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意識の進化 × D&Iの真価|組織内での実践と重要性を語る

「宇宙視点からの意識の進化プロジェクト」では、「意識の進化×○○」シリーズと題して、いま問われている人の意識の在り方、そのアップデートについてさまざまな角度から探求し、対話をお届けしています。今回は「意識の進化×D&Iの真価」をテーマに、ウエイクアップのエグゼクティブ・メンター™集団伴想人™のメンバーである小串記代(元・人材開発会社社長)、尾関春子(元・法務担当役員)、田中 雅子(執行役員人事部長)、永田亮子(常勤監査役)、長浜靖子(人事担当役員)、廣崎淳一(元・外資IT CIO)の6名で語り合いました。

※本記事内に登場する人物の所属・役職等は動画撮影当時のものです。

~メンバー紹介と本日のテーマ~

小串:小串記代と申します。昨年まで人材開発会社の社長をしておりました。組織や人材開発の分野で長く仕事をしてきました。

尾関:尾関春子と申します。伝統的な日本企業や外資系の会社も含めて複数の会社でリーガル部門を担当してきました。法務の他にも倫理、コンプライアンスや、取締役会の仕事などをやってきました。

田中:田中雅子と申します。130年以上の歴史を持つ日本の製造業一筋で仕事をしてまいりました。現在は、執行役員人事部長をしております。

永田:永田亮子と申します。日本のメーカー一筋で執行役員を経て、今は常勤監査役をしております。

長浜:長浜靖子と申します。ヨーロッパ系の企業の日本法人で、今、人事担当の役員をしております。

廣崎:廣崎淳一と申します。外資のIT企業4社に2,30年以上おりまして、CIOなどをしておりました。今はエグゼクティブ向けのコーチングを行っています。

今日は「意識の進化×D&Iの真価」について、皆さんと一緒に語り合っていきたいと思います。よろしくお願いします。

~伴想人とは~

田中:はじめに、今日ここにいるメンバーについてご紹介をしたいと思います。ここにいるのは全員、ウエイクアップの事業体の一つである「伴想人」のメンバーです。

伴想人とは、次世代の経営を担う人をサポートし、より一層元気にすることをミッションとして集まったエグゼクティブ・メンター集団です。コーアクティブ・コーチング®をベースとして、多様性を願い、変革をリードする人財作りの実現に貢献することを目的としています。

大企業で経営トップ層として活躍中の方、活躍していた方、グローバルな人財育成の豊富な経験を持つ方、コーチとしても活躍している方など、幅広く多彩なメンバーで構成されています。中でも、企業での女性役員経験者が多数いることも特徴の一つです。

今日はそんなメンバーと共に語り合ってみたいと思います。よろしくお願いします。

~伴想人が目指すものとD&Iの関係~

廣崎:それでは、まずは、私たち伴想人が目指すものとD&Iとの関係について話してみましょうか。なぜ我々がD&Iの話をするのか…どうでしょうか。

田中:そうですね、先ほども言いましたけど、伴想人そのものが多様性の集まりということかなと思っています。それと、伴想人という言葉には色々な意味があって、伴走するという意味もありますが、主旋律に沿って伴奏するという意味もあります。つまりは人に寄り添いながら視野を広げ、多様性の持つ真価を探りながら行動する人たちを後押しする、というような感じで私は捉えています。皆さんとご一緒できることを楽しいなと思っています。

永田:伴想人の漢字は、共に想うという「想い」という字を使っていて、想いを同じくしていく、共にある、という部分と、それによって共に創っていく、という意味合いもあるかなと思っていて。D&Iを実現したあかつきにはどんな世界が広がっているんだろう、ということを一緒に考えていける、(伴想人が目指すのは)そんなD&Iかなと思っています。

小串:D&Iの道のりって険しいこともあると思うんですが、そういった中で、1つのジャーニーを共に歩む、旅の道連れというような位置づけでやっていきたいなという想いがあります。

長浜:ここにいる伴想人の方たちは、日本で多様性やD&Iというテーマが経営課題として出てきたころから、何らかの形でそれに取り組んできた人たちだと思うんですね。けれど、自分の道のりを振り返ってみても、何か砂をかむようなイメージで、なんで10年前と同じ経験を、まだしていないといけないんだろうとか、いろいろと思う部分があります。一企業ではやりきれないところもあったりとか。
それが、ここに集まっている、想いを同じくする仲間で、今までとは違うアプローチで日本のD&Iに改めて皆で取り組んでいく、というのがとってもいいなあと私は思っています。

尾関:長浜さんがおっしゃったように、このメンバーは長きにわたりそれぞれの道を歩んできて、その中で何らかの形でD&Iに関わってきてここに至っているんですよね。その中で果たせたこと、果たせなかったこと、いろんな思いを抱えている。一人で、一つの企業では成し遂げないことであっても、横断的に、いろんなバックグラウンドを持つ人たちが一緒にやることで何か出来るんじゃないか、というのもこのチームが走り出した背景にあるなと思います。

~ジェンダーというダイバーシティーついて~

廣崎:D&I、ダイバーシティーにはいろんな軸がありますよね。性別、国籍、宗教、ライフスタイル、障害の有無など。性別といってもLGBTだったり、本当にいろんな観点があると思うんですけど。

私の個人的なダイバーシティーの始まりってどこだったかなと思うと、社会人になった時の最初の新入社員研修だったんですね。そこで一つケーススタディをやったんですが、それは、このケーススタディの中で不自然だと思うことに対して、みんながちゃんと気づいたり声を挙げることが大切ですよ、という内容でした。

