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終わったコンテンツかも

某社のものもそうだが、車のCMの多くは、人工物のない海岸線に沿う道とか、雄大な丘陵地帯のスカイラインを行く道などでロケされている。

そして車の運転がいかに楽しいか、人生の最上の歓びのひとつであるかのように表現される。

行き交う車もない。道路と風景を独り占めしているかのような映像が流れる。

そんなものは嘘だ。海外のスモールタウンのように、街区を抜けたらすぐにフリーウェイだというような土地柄ならともかく、わが国なら実際には地方都市であっても、郊外に出るまでには渋滞か渋滞に近いような流れの道を通らざるを得ない。

そうして郊外に出たところで、それほど雄大な風景が辺りに広がっているわけでもない。そういうところは、たぶんドライブの中で1割か2割にも満たないし、そういうところに達するまでに不快なものがたくさんある。

煽り運転をするような車に出会うかもしれないし、そこまでではなくても、脇を猛烈なスピードで追い抜いてゆくような車や、マナーの悪い車に行き当たることは少なくない。運転には快適なことよりも不快なことのほうが多いのかもしれない。

男と女が車を媒介にしてラブストーリーを紡ぐような物語も、もはや前世紀の遺物となっている。そういう良き時代もあったのだろうが、今やそういう幻想は成り立たない。

若い人が車に興味を持てなくなっていることは、健全なことなのかもしれない。車が象徴しているのは、もはや古い価値観なのだ。それは、終わったコンテンツである可能性が高い。

海外の素晴らしい道のようなところを走る機会は、ほとんど存在しない。全然ないわけではないが、そこに至るまでに多くの不快を我慢しなくてはならない。

車が幻想を支える装置であることが不可能になってきた現在では、車中泊対応車両などが売れるようになってきているように私には思える。そしてそのほうが、まともであるように見える。




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