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地方演劇を真面目に考える会 番外編13 【演劇環境を良くしたい!! 結局答えはよく分からない編】

概要

2021年に和歌山市のクラブゲートと、オンラインで開催した「地方演劇を真面目に考える会」の記録です。以下のHPにて、開催した動画のアーカイブ、アンケートデータや、インタビュー動画をご覧になれます。ぜひご覧ください。

自分の演劇を選択する

ようやくここまでたどり着きました。今までバラバラにした要素を取捨選択して、どうすればよりよい環境を得られるのかを検証してきました。
そして、最後にもなるので、その検証を元に、演劇環境を良くする方法をまとめようと思ったのですが、かなり頑張って書いた結果、全部消すことにしました。どうまとめても、まとまりませんでした。すいません。何を書いても、なにかを捨てることになるし、なにかを否定する気がして、どうしようもなかったです。
ただ、せっかくここまで書いたので、途中で放棄するのも忍びないので、お目汚しかもしれませんが、最後に何か書いておきます。

理想と現実

結局何が一番の問題だったのか?というと、大都市圏の演劇と、非大都市圏の演劇の環境の違いが、ストレスになっているという事だと思います。もちろん、大都市圏の演劇が理想であるという幻想はもう抱いてはいないですが、いわゆる無駄な努力を強いられるという実感に、不満があるのだと思います。ただ、それは大都市圏の演劇であっても、同じような問題は起きますし、別にやりやすいわけではないと思います。ただ、20年近くやってきて、結局なにも変えられない状況に、無力感は感じています。
結局、ああだこうだ書いても、結論としては、「ヒトとのつながりを大事にする」が、圧倒的正論だと思います。そうやって活動の幅を広げていき、輪を広げていくのが正しい方法だと思います。
ただ、それをそうしたほうがいいですよと、自分が書くのは、それが出来なかった人間なので、とうてい言えませんし、そうしろともいえないなというのが現実なんだと思います。
と、ぐちぐち書いていてもしょうがないので、すこし妄想でも書いて終わります。

非大都市圏の演劇はどこに向かっていくのか?

むろん、非大都市圏の演劇といっても、ジャンルから思想から、嗜好まで全然違うので、一つにくくることがナンセンスなのですが、極地のような方向に考えて、いや、妄想してみました。

草野球・ママさんバレー方面

非大都市圏の演劇は圧倒的に、役者市場です。消費者としての観客よりも、やりたい側が多数という、信じられない状況ですが、それはどうしようもない事実であり、今後もそうなっていくと思います。しかし、だからといって、演劇に魅力がないわけではありません。それは、他の文化活動やスポーツでも同じことが言えるかもしれません。
野球やバレーボールのようにプロリーグがある一方、市民レベルでもレクリエーションとして、スポーツは楽しまれています。ある会社や商店街などの小さなコミュニティーで野球愛好するメンバーが草野球チームを結成するとうのもよくある話です。
また、そこに地域の政治が関わること多いです、地域の企業がスポンサーになったり、大会の開会式で市議会議員やらが挨拶しているのを何度も見てきました。
また、そんなことにこだわらず、ただ楽しむ姿というのが、素晴らしいと思います。頑張れば大会に出て、全国という筋道もあるし、そんな事をきにしなくても楽しければいいし、上手くやれば地域行政や企業とも付き合う方法はある。という地域の小規模文化団体としての未来像はそこにヒントがあるのかもしれません。

地域プロ

一番上のリンクにあるトークライブで、宮崎のこふく劇場の永山さんが話していたのですが、地域を代表する劇団で、サッカーのJリーグのようなプロリーグみたいなのができたら面白いし、それは活動として参考になるという話はとても面白いと思いました。
地域特化型で興行団体として、一番、参考にすべきモデルケースはサッカーや野球団体の形式かもしれません。野球なんかは、よく地域性の代表のように、地域のアイデンティティ―にまでなっているケースが見受けられます。
「あの町にはあの劇団があるから」という町の誇りにまでなれば、それは非大都市圏の演劇団体としては、大成功な形かと思います。特に、サッカー、野球の地域への働きかけ方は、とても参考になると思います。

