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今、振り返る19世紀からの思想の歩み(10) 肝心なのは「自由」なのだ

 このところ取り上げざるを得ないのは、要するに「暴力革命」の問題である。今日、この日本で暴力革命を改めて論じる興味も関心もないんだけれども、これが意外にも「自由」の概念というか、その思いと切り離しがたい歴史を持ったもので、そう思うと簡単な話にはならない。

 前回、「修正主義」の権化として有名で、ある方面では汚名と言って差し支えない「ベルンシュタイン」の書いたものを「うっかり」引用してしまった。しかも、彼の主張の肝心かなめの部分ではないところだった。それで、その議論をするなら、どうしてもそれ以前の社会思想の流れを無視するわけにはいかなくなった。どうしても「自由」の問題を切り離すことができない問題だからだ。
 自由と言えば、言うまでもなく、西欧では紀元前から論じられ、特にイギリス古典主義経済学者としても有名な、J.S.ミル(1806年~1873年)の提示が重要とされる。『自由論』だが、なかなか邦訳にすっきりしないところがある(4種くらい見た)から、英語の原典を呻吟して読む羽目に陥ったのもいい思い出である。しかし、ミルを読んで終わったわけではなかった。
 例えば英国のゴドウィン(1756年~1836年)。ぼくは何の本だったか、若い頃に彼が自由を唱え、権力と暴力は正義や幸福に反すると主張していたのを知って、へぇーそんな昔に暴力否定を主張している人を知らないなんて、と思った。彼の亡くなった最初の奥さんも相当な思想家だったようだが、その娘さんがあのフランケンシュタインの生みの親と知って非常に驚いた。というのは、ロマン派詩人を代表するシェリーの奥さん、メアリー・シェリー(1797年~1851年)だったからだ。
 まぁ、こういう話を書き連ねると長くなるんで、要するにこの進取的な信念が多くの人々に影響与え、次代に及んでいたことを知っておきたいということだ。

20017年3月11日 福島 奥の細道


 歴史に名を刻んだ人物として、青年ヘーゲル派を代表するドイツのマックス・シュティルナー(1806年~1856年)、同じくドイツのヴィルヘルム・ヴァイトリング(1808〜1871)、フランスのピエール・ジョゼフ・プルードン(1809〜1865)、そしてロシアからミハイル・バクーニン(1814年~1876年)、同じくピョートル・クロポトキン(1842年~1921年)と続く彼らを忘れるわけにはいかない。
 十分というわけではないが、別に人の名をあげたことに衒(てら)いなどはない。今から言えば、産業革命がイギリスで起こり、いわば原初的な資本主義が跋扈し始めた時代、そして彼らにとっては20世紀に入ってからの資本主義や帝国主義などは考え及ばぬ、資本主義とは与えられた現実が示すものだったということだ。
 念のためだが、資本主義が芽を開いた18世紀後半にはイギリス古典経済学と呼ばれる経済学が誕生している。言うまでもなく、アダムスミス(1723年~ 1790年)を筆頭に、トマス・マルサス(1766年~1834年)、デヴィド・リカード(1772年~1823年)、J.S.ミル(1806年~1873年)などイギリスの経済学者が開発、発展させた経済学だ。

2017年3月11日 福島 大和ひじりの巨石

 経済というのは、社会の基盤である。経済学の登場は、その意味で世界を画期することになる。実際、アダム・スミス『国富論』を開いてみよう。現代人が思うような経済学ではない。社会学だし、教育論だし、政治論だし、広く文化を基礎づける「当たり前」の経済学原理だ。カール・マルクス(1818年~1883年)の『資本論』ですらそうした性格を持っている。
 思いついたんだが、米国もピューリタン禁欲主義は、罪過へのむごいやりよう(例えば絞首刑は当たり前で、よつざきの刑、火あぶり、耳を切り削いだり、舌を突きさす刑など)があったりした。それに対して、イギリス出身のロジャー・ウィリアムズ(1603年~1683年)という、ピューリタンたちからは悪魔の死者として、マサチューセッツ州を追い出された非常に勇気ある人物がいる。彼は、政教分離原則を掲げて、「自由」を求める人々を生み出す思想家らの嚆矢(こうし)となっている。例えば、ベンジャミン・フランクリン(1706年~1790年)などを輩出したのである。
 大事なのは、「自由」なのだ。そしてその概念、範囲、歴史である。 この辺りの時代を専門とする研究者や学者は、国内だけでも少なくないはずで、足りないことや、間違いなどを是非教えて欲しいと願う。

和久内明(長野芳明=グランパ・アキ)に連絡してみようと思われたら、電話は、090-9342-7562(担当:ながの)、メールhias@tokyo-hias.com です。ご連絡ください。 

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