日本にいる私たちができることは限られていますが、とにかくこの非道な行為が一日も早く集結してほしいと切に願います。

今回の戦争ではエネルギー問題にも大きな一石が投じられています。元より世界的に起きていた脱炭素を目的としたエネルギーシフトに加えて、これまで当たり前のように手に入っていたエネルギーが手に入らないのではないかという危機感から起きているエネルギーシフトです。

脱炭素など環境問題に積極的なヨーロッパですが、そのヨーロッパは伝統的にエネルギー資源をロシアからの供給に大きく依存している現実があります。脱原発を掲げてきたドイツは最も顕著で、ロシアから直接「ノルドストリーム」というパイプラインをつないで天然ガスの供給を受けていますし、程度の違いはあっても他のヨーロッパ諸国もロシアのエネルギー資源に大きく依存しています。
ちょっと意地悪な言い方をすると、隣国フランスの原発からの電力供給とロシアからの天然ガス供給があるからこそ、ドイツは脱原発を実現できました。環境先進国といわれるドイツですが、そこには大きな現実の壁が立ちはだかっているということです。

そのロシアから、今後天然ガスが入ってこなくなるかもしれません。ウクライナ戦争でヨーロッパ諸国はロシアに対して一斉に厳しい経済制裁を科し、ロシアと政治的に激しく対立しています。ドイツはウクライナに対して軍事的な支援をするだけでなく、今後段階的にロシアからのエネルギー購入をやめていくと宣言しました。そしてロシアからの天然ガスパイプラインである「ノルドストリーム2」は事業を凍結しました。
もちろん、ロシアも黙っていません。それならヨーロッパに天然ガスは売らないという態度で応酬しています。これまでロシアに対する天然ガスの代金支払いはユーロでしたが、それをロシアの通貨であるルーブルでしか受け付けないとプーチン大統領が言い始めていますが、ロシアはそれに対して契約違反だと反発してユーロ支払いを続けると宣言しています。

ちょうど当記事の作成段階で、新しいニュースが飛び込んできました。2022年4月27日より、ロシアはポーランドとブルガリア向けの天然ガス供給を止めると通告しました。これまではブラフ止まりでしたが、いよいよロシアが伝家の宝刀を振りかざし始めたということです。この動きが他のヨーロッパ諸国や、日本にも波及するかもしれません。

こうなると、エネルギーを海外からの輸入に依存している日本はとても脆弱な立場になってしまいます。ロシアが天然ガスの供給を止めて、中東から石油が入ってこなくなったら、日本の夜はたちまち全土が真っ暗になってしまうことでしょう。エネルギーも安全保障なので、自給できることが理想です。
そこで注目されるのが、再生可能エネルギーです。太陽光は日本にも無限に降り注ぎますし、洋上風力や地熱など、日本は再生可能エネルギーの宝庫です。いつまでも化石燃料に頼らず、日本で自給できる電力は自力でまかなうべきです。

「Ember」というエネルギー系シンクタンクの発表では、2021年に初めて太陽光発電と風力発電の合計発電量が世界の発電量のうち10%を占めるようになったとのことです。この傾向は今後さらに加速するでしょうし、その目的も単なるSDGsやESG投資の達成だけではなく、安全保障やエネルギーの安定供給という目的も含まれて来るはずです。特に地下資源を持たない国ほど再生可能エネルギーで他国に依存しないエネルギーシステムを構築するべきではないでしょうか。
世界が大きなうねりを巻き起こし、大きく変わろうとしています。そんな時に「前例がない」という理由だけで新しい領域に足を踏み入れないのは、後退するのと同じだと思うのです。

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