その中で、ある一問のケーススタディについて、出題者が意図したことに対して誰も答えられなかったんですね。それは何かというと、「マネージャーは彼である」という表現に対してで。それに対して、なんで上司は「彼」じゃないといけないのか?ということに「違和感」を覚える、覚えなきゃいけない年代として、あなたたちは新卒として入社したんですよ、と言われました。今から30年以上前ですけれど、そういう教育を受けた。

自分の中の原点を考えると、自分の中のダイバーシティーの始まりって、そこだったんだな、と。それと、新卒で入社してすぐの上司が外国人で、日本語を話せなかった、ということ。この2つが私の原点なんですが、皆さんはいかがですか。

尾関:2年ほど前に、ある大学で女子大生にキャリアの話をする機会があったんですね。そこで、皆さんのお母さんたちの世代が大学4年生だった時は、男女で初任給が違っていた時代があったんですよ、という話をしたら、学生たちはとてもびっくりしていたんですね。それでふと思ったのは、1986年ですね、男女雇用機会均等法という法律ができて、そこからいろんなことが、ようやく変わり始めたのかなということを思い出しました。日本のD&Iの大きなマイルストーンの一つが男女雇用機会均等法だったのかな、と。

永田:それ、ありますね。私は雇用均等法の時に就活をしていたので。最初は男女共同参画、男女平等みたいなところからでしたよね。それを思うと、今、そこから30年経って、ダイバーシティーの意味や概念は広がっているなと思います。いろんな企業のグローバル化だったりジェネレーションの話だったり、コロナ禍における働き方やライフスタイルのことなど。でも実態は、というと、男女平等に関しても、良くはなっているけれど、欧米と比べちゃうとまだまだだよね、という感じもあるかな。

田中:私は雇用均等法の前に会社員になったので、本当に、今お話にあったような感じで。大学では、あまり男女関係なく勉学に勤しんでいましたが、社会に出ることをきっかけに、女性は自宅通勤でないといけないとか、浪人していてはいけないとか、本当にそういう時代だったので、そこへ来て本当にハードルを感じた、という。原体験というと、まずはそんなところでしたね。

その頃から比べると、今は働く女性は当たり前になって、ダイバーシティーという言葉を知らない人もいない。ただ、諸外国から比べると日本は遅れているというのは、並々ならぬ歴史的な根が深い問題があるんだろうなと感じているところです。

長浜:私は入社後、企画部のようなところで多国籍な人たちと働いていて、その時は、元々多様な組織だったので、まあ、とても働きやすかったんですね。ですので、その時はそんなに(男女差なども)感じていなかったんですが、その後、事業部の仕事に移って、日本のマーケットでの売買を行っている部署での仕事を始めた時に、ああ、これがいわゆる男女差というか、男性的な働き方をする日本の企業の現場なんだな、ということが初めてわかった。

それを変えようとする時に、ハードルはすごく高かったし、未だに変えられていないんですけれど。本当は変わらないといけないんだけれど、変わらなくても良い、変われない理由というのも、ごまんとあるという…。

廣崎:ちょっと聞いてもいいですか。その時、何があったんですか?どんなハードルを感じたんですか?

長浜:結局、男働きで成功した上で成り立っていて、収益が上がっているというところだと、「変わる必要性」というのを、彼らは感じられないですよね。売上をあげることがミッションとなっている組織では、本当に明日の売上が上がるためのダイバーシティーだったら大歓迎だけど、それが見えないなら、そんなものは必要ない、と。

そこのところを打ち破るのは本当に大変だなと思います。短期的なプロフィットと長期的なメリットというのは、ダイバーシティーに限らず、企業課題としては、そこのせめぎ合いっていうのがあるのかなと思いますけれど。

小串:私は、社会人になったのが均等法よりずいぶん昔なんですが、私が電話に出ると、「誰かいませんか?」と言われたようなことがあって。私が出ているのに、私がいるのに、というような、本当にそういう時代。(笑)新聞社でスタートしたんですけど、でも、それが男女の差なのかどうかもよくわからなくて、不思議な経験をしたというのが、社会人になったばかりの頃だったんですね。

その後、長くいろんな会社で働いてきて、さっきおっしゃっていた「男働き」に、自分自身もなってきたなと感じることがあったんですね。それは、ダイバーシティーといっても、マジョリティとマイノリティがあったら、やっぱりマジョリティの支配的な価値に、自分が知らないうちに取り込まれているというところもある。そういう意味では、本当に多様性がどんな結果を導くか、ということをじっくり考えずに働いていた時期があったんです。

今は、ダイバーシティーを考えるときに、二項対立しているわけではないので、両方がうまくいくことがいいんですけれど、それを阻んでいる意識は何なのか、そこが重要だな、と思います。制度がよくなっても、意識の部分が変わっていかないと…というのをすごく感じるところがありますね。

~男性社会での女性の働き方~

廣崎:今までの皆さんのお話では、働き方に対して同質性が求められた時代だった、というふうに聞こえたのですが。皆さんはそれを乗り越えたのか、あるいは、そちらに寄せたのかわかりませんが、皆さん、それぞれの会社の中で役員まで上ったというのは、どういう体験であり、どうやってそこにいったんですか?

