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短歌月九ネプリ 第一回『歌人、集う』三首選

こんばんは。若枝あらうです。

1月からスタートしたネプリ「月九」、配信期間終了が迫ってまいりましたので間に合ううちに私も三首選を。ネプリの詳細は下記、西村さんのツイートをご参照ください。

ではさっそく。

集合写真の欄外どうし手を組んでだれも泣かない手品をします / 御殿山みなみ

これは先んじてツイートでも引かせてもらった一首ですが、御殿山さんの連作は今回どれも特に強くてまいりました。

この歌の「欄外どうし」は、なぜ欄外なのでしょう。わざわざ「だれも泣かない手品」と宣言しているのは、もしかしたら彼らが欄外であることに涙の理由があったからかもしれないと想像させます。それなのに「だれも泣かない」ようにする優しさ。少しの切なさと、それを乗り越える優しさのバランスがたまりません。

まだ恋にならないことを噛み締める現地集合現地解散 / 西村曜

今回の主演、西村さんの一首目。もう、流石というほかない、一首目からガツンと惹きつけてくるこちらの一首。

評で何を言っても蛇足になるほどの説得力と完成度。これだけ単語を使っておきながら、ばっちり定形。圧倒的すぎて、その先を読み進めるのに一呼吸置かざるを得ませんでした。

ポスティングバイト募集の広告をポスティングする僕のささくれ / 池田明日香

最後に、池田明日香さんの二首目。

言葉のリフレインを使った短歌はたくさんありますが、この歌はそれが表現上の技法ではなく「循環そのもの」を示している点で、とても迫るものがありました。ポスティングバイトが足りないのであれば、それをポスティングしている自分には、その空白を埋める存在意義があるはずです。なのに、そのループに空虚なものを感じてしまう主体の葛藤。それを「ささくれ」という一言であっさりまとめる。シンプルなレトリックが、歌意にマッチしているように思います。


僭越ながら以上…なのですが、みなさんの三首評を見ていると、ある程度、偏りますね。それだけ強い歌があったということだと思うので、次は自分も…という気になります。今回、入れようか迷った次選も一首、引用だけ。

いま何時?ひじ。で成り立つ毎日を時給2円で過ごしたふたり / 平出奔

それでは改めて、まだご覧いただけてない方は是非プリントアウトのほどを。第二回もお楽しみに!


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