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地方演劇を真面目に考える会 その4 【劇団の形態編 前編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

非大都市圏の劇団の形態

ようやくですが、アンケートの内容に入って行こうと思います。アンケートの詳細については上記のリンクからご覧ください。
今回は、非大都市圏の劇団の形態についてとったアンケートの内容からです。

劇団と言っても、演劇をやる団体というだけで、実際の形は様々です。大規模な会社やNPO団体から、一人だけだったりのユニットも多くあります。
自分の実感としては、どんどんと規模が縮小していっているかなと思っていたので、劇団という形式よりもユニットという形が増えているのかなと思ったのですが、まだまだ劇団という形式を作っているところが多いのだなという印象を受けました。
劇団を作るメリットは、ハッキリとした枠組みが出来るので、対外的に交渉しやすかったり、人材の確保が楽になるという部分があるのですが、逆に、人が集まる常として、権力構造が生まれやすく、不自由さも生まれやすいというデメリットもあります。
 また、少数ながら、会社やNPO登録をしているという回答もあり、地方では演劇活動が困難な状況が多い中、地元でしっかりと経済活動を行うという事ができなくはないのだという例だと思います。
逆に、演劇が好きな人たちでゆるく繋がって、みんなで演劇を楽しむというのも非大都市圏の演劇の魅力だと自分は考えます。

劇団員の数、規模

二つ目は劇団員の数です。団体の規模は様々な要素がありますが、やはり所属している人の数がやはり大きいです。

半数以上は5人以上という数字は自分の経験からすると多いなと思いました。どうしても公演の小規模化が進んでいっているので、大人数で大劇場でという劇団も減っているのではないかと感じていたのですが、5人以上で活動を維持するというのは、うまくいっているのではないかと思います。
やはり劇団にも維持費が必要ですので、人数が多ければ多いほど、その費用の負担は軽くなります。
逆に5人以下が約40%というのが、多いのか少ないのかはわかりませんが、そもそも劇団という形式で、所属するという概念も薄れていっているのかもしれません。やはり、見る側からすれば、劇団という枠があり、そこに興味を持つという指針になりやすいのですが、そもそも観客依存の演劇でなければそれにとらわれずに、自分のやりたい表現をやりたい人たちとやるというのが一番楽なはずです。今回のアンケートに現れていませんが、劇団に所属せず、フリーの役者として、いろんな劇団にゲストで出たり、たまに自分たちのユニットを立ち上げてやりたいときにやるという人口も増えてきているのではないかと思います。
そして、20人以上の団体が約10%もあるというのが驚愕でした。20人以上といえば、大都市圏でもかなりの規模の劇団だと思います。後述しますが、かなり20年以上活動する劇団もかなりの数、存在していました。推測ですが、その劇団が、中心となってその地域の演劇文化をまとめ上げてきたという歴史の中で、劇団員もしっかりと募集して、継承していっているのではないでしょうか。やはり、非大都市圏の演劇文化の一番難しい所は、この「継承する」という事だと思います。次の欄でも述べることになると思いますが、非大都市圏で演劇を始めるきっかけとして、大都市圏で演劇を経験して、地元に戻って演劇を続けるというパターンがかなりみうけられると思います。そうなると、その土地のもっていた固有の演劇観ではないので、その土地らしさが薄れてしまうのではないかと思うのですが、しっかりと演劇を次の世代へとつなげていく劇団の存在はとても素晴らしいと思っています。

演劇を始めたきっかけ

演劇に触れる機会は様々です。次は地方で演劇を始めたきっかけを聞いてみました。

その他の意見は一番上のリンクからご覧いただけます。

高校演劇や大学演劇部の存在が強く、全体の約25パーセントになります。
逆に、都会から帰って来たパターンは17パーセント。
3位と6位の、母体があり…と、地元の劇団を見ては、非常に地元の劇団と密接な関係がありそうなので、合算して、約23パーセント
ワークショップや市民劇団の場合は、かなりの場合、大都市圏から演出家や役者を連れてきての事が多いので、地元の劇団とのつながりがあるのか?といわれるとわからないのですが、これは約7パーセント
こうみると、おおかた、三つのパターンに分けられるのだなと思いました。
その中で、地元の劇団と密接に関係があるのが、23パーセント、他のパターンに関係があることもあると思うので、もっと高い数値だと思うのですが、やはり地元の劇団の活動が地域の演劇文化の拡大には非常に重要だと思います。

気になったので、演劇環境の良好な県と低い県(劇団数・劇場数などが多い・少ない)で、始めるきっかけに違いが出るのかも、調べてみました。

良好な県 回答19件中
・学生演劇から…10件
・都会でやっていて…4件
・母団体から独立…0件
・やったことなくて…0件
・ワークショップ・市民劇団から…1件
・地元の劇団を見て自分も…2件
・その他…2件

低い県 回答14件中
・学生演劇から…2件
・都会でやっていて…3
・母団体から独立…0
・やったことなくて…2
・ワークショップ・市民劇団から…2
・地元の劇団を見て自分も…2
・その他…3件

分母が少ないので、信用できるデータとは言えないが、なんとなく傾向はみえるかもしれない。
やはり、演劇を始めるきっかけは、良好な県程、学生演劇から始まっているようである。これは、良好ではない県では、そもそも地元で劇団を作ろうというよりも、都会に出ていく割合がおおいおかもしれない。
逆に、演劇環境があまり良くない県程、ワークショップだったり、都会からの帰省からという返答の割合が大きくなる。
まあ、そもそも演劇環境がよくないので、地元の劇団の影響を受ける確率が少なくなるので、そりゃそうかといったところ。

劇団の形態に対しての個人的見解

文化資産は、地域の財産だと思います。地元の人間にとっては、見なれた地元の物より、東京や都会のオシャレな文化は魅力的に見えますが、それは消費するだけの文化で、県外に誇れる文化を作り上げるという感覚が重要だと思うのですが、その上で、しっかりと継承することができる環境があるのか?は、大事なのでしょう。

ただ、個人的な経験からすると、学生演劇から社会人劇団を作った時に、長続きしないというものよくあるパターンだと思います。
色々な原因はありますが、大きくは、社会人になって、時間の余裕がなくなるというのもありますが、もう一つは、学生の時のように簡単に演劇ができなくて、楽しくないというのがあると思います。
学生時代は、稽古場が学校で用意されていたり、技術面のサポートもあり、観客も学校の仲間や先輩が来てくれるのでそこまで苦労せずとも公演をやって、楽しかったと思えると思います。しかし、社会人劇団になるとそれをすべて一からやっていかなくてはならず、苦労することになります。それで失敗して、嫌な思いを抱えて演劇をやめてしまうということがかなりあるのでないかと思います。
 比較的、劇団数の多い地域の話を聞くと、やはりそこには地域の演劇団体連盟や協会などのまとめる団体が存在しており、新しい若い人のサポートがしっかりしているなという印象があります。
そうでなくても、地域の名物演劇人的な人が、若者を助けたり、かきたてたりして、いい思い出になっているという話もよく聞きます。
 サポートする側からすると、自分たちで楽しくワイワイやるのが楽しい所に、大人が口うるさくいうのもな。という躊躇する部分もあるとは思うのですが、制作面・技術面は最初はかなり難しく感じると思うので、そういう部分をフォローする体制を、既存の演劇人が作っていくというのは重要な要素だと思います。

つづきます。
その5はコチラ

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita

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