田中:私の場合は、エンジニアの女性の先輩はいたんですけど、文系としては初めて、担当の仕事を渡していただいたケースだったんですね。世の中や会社として、女性を活躍させなきゃいけないというのはあるけれど、なかなかどうやったらいいかわからない。その中で女性活躍のテストケース、ロールモデルになってね、というようなことだったので、お手本はなかったのですが、歩き続けることで道が拓けるのかなと思ってやってきました。

あとは、私自身、振り返ると、さっきの男働きじゃないですけど、独身時代はけっこうがむしゃらにやっていたなあと思います。ただ子供が生まれた時に、将来はやっぱり子どもを産んでからも普通に続けられる会社にならなきゃダメだよね、ということで、経験した人が声を挙げることで次の人が(続きやすいように)と、そういう役割というか。個人というよりは、会社として、男性と同じでなくていいが仕事は頑張って欲しい、と。まあ、実験台なので、試しに歩いてみればいいという感じでした。

ですので、何か特別に目標を持って歩いたというわけではないんですが、もし私が早く辞めたら、「やっぱり女は」と言われてしまう。そう言われて後輩たちが苦しまないように、そうそう簡単に辞めちゃいけないよな、と歩いてきたというのが、振り返って思うところですね。環境にも恵まれて、理解のある上司や同僚がいたということも、もちろんあるのですが。

皆さんは、何か、こういうビジョンを描いて歩いてきたとかってありましたか?

永田:そうですねえ、私は「男性に負けたくない」とか、そういうふうな感じにはあまり意識していなかったんだけど、仕事に対しては相当向き合っていたかな、という気がしますね。

あとは、いろんなチャンスがあったら、とにかくつかみに行くということ。いろんな制度や内部の試験など、チャンスがあるものに対しては、結果はどうであれ、まずはトライをしないと結果はつかめないよね、と思っていました。だから、まずはトライをして、つかんで。そういう意味で、仕事がおもしろくて、一つ一つ昇って来たかな。昇ったというよりは、感覚的には前に進んでいた、という感じかな。

長浜:そうそう、仕事が面白かったんだよね、まずは単純に。次はどこのポジションを目指すぞ!という形で頑張ったという記憶はあまりなくて、与えられた仕事やその時々のことを楽しんで歩いていたら、だんだん見えている景色が変わってきた。その時、その時の景色を楽しんでいたら、今の景色が見えていて、という感じ。だから、特に目的意識などはなくて…という感じですね。

永田:そうね、どんどん関わる人が増えてくると、またそれは楽しい。大変さもセットなんだけど(笑)。決してラクだとは言わないけれど、でも、今思えばすごく楽しいというか、喜び倍増みたいな。大変さも倍増するけど喜びも倍増する、そういう感じかな。

小串:私も同じですね。仕事がやっぱり好きで、楽しかったので、それを続けていたら…というところですね。だから特にこのポジションになろうとかいうことは、あまり思ったことがないんですけど。

ただ、さっき永田さんがおっしゃったように、来た機会とかそういったものに対しては、ノーは言わずに、やってみよう!と、そこはすごくあったかもしれないですね。ちょっと無理かもと思いながらでも、やってみると、また次の道が拓ける。いろんな人と出会ってサポートをしてくれたり、先輩との出会いだったり、そういう人との出会いや機会もありがたかった。

尾関:私の場合は、法務という、わりと専門性の高い仕事に舵を切ったのが、20代の中頃だったんです。(会社の)法務は、まだ歴史の浅い分野なので、専門家がもともと少ないんですよね。なので、あまり性別を意識したことって、振り返ってもあまりなくて。周りも外資系の場合は、上司が女性だった会社もありますし、ほとんど性別を意識せずに仕事をしてこられたかなと思います。専門性を磨いて、「このことは法務の尾関に相談しよう」と思ってもらえるように、ということにすごく喜びを感じていました。一人でやるのではなくて、チームで仕事をするのが楽しいなとも思ったり。

~女性活躍の障壁、乗り越え方~

廣崎:D&Iってすごく大きなテーマではあるんですが、たまたま今日は女性が多いので、女性の活躍についてもう少し聞いてみたいな、と思います。
皆さん、社会的・組織的に、それなりの役割を取ってこられたわけじゃないですか。特に社会的な法律や会社内の制度なども整備されていない時代から、いろいろなチャレンジをされてきたと思うんですが、そういう中でチャレンジや障壁を感じたときはなかったのでしょうか?あったとしたら、どうやってそれを乗り越えてきたのでしょうか?

田中:私の場合は、やっぱり一番大変だったのは、子育てをしながら…という時でした。仕事は好きだし、100%仕事に時間を使いたいのが、思うようにならない。よく熱は出すし、核家族で共働きだと、夫も機嫌が悪くなることも多いし。そんなことで悪戦苦闘していましたね。

でも、それは会社に強いられて、というよりは、自分の気持ちが、家事もあれもこれも完璧にやろう、と、なんかこう自分で自分を縛っていたのです。だから、一番は自分が障害というか、自分がどう対処するかというところでした。
全て完璧にやらない、もっと人に甘えながらいろんな事をやる、感謝しながらやるとか、もうちょっと肩の力を抜いて、働くのは長丁場なんだから、長距離を走るつもりでやらなきゃいけないな、とか。そういうことを先輩からいろいろ聞いて、その中で折り合いをつけてきたところがあるかと思います。

あとは、やっぱり会社ですので、私が早く帰ったり休んだりすると、誰かがカバーしなくてはいけないので、そのことへの感謝であったり、自分がやれること、自分が時間を作ってできることは、一所懸命やるとか。お互いさまみたいなところで、一方的に甘えるのではなく。それと、自分の状況を伝えること。最初はすごく抵抗もあったんですけど、逆にそういったことに理解を求めるために話をする。今思えば、そんなことを、その当時はやってきたかなあという感じです。

廣崎:聴いていて、「一番の障壁は自分の意識だった」というのがすごく印象的だなと思ったんですが。他に、ご自身の意識と戦ったとか、制度の壁などで思い当たるところは、どなたかありますか?