能楽

色々な考え方があるので、一概にはいえないですが、能楽は観客に見せることを最重要とはせずに進化してこなかったという話を聞いたことがあります。そもそも、大名や将軍の庇護下で、祭事としての役割を持ちつつ、芸術性を磨いていったという一面を持っているという事です。それは、こういう芸術性を持っているんだという大名たちの権力を象徴する、大事な財産という面を持っていたのだと思います。
非大都市圏の演劇は、一つ大きな矛盾を抱えていると思っています。地域のみんなに見てほしいと、大衆性や分かりやすさを追求すればするほど、テレビや映画に勝てなくなり、じゃあ、独自性や地域を追求すればするほど、地域の演劇に興味のない層には届かなくなるという面はあります。もちろん、その両方を成立させることは全然可能だとは思いますが、間違いなくどこをとるのか?という悩みはつきまといます。そこが、スポーツと一番の違う面で、「観客」という存在について、特に距離感の近い非大都市圏の演劇では、考えざるを得なくなると思います。
その中で、最初の草野球などのように、役者体験を主体的に考えていくという事も考えられますが、「観客に見せる」という、大都市圏の演劇の大前提から、一度離れてみると、とても楽になるのではないかと思います。
能楽の持つ、独自性や幽玄さは、そうしなければ成立しなかったかもしれません。ただ、現代の非大都市圏では、いわゆるパトロンを探すのは難しいでしょうし、急激な資金難に襲われると、とても弱いという一面もあり、難しい方法かなとは思います。

メタバース

非大都市圏と大都市圏の演劇の最大の違いは、「距離」だと思います。これが大前提ですが、これを書いている現在でも、新たなバーチャル空間、いわゆるメタバースが進化しつづけており、そこでは、現実の距離は関係なく、人とつながることができます。
少しづつですが、メタバース演劇というのも作られているようです。もしかしたら、近い将来、演劇の最大の弱点である「距離」を克服する未来があるのかもしれません。ただ、そこで「生身」という強みを捨てることになるので、それが演劇なのか? 一度生身の動きをデータ化して、転写している時点で、実はあまり映画と変わりがない気もするので、そこはこれから人間の認識の問題として、議論が交わされていくのでしょう。しかし、新しい「演じる」という文化の一つの形は見えてくるのかもしれません。

まとめ

皆さんの演劇はどんな作品なんでしょうか? ワクワクする? ゲラゲラ笑える? 難しくて考える? どんな演劇も、それが見てみたいなと思います。
心から、演劇を楽しんでほしい。けど、非大都市圏の人達には、どこか負い目というか、大都市圏文化への引け目を感じる時があります。非大都市圏の演劇はそこでその時しかみれない、カードゲームでいうと、スーパーウルトラレジェンドレア作品だと思います。もうそれだけで、超貴重です。そして、それを観る地域住人にのみ分かる面白さというのもあると思います。それは、他地域の人間にはどうがんばっても味わえません。とてもうらやましいです。
これを書き続けている間に、自分より賢い人がちゃんと考えた答えがあるんだろうし、どっか間違っているだろうし、役に立つどころか、へんな誤解を招いたらいやだなという思いがつづいて、厭な気分になりました。なので、ここまで読んでいただいて申し訳ないですが、ここに書いてあることは、気にしないでください。もし、気になったことがあれば、それは読んだ方が、持っていた考えが、たまたま似ていただけです。同意できないことがありましたら、鼻で笑って許してください。きっと読んだ方の意見が正しいです。
ただ、どうしたらいいのかな? なんか変だな? でもどう考えたらいいのか分からない。そういう時に、少しでも解決のきっかけになればいいなと思います。正解なんてないと思います。演劇をやってもいいんです。どんな思想だろうが、どんなに上手くできなくても、どんなに演技がわからなくても、舞台の上で、声をはっせれば、それで最高に面白いです。いつか見せてください。

ではまた。

劇作家 松永恭昭謀(まつながひさあきぼう)

1982年生 和歌山市在住 劇団和可 代表
劇作家・演出家
劇団公式HP https://his19732002.wixsite.com/gekidankita


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