目を覚ますと、11時少し前だった。朝の、ではなく夜の11時だ。あー、また寝てしまった。別にそこまでやってしまったと思わないが。仕事から帰ってきて、どれだけ眠くてもメイクを落とすことだけは真っ先にするようにしているから、まあ許そう。寝起きだし空腹感はないが、きっと変な時間に食べたくなるだろうな、でも今から食べると太るしな。とりあえず、豆乳だけ飲んでおくか、と冷蔵庫に向かう。ソファから降り歩きながら、これからシャワーして、髪の毛乾かして、スキンケアして、とやることを一つ一つ考えていたら嫌になってきた。私の悪い癖で、やる前からアレコレ考えて、やらねばならない事の多さに嫌気がさして、やる気がなくなってしまう。一つ一つは、負担が重くないことでも、まとめて頭の中に出てくると、ものすごく面倒くさく感じてしまう。
豆乳を一気飲みして、ふーっと息を吐き切る。独特の匂いが嫌いだけれど、肌に良いから豆乳は止めない。考えるから、無駄に心配したり、落ち込んだり、プレッシャーに自分を削られて疲れてしまうんだから。考えすぎて、どん底に落ちてから、この言葉を思い出す。どうせなら、思考の負のスパイラルに陥る前に思い出したいものだが、いつも繰り返してしまう。
目の前の一つのことに集中する、そんなことは分かっているけれど、仕事をしている時なんて、あれもこれも並行して考えて動かなきゃ、非効率だし、ミスだって増えてしまう。
もっとシンプルに生きられたらいいのに、スマホやパソコンなんてものが出てきて、無駄に便利になって非効率なものを排除していくから、求められるもののレベルも上がっていって、しんどいのだ。大体、人間なんてそうそう賢くも進化もしないのに、世界が一気にレベルアップしすぎてついていけない。たかだか人間風情が、モラルも、能力も、時代に合わせて向上していけると思っているのか。少なくとも私は、全然そんなことはない。頭の回転ものろいし、スキルもない、スキルを磨くために資格の勉強もしているけれど、呑み込みが遅いから人より時間がかかる。偏見は持っていないつもりだけれど、心の底から”多様性”を理解しているとは言えない。今の時代で、自分が嫌われ、排除される側にいることも分かっているし。
嫌われる部分を直せばいい、改善出来たら一番いいさ。人に迷惑をかけずに済むし、私も嫌な気持ちにならない。だけれど、それが出来ないから、排除される側にいるんだよな。笑えない。本当に。
スマートフォンの通知音で、妄想から現実に引き戻される。時計を見ると10分くらい時間が経っていた。無駄な苦しい思考の中にいると、無限の苦しみの中にいる気がして、何時間も経っている気がするが、現実はそうじゃない。
ふーっと溜息を吐き、シャワーをするためお風呂場に向かった。