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幻想を実践するためのアイデアトレーニング ──(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革 第19回〈リニューアル配信〉

大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
働き方改革に必要な「アイデアを出す能力」を鍛えるにはどうすればいいのか。既存の知識を「アイデア」に昇華させるため、アニオタの坂本さんならではの、ルーチン化できるトレーニング方法について解説します。

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本連載をベースにした坂本崇博さん初の単著『意識が高くない僕たちのためのゼロからはじめる働き方改革』の発売が決定しました!

20年以上にわたり社内における自分自身や周囲の働き方改革を推進し、さらに働き方改革プロジェクトアドバイザーとして毎年数十社、延べ10万人超の働き方改革を支援してきた著者 坂本 崇博がその経験をもとに「そもそも働き方改革とは何か?」を定義するとともに「真の働き方改革推進ノウハウ集」としてその推進手法やテクニックを体系化。
組織として働き方改革を推進する立場の方がもちろん、今の仕事にモヤモヤを感じていたり、もっとイキイキ働きたいと考えているすべての人に読んでもらいたい一冊です。

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(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第19回 幻想を実践するためのアイデアトレーニング

アイデア幻想術 ②虚構現実をルーチンに 

 アイデアを幻想のレベルまで具体的にシミュレーションできるようになるには、筋トレやジョギングのように実践トレーニングを積むことも重要です。
 とはいえ、普段仕事をしていてもなかなかそうした幻想を求められる機会は得られません。
 そこで、習慣・ルーチンとして、現実の事象を題材に、「自分だったらどうするか」という妄想を繰り広げる「虚構現実」を描く時間を生活の中に盛り込むことが必要です。
 今回は、この「虚構現実のルーチン化」という幻想力アップにつながる習慣づくりについてご紹介します。

アイデア出しは、疲れる行為 

 前回までお伝えした通り、アイデアとは「何かと何かの組み合わせ」です。
 そのため、アイデアを出す能力を高める上ではアンテナ力や記憶力を高め、多くの「アイデアの部材」を蓄積しておくことがベースの一つとなります。
 しかし、ただ単にいろいろなことを知っているだけではアイデアは生まれません。それらを何らかの目的達成に向けて「引き出して組み合わせる」ことができなければいけません。
 たとえば、太陽は一日かけて東から西に移動するという知識があり、一方で物体に光が当たるとその反対側に影ができるという知識があるとして、「時間を知りたい」という目的達成にむけて「日時計をつくろう」と思いつくかどうかは、それらの知識を記憶の中から引っ張り出して組み合わせられるかどうかにかかっています。
 そして、こうした記憶の中にある何かと何かを引き出して組み合わせるという行為は、少なからず脳にとってはエネルギーを要する活動なので、「さぼり癖」のある脳は無意識にそれを拒み、疲れないようにしようとしてしまいます。
 また、普段アイデア出しをしていない、すなわち知識を引き出して組み合わせるという行為に慣れていないと、いざアイデアを出したい目的ができても、何をどう組み合わせたものかもわからず、結局はインターネットで調べたりや人に聞いたりするなど「答えを探す」という楽な行為に逃げがちです。

アイデア出し脳トレにつながる習慣づくりが不可欠

 こうした疲れ・不慣れを解消し、アイデア出し能力(脳力)を高めるには、常日頃から何かアイデアを出すトレーニングが重要です。
 これは、ラグビー選手が筋トレをして戦える体を作ったり、マラソンを走る上で日々ジョギングを重ねてペースをつかむことと同様です。
 アイデアを出すという行為を反復することによって、脳がアイデアを出すことに慣れることにつながります。そうした基礎トレーニングができていれば、いざ本気で何か働き方改革のアイデア幻想をしたいときにも、過去の記憶や経験を組み合わせて、新しい選択肢やその実現についての具体的なイメージが浮かびやすくなるのだと思います。
 このあたりは、前述のアンテナ脳を鍛えるという考え方と同じです。
 「私はアイデアが出ない人間だから」とか「アイデアが出せる人は先天的に特殊な能力があるんだから私には無理だ」といった思い込みは不要です。
 また、「能力を高めるには一生懸命トレーニングしなくては」という義務感も不要です。
 アンテナ脳を鍛える上で、地名や企業名をスマホで調べて「へえ~」と楽しくなることを繰り返すのと同様に、アイデア出し脳についても、ちょっとした趣味とも言える「楽しむ習慣」を身につけることで、トレーニングになると考えます。

虚構現実のススメ

 私がオススメしたいアイデア出し脳トレーニングにつながる習慣は、「虚構現実(Fictional Reality)」の世界にハマることです。
 虚構現実(FR)とは私が勝手に作ってみた造語です。これは、VR(Virtual Reality:仮想現実)のように3D映像などテクノロジーを駆使してそこに存在しない現実を仮想体験させるものではなく、また、AR(Augmented Reality:拡張現実)のように、現実世界の中にホログラフなどで情報を追加上乗せしようという概念でもありません。
 虚構現実(FR)とは、要はフィクションの世界です。つまりこの世には存在しない「嘘」の世界です。しかし、異世界転生やSFといったまったく別次元の世界ではなく、今目の前の現実にほんの一つの要素だけ「嘘」を加えた現実に近い虚構の世界を描くことです。それはある意味「ひょっとすると実際に起こるかもしれない近い未来」とも言えます。
 私がよく描くFRは、今の現実に「私は100億円もっている」という嘘だけを加えた世界です。
 たとえば、テレビや新聞のニュースを見聞きしている中で何か大きな事件や災害という現実に直面したときに「ここで私の手元に100億円あったらどうするか」を考えるのです。
 単に手元にお金があったらどうしたいかという問いではなく、「私がこの事件・災害の当事者・関係者だとして、手元に莫大なお金があれば、どう対応するか」というケースを特定した虚構の世界を考えるということです。
 なぜ100億円という莫大なお金をもっているという条件を加えるかというと、そのほうが楽しく妄想ができるからです。
 この条件がないと、いろいろな知識を組み合わせて何かアイデアを思い浮かべようにも「お金がないので無理だ」とか「人が足りないから無理だ」とネガティブな方向に向かってしまいがちです。楽しくないことは続きません。
 そこで、せっかくの虚構なのですから資金の制約、さらにはそのお金を活用することで人手、道具、時間などの制約からも解放されるとしたときに、自分はどうするかを考えると、いろいろな知識を引き出し組み合わせるという妄想が捗るのです。

[ここまでのポイント