長浜:自分一人でやっていて無理だなと思ったら、一人で抱え込まなくていいんじゃない、ということは思いました。自分がこれをやるんだ、ということに固執しちゃうと、会社とか大きな組織としてやらなくてはいけない、という意識が消えちゃう。これは男女の障壁という話とは違うと思うんですけど。

たとえば、自分が話をしていて、相手に「この小娘」と思われてしまって、これ以上一所懸命やってもこの話は進まないなと思ったら、男性の同僚や上司と何か別のアプローチを考えて、彼らにやってもらう、そして自分は引く、というのも、それはそれで必要なアプローチだと思うんです。だから、あまり「女だけど頑張る」というところに固執してしまうと、まとまるものもまとまらなくなる、というのはよく考えたことがあります。

永田:私はやっぱり父の在宅介護が長かったので、ここは、特に最後の方はしんどかったなあと思います。さっき、まさこさんもおっしゃっていたけど、言わずに頑張るというのは、決して美徳ではないなって。

やっぱり、ライフも自分だし、ワークも自分だし。上司や同僚、部下にちゃんと話をしたところから、動き始める。気持ちも楽になるし、1人で空回りしていただけなんだなと気づくとかね。やっぱり話すことによって状況が変わるということもある。それは、まさこさんの言う「意識の変化」かもしれないんだけど。組織も変わる、みたいな感じがありましたね。

長浜:そこは、男性の方が言いづらいでしょうね、きっと。女性だと介護や育児って意外と話せるけど、男性は言えずに歯をくいしばっているかもしれませんね。

廣崎:実は、私は次男が生まれる時に3週間くらいの育休を取ったんです。今から20年くらい前なので、そういう制度はなかったんですけど。当時思っていたことは、自分が休まないと家庭が回らないな、と。介護と違って、育児って、いつ始まるか想像ができるじゃないですか。だから、その当時は課長だったんですけど、部下にいろいろ頼んで、このタイミングで休むから、あなたにはこの仕事をやって欲しい、あの仕事をやって欲しいと、あらかじめみんな仕事を振って。上司にももちろん相談して。結局、そうやって休んでみたら、自分が休んだら世の中回らないんじゃないかとか、会社が潰れちゃうんじゃないかと思っていたんだけど、何もなかったんですね、見事に(笑)。

実は、それが、自分の中での意識の変化として、あ、管理職、マネージャーとして、信頼できる人に仕事を任せていいんだ、と。マネージャーとして、その状態を創ることが大事なことなのかな、ということを、意識の進化として、学んだタイミングだったかなあ、と思います。

だから、いろんな制度が整ってくることは、実は男性にとってもメリットがある話なんですね。男性がもっと(そういう制度を)使ったら、逆に女性も、もっといろんなことをやりやすくなるのかなと、ちょっと思いました。

永田:確かに。それはそうだと思う。

小串:やっぱり、組織はその人だけでなく、皆で目標に向かっているので、人にちゃんと今の状況を話すことは重要ですね。

私は、母が遠方にいて、母が入院した際に、しばらく病院に寝泊まりしていたことがあるんですが、モバイルで仕事をしながら、他の人にもサポートをしてもらい、時には飛行機で東京に戻ってきたりして、仕事を進めたんですね。そういうことに皆が協力してくれて、その代わり、こちらも感謝をするのと同時に、できるだけ迷惑をかけないように自分のできることをやろう、と思いました。そういう意味で、そこは、組織としてやっていけるということは、すごくありがたかったですね。

~管理職にはなりたくない?~

廣崎:私たちの世代と比べた時に、いろんな企業の中で今はいろんな制度が整ってきていますよね。でも、女性に限らずかもしれませんが、管理職にはなりたくないといった話も聞いたりするじゃないないですか。それって、D&Iを考えた時に、何が起きているんでしょうね?

尾関:おそらく、男性も、以前から、別に自分は偉くなりたくないと思っている人はいたはずなんですけど(笑)、たぶん口に出しては言いづらかったのではないかと思います。

最近はそうではなくなってきているのではないかと思っていて、たぶん、キャリアの多様化、ですね。1つの会社でずっと上に行くだけがキャリアではない、回り道O.K.ということをおっしゃっている外資の社長さんもいらっしゃいますし、そのへんの若い人の意識の進化もあると思います。

実際に、私の身近にも、30代の男性で最近お子さんも生まれて、なおのことキャリアを見直したい、偉くなりたくない、とはっきり言う男性も出てきています。コロナ禍がまた、後押ししているのかもしれないんですけど、時代の節目なのかなという気はしています。

長浜:上職へのイメージとして、どういうイメージを持っているかは人それぞれだと思うんだけど、なんかこう、上の人は全てを抱え込んでいるようなイメージがあるのかな。全部責任を負わされて、抱え込んでいる上司とか。あとは、それをしたくなかったら、ただただ下にぶん投げる上司とか(笑)。

なんか、そういう、そこまで重い荷物は背負いたくないという気持ちが若い人にはあるんじゃないかなと思います。でも、そうだとしたら、上の人が、人と共に仕事をするということができていないのかなあ、という感じもしますね。どうなんだろう、何かこう素敵に見えないんだよね、上の仕事っていうのが。

小串:上司を見ていて、ああいう風には働きたくない、という感じですよね。ダイバーシティーといったときに、そういう価値観を持った人も受け入れて組織運営をしていかなくてはいけないですし、それはある意味、(D&Iとして)良いことなんですけど、会社側からすると難しい時代になったなというのは、すごく思います。

永田:管理職になると何かを犠牲にしないといけないというような考え方があるのかな。もっとあれもこれもとがんばっていいんじゃないかなあ。(管理職に)なってから考えてもいいんだし、嫌だったら、やめればいいんだしね。チャンスがあるのに乗らないのはもったいない。運試しや力試しも含めて、チャレンジすることだけでも学びや見えるものもあるのかなと思います。本当にやりたくないとか、それよりも大事なことがあるとわかっているなら、それでもいいんだけど、なんとなく風潮に流されて、管理職になることがカッコよくはなさそうだ、みたいな感じで流れに乗っているなら考え直してもよいのでは、と思いますけどね。何も犠牲にはならないし。犠牲になるかもっていうのは自分の思い込みかもって。

長浜:でも、そういう思い込みをさせてしまうような管理職が世の中に多いということだよね。

田中:誰かさっきおっしゃったけど、(上に行くと)本当に景色が変わってこの仕事が楽しい、上というよりは前に進み、世界が広がり、仕事の醍醐味を体験して、貢献することに生きがいやワクワクを感じるというのが、男女問わずに伝えられない、見えにくくなっているのかもしれないですよね。

会社で、女性の管理職を増やそうといっても、あんな風に働きたくない、あんな風にはなりたくない、というのは必ず出てきますしね。周りが全部男性で、ほとんどライフの方を気にせずやっている人が多いと、やっぱり女性の方も尻込みしちゃうところがあります。こういうところが楽しいよ、というのを私たちがもっと伝えられるようにならなくてはいけないのかなって思いましたね。

~部下に期待を伝える~

廣崎:多様性をサポートしたいという願いを持っている我々なので、キャリアを考えるときに、上に行く選択肢もあれば、横に行くとかいろんなキャリアがある。その多様性は、一人ひとり、いろんなありたい姿が実現すればいいなと思っています。
一方で、たとえば、部下に対して、男女限らず、この人に頑張って上がってほしいなと思う人に、面談やコーチングをする経験も、皆さんあったんじゃないかなと思います。そういう中で「私は無理です、私なんて…」という人の、でもその奥にある声を、どうやって皆さんは拾っていたのかなあ、というところも興味がありますね。皆さん、いかがですか?

尾関:私の場合、「私、無理です」と尻込みした人はいないんですね。いきなりすごいストレッチを提案したわけではないので、徐々に準備をしつつ、「どう?」と聞いたら、「やってみたいです」と。尻込みしなさそうな人にしか声を掛けていなかったのかもしれないですけど。

永田:私は、選抜試験を受けるか受けないかを迷っている部下とは、けっこう話しましたね。その時は、本当に「私なんて…」とか「そんなすごい試験なんて受けられません」とか言われましたけど。延々と、そういったネガティブな感情をひたすら聴き続けた。「で?それで?」とずっと聴き続けて、どんどん深く掘っていくような感じで。それで、「で、今どんな気持ち?」と訊いたら、けっこうスッキリしていた。「スッキリしたのね。じゃあ今はどう思う?」と。そんな感じかな。受かるかどうかわからないから、失敗してもいいからまず受けてみたら、と言いました。
それで受けてみたら合格して、合格後に研修に行き、それが良い研修だったらしく、「受けて良かったです!」みたいなことが、後で返ってきたりするんですよ。そんなもんなんですよね。

なんか失敗したくないみたいな気持ちもあるのかな、と思いましたね。落ちたらどうしようとかね。

廣崎:失敗したくないとか、傷つきたくないとか。

長浜:恥ずかしいとかね。

小串:でも、そうやって道を拓いてもらえる上司に面談してもらって、いろいろ話を聴いてもらえた人は、すごく幸せですよね。視界が広がったということですものね。意外と本心を聴き切れていないところもあるかもしれないので。

私の場合は、反対に「なんで私じゃダメなんですか?」と聞かれたこともけっこうあるんです。男女かかわらず、チャレンジしていく、という人が身の回りに多かったのですね。逆に、「なんでダメだったか」に答えることに長い時間をかけました。

永田:それって、男性とか女性とかの区別ではないですよね。自分の過大評価とか、過小評価とか。人それぞれ傾向がありますよね。

田中:みんな違うんですよね。私はどちらかというと、よくインポスター症候群とか言いますけど、女性の方が自分を過小評価する人が多いという実感があります。私自身もどちらかというとそうなので、そういう方には、コーチングの言葉でいう「承認」「認知」を一所懸命伝えて、自信をつけてもらうとかね。そういうことで、チャレンジした方がいいかな、期待されているんだな、ということをいかに伝えるかというのが大事かなと思いますね。

小串:期待を伝えるのはすごく大事ですよね。自分の経験でも、期待を明確に伝えてもらうと、これからの自分の行動を考えられます。意外にそこが曖昧にされていたりしますね。

廣崎:確かにありますね。コーチングをしていても、エグゼクティブの方に、「あなたの後任についてはどういうふうに考えているんですか?」と訊くと、「この二人を考えていて」とは返ってくるんです。でも、「その二人とはどういうコミュニケーションを取っているんですか?」と言うと、「二人には伝えていないです」と。そういうようなことをよく聞くんですよね。それは男性であっても女性であっても、その人への期待を伝えるってすごく大切なことですね。

永田:私の経験からすると、女性の部下は、期待を超えていくということを自分に課す人が多いかな。期待にミートするだけではダメで、期待を超えていくという。自分ですごくハードルを上げていく部下が多かったんですけど、そうすると、ものすごく成長するんですよね。すごく伸びるなという感じを、実感としては持っています。

~多様性を求める意味とは?~

廣崎:少し変な質問をしてもいいですか。私たちって、多様性をもっと推進したいと思っている人たちの集まりじゃないですか。でも、多様性のない世界や組織って、もしかしたら「右向け右」が通用して、楽かもしれない。それでも、我々が今、多様性を求める意味って何なのでしょうね?

永田:「右向け右」は確かに効率的ではあると思いますよね。効率的だとは思うけれど、でも、ある意味弱い。

尾関:軍隊みたいですよね。

小串:コマンド&コントロールでやることの方が、効率的で速い結果を得られるということはありますよね。でも今は抱える問題が複雑になっているので、なかなか同質の人たちだけでは解決出来ないことがある。
ただ、新しいことを生み出すのに異質が必要だといっても、それにも段階があります。常に異質だけが良いかというとそうでもないので、本当にそこはビジネスの段階や状況をよく見ないと、異質を活かすことができないという気がします。

田中:企業の中で、私もダイバーシティー推進担当をしていて、ジェンダーの問題だけではなく、本質に迫って、みんなに腹落ちしてやってもらいたいと思ったときに、「なぜダイバーシティーが必要なのか?」という問いに答えるのがとても難しい。でも、その問いにちゃんと答えないと、形だけになってしまうという難しさはすごく感じています。

皆さんが言ったように「効率性」というのがあって、どちらかというと、多様な人がいるとハイリスクハイリターンみたいなところがあるじゃないですか。でも、それを超えても、今、変わらなきゃいけないんだとか、新しい知恵を必要としているんだとか、何かそういう、変わらなきゃいけないという危機感や、それを自分ごとにする、というようなことが、その企業や職場によっていろいろ違う。この職場には、どこが一番響くんだろうか、ということを考えながら、いつもやっています。

私個人のことで言うと、私は自分と同じような人ばかりだとつまらないなと思うタイプなんですね。違う人がいるからおもしろい、という単純な思いなのですが。仕事をすると「めんどくさいなあ、この人」と思うこともあるんだけれど、でも、何か楽しいし、おもしろい、気づきがある。自分にもバイアスや思い込みがあるし、今までの前提を疑うような、ビックリするような人がいたり、そういう方がおもしろいなって、単純に思います。

長浜:私もまったく同感です。それは絶対におもしろい。おもしろい職場にするにはいろんな人がいた方がいいって私も思っています。

ただ、コマンド&コントロールでやった方が効率的で、絶対にそれをしなきゃいけないという場所もあるわけだから、さっき小串さんもおっしゃったように、そういう場所まで無理矢理に、全ての場所で、ダイバーシティーをどんどん同じペースで進めていくというのは、これはまた均一性の裏返しでしかないわけです。
そうじゃなくて、コマンド&コントロールでやるところは、それはそれでやって、そこでのダイバーシティーは別の視点で考える。逆に、職場環境などさまざまな点において、もっと多様な視点が必要だというところには、積極的にいろんな人材配置を進めていく。ダイバーシティーの施策も、多様にやっていかないといけないと思いますね。

永田:それはすごく大事なところだと思う。やっぱり、D&Iって変化し続けているってことだと思うんだよね。「D&Iをやります」って、宣言としてはいいんだけど、常にon goingだと思うし、もしかしたら前に進んでまた戻ったりもしているかもしれないんだけど、動いているという感じ。それと、一緒に働く人もずっと変化し続けている、という前提にすることが大事なのかなあ。型にはめるという話ではなくて、その人自身を見ていくっていうことが、これからはもっともっと大事になると思います。

小串:一人一人を見るのと同じで、D&I for 〇〇という感じで、何のためにこのD&Iなのかというところは、すごく必要かな。何でもかんでもというわけではなくて。さっきもおっしゃっていたけど、結局、どこでも同じように「違うこと」を受け入れてやっていくと、結果、また「同じ」、「均一」になってしまうところがあるので、そこはすごく重要ですよね。

尾関:1つの集団にも、コマンド&コントロールで動いている瞬間も実はあるんだと思うんですよね。この集団は常にD&I、というのは、多分ない。いろんなフェーズがある。
ただ、ずっとコマンド&コントロールの集団というのは、失敗した時のダメージが非常に大きいんじゃないかなと思います。猪突猛進で突っ込んでいったら、行き先、方向を間違えた場合に、是正が効かなくて、衝突して、ボーンといってしまう。そういうリスクを避けるためにも、やはり柔軟性というのが重要で、どっちにどう行くかというのを考える段階での多様性というのが必要なんじゃないかな、という気がします。

永田:すでに道が見えていて、これだ!というのがわかっているなら、猪突猛進でどんどん行けばいいかもしれないんだけど、今みたいに不確実性の時代で、グローバルに世の中で何が起きているか、というようなときには、いろんな人がいた方がリスクはミニマイズできるし、一人ひとりがすごく成長するなと思いますね。

長浜:もし、とんでもない弾が変な方向から飛んできて、それに当たって痛い思いをするということが起きたとしても、ああ、そういうこともあるんだなという学びがあるし、そこから学べるものね。

廣崎:それをおもしろいと思えるか、というのは、けっこう大切なポイントだなと思いますね。

小串:みなさん先ほどから「違う」ことを通して、新しい気づきや学びを得られるのがすごくおもしろい、とおっしゃっていますが、本当にそこがすごく重要ですよね。違うことに感謝できるか、とか。一方で、違うアイディアをもらって、そういうふうに思えない人も多いという現実も、とても重要なところですよね。

廣崎:そうですよね。今まではこのやり方でやれば良かったのに、なんで上手くいかないんだ?とイライラしたり。でも、そういう経験をすることによって自分の癖とか認知の仕方の理解が進みますよね、違うことを体験することによって。

小串:D&Iって自分の内面を考える機会になる。自分の内側の意識に気づくきっかけにもなるように思います。

永田:それ、とっても大事だと思う。自分の中に気がつくと、外の人も受け入れられる。外の人との違いに気づいて、違うことがおもしろいと思える。仕事だけじゃなくて、人も違うところがおもしろいみたいな。そういうふうに思えると、寛容度が増すっていうのかな。

小串:もう何でもいらっしゃい、みたいにね。(笑)

田中:ほんと、そうですよね。

永田:ポジションが上がってくると、動かす人数や規模が多くなるので、そうするといろんな人がくるじゃないですか。そういう人たちに一緒にいろいろやってもらったりするのを考えるのが、またこれがおもしろいんですよね。

長浜:うん、うん。

~なぜD&Iが経営課題にならないのか?~

廣崎:ここにいる人たちは、皆さん、企業の中で役員経験がおありですが、周りをみると、なかなかD&Iを経営課題として捉えない経営者も多い。経営のアジェンダではなくて、人事部長に「それやっておいて」と投げる、みたいな話もけっこうあるじゃないですか。
なぜD&Iが経営課題にならないのでしょうね、何が起きているんでしょうか?

長浜:まあ、今が心地よいんじゃないですか。(笑)

尾関:D&Iは、あればなお良いもの、Nice to haveだけど必須ではない、と思っているんですよね。それがなぜなのかってことですけれど。

田中:どんな効果があるか、どんな変化があるか、どんな良いことがあるかを想像できないのかもしれません。実績のないことや実績のない人に何かを頼むというリスクは取れないとか、勇気を出さなきゃいけないところで尻込みしちゃうというのは、そういうビジョンが見えないから、ということでしょうか。あとは、本当に困っていない、危機感がない、今が居心地がいい、ということもあるかもしれないなと思います。

日本の場合は、諸外国に比べて、高度成長期の性別役割分業というのが経済システム全てを支えて、合理的に経済的な成功をする基盤になったという成功体験が強固なので、より難しいのかなと思います。
今、経営者でD&Iの真価を発信している方って、やはり国際的な経験がある人が多いですよね。いろんな諸外国のことを見知っていて、実際に働く仲間が多様で、こんなふうだったとわかっている方は、信念からして、その価値をわかっていらっしゃるんですよね。
食わず嫌いじゃなく、ちょっと見てみませんか、とそういう場に引きずり出すというか。あれ良かったな、楽しいな、と思えないと、最初の一歩が踏み出せないのかもしれないですね。ジェンダーの問題は、われわれ女性が言うと、「また言ってるよ」となっちゃうんですけど、廣崎さんみたいに男性から言ってもらえると聞いてもらえるかもしれないなと思いました。

廣崎:背筋が伸びました。(笑)

永田:たぶん、最大公約数的な正解がないんですよね。何割いったら絶対上手くいくとか。たとえば、いろんな投資だったら、経費の何パーセントを〇〇につぎ込むかとか、ベンチマーキング的なものが、いろいろな蓄積の中で企業の中にあるんですよね。
でもD&Iについては、他の企業を見渡してみても、参考にはなるけど、やってみようかなという時に本当でそれで良いのか?と。必ず問いがついて回っちゃうような気がするんです。

小串:頭では理解できても腹落ちしないとか、不安だとか。自分自身もそうなんですけど、違うものに対して恐れを抱くことってやっぱり人間だからあるんですよね。あるいは既得権みたいなものが組織にあると、やっぱり停滞してしまうと思います。じゃあどうやってそれを拭い去るかっていうのは、すごく問題だと思うんですけど。
(D&Iによって)誰かに脅かされると心のどこかで思っている人がいるかもしれない。そういう意識をぬぐうためには、仕組みを含めて、いろんなことを掛け合わせないと、「誰もあなたのことを脅かすことはないですよ」という安心な精神状態を作れない。それがないと、なかなか(D&Iは)深まらないなと思います。

永田:今、お話を聞いていて思ったのは、組織には、いろんな制度がありますね。制度って枠をはめるじゃないですか。なので、一律で管理するための仕組みは大事なんだけれど、それがD&Iと矛盾する、コンフリクトする。これを推進するためには制度を変えなきゃいけないとか、こんなバラバラのことをやるための制度や仕組みなんて作れない、とか。何かそういう発想になっちゃうのかな、とふと思いました。

でも、D&Iを推進するなら、その裏返しで、個々人がもっと自律するというか、コミットメントをちゃんとしないといけない。自分も守らなきゃいけないし、会社とちゃんと対峙しなきゃいけない。逆に言えば、今はいろんな仕組みで守られている部分もたくさんあるんだけれど、あくまで対等にやれるだけのことを持たないと、なかなか良い関係にはならないかも、と思ったりします。

小串:ダイバーシティーが権利主義みたいになっちゃうとまずいですよね。

長浜:ひたすらふかふかの温かいお布団を用意して、ここにおいで、というだけだとね…。そういう心地よさとは違うよね。

廣崎:選択肢が増えれば増えるほど、たとえばキャリアのモデルでもジャングルジム型とかっていいますけど、それが機能するためには、自分が責任を持って選択するということが伴う。そういう話ですよね。

これは企業にいた時の自分の経験ですが、CEOが変わったタイミングで経営課題が切り替わったなと思った瞬間があります。CEOが急にサバイバルモードになったんですね。優秀な人材を取ろうと思ったときに、今の時代に、ダイバーシティーやインクルージョンというメッセージをきちっと出せないような会社だと、今どきの若い優秀な人たちは来てくれない。そうしない限り、人材はみんなGAFAに流れてしまって、うちの会社には来てくれない、昔はすごい会社だったのに、みたいな。そういう焦燥感が強く感じられました。それによってすごく会社の中が変わったなあ、と思いましたね。

尾関:それって、まさに私も言おうかなと思っていたことで、D&Iに真剣に取り組んでいない会社っていうのは、やがて選ばれなくなっていくんだと思うんです。学生や求職者からも選ばれなくなるでしょうし、投資家は既に厳しい目を向け始めているわけですね、この数年。サプライヤーについても、「こういうD&Iを掲げていない会社は、サプライヤーとしては選びません」とサプライヤー基準みたいなものを設けている会社も既にあるかもしれないですね。そういうのがひたひたと、既に現実になっているんじゃないかと思うので、D&Iを経営課題だと思っていない経営者というのは、そのへんをまだわかっておられないのではないかな。

永田:もうESGも当たり前になってきたし、SDGsの中にも男女格差是正も含まれている。SDGsを経営課題としてやっていますと語る企業もどんどん増えてきているし。でも男女格差というところを意外とスルーしているところも多かったりするんだよね。

~D&Iが進んだ先にはどんな未来が拓けるのか?~

廣崎:D&Iの中で男女格差の問題って、一丁目一番地とかリトマス試験紙みたいに言われることもありますけど、実はこの先にまだずっと(D&Iの)道は続いているんですよね。これがもっと続いていった先ってどんな未来が拓けるんですかね?どんな未来が待っているんでしょう?

尾関:願わくば、性別や国籍など属性と全く関係なく、本当の能力や素質、意欲によってセレクションを経て、その結果、選ばれた人たちを見てみたら、いろんな属性の人たちがそろっていましたね、ということが当たり前になる。それが将来あって欲しい姿の1つかな。

田中:私は、ダイバーシティーは、最初、男女問題として女性の人材を活用出来ていないのが日本の損失だなというのが原体験だったんです。でもダイバーシティーってそれだけではなくて、組織の中で、特にインクルージョン、みんな違って当たり前というインクルージョンが本質なんだなというのが、ダイバーシティーの担当になって、だんだんじわじわとわかってきた。それによって、自分自身も変わったなと思うんですね。

最初は、女性という資源の無駄使いをなくそう、みたいに思っていたのですが、今は本当に、D&Iによって、活力や新しいアイディア・発想が生まれたり、さまざまな文化の違いを受け容れることで企業が生き残ることができる。また、いろんな生き方・働き方の選択肢が増えて、同調圧力がなく、生きづらさを感じずに、それぞれが自分の生きたい生き方ができるようになるとすごくいいなと思います。
そうなると、みんなそれぞれ異なる幸せを尊重し合って、国どうしがいがみあったりもせず、もっと平和になるんじゃないかなというふうにも思っています。

小串:私は、個人の努力と責任で幸せを得られる社会というイメージがあるんです。こんな時代だからこそ、Co-ActiveとかCo-Create、共創、共に創ったり、共生したり、という「共に」というのが、いろんな違いを超えて、世界の共通価値になるという時代がくること。少しユートピックなんですけど、D&Iの行き着く世界ってそういう世界かなと思います。

長浜:そうですね。本当に世界中の人たちが一人ひとり、自分が持っているものを活かせる、活かして仕事ができるということができれば、会社というシステムそのものも変わってくるのかなと思います。いろいろな社会課題とか、その時に世の中に必要な物を具現化するということであれば、それはもしかしたら1つの会社の中だけでやらなくてもいいかもしれない。他の組織にそれに必要な人、強い人がいれば、その人と協働してやればいいだろうし。だから、本当にダイバーシティーが進んだら、社会行動そのものが劇的に変わるんだろうなと思っていて、それはとっても素敵だなと。ちょっと具体性がないんですけど、そんなイメージがあります。

永田:私はね、組織のD&Iの一丁目一番地というのもあるんだけど、その根本にある一人ひとりのダイバーシティーにもっともっと目を向けるという中で、小串さんがおっしゃった、個人の意思と努力で自分の人生を選択していくんだということが見えてくると、いろんな企業や国を越えて、もっとつながっていけるんじゃないかなとすごく思いました。そういう世界を作りたいですね。

廣崎:私は、たぶん一番フワっとしたことを言いますけど、世の中がカラフルになったらいいなと思っています。自分の色を一切の不安なく出せる社会であり、会社や組織になったら、本当に素晴らしいなと。自分は本当はこういう色なんです、というのを隠して、品川の港南口の改札を人々が出ていくのではなくて、人それぞれが持っている願いが、色が出て、そういう人たちがたくさん歩いている、そんな社会になったら、D&Iがもっともっと進んで、真価が発揮されると素晴らしいなあと。そのために伴想人の皆さんと一緒に、何か一つでも二つでも社会や組織のお手伝いが出来たらいいなと思っています。

廣崎:それでは、今日の対話はここまでにしたいと思います。意識の進化プロジェクトでは、今後も「意識の進化×〇〇」シリーズをお届けする予定です。今まさに問われている人の意識の在り方やそのアップデートについて、さまざまな角度から探求し、対話をお届けしたいと思います。よろしければぜひ、ウエイクアップのメールマガジンやFacebookページなどで最新情報もご確認ください。

今日はありがとうございました!

小串・尾関・田中・永田・長浜:ありがとうございました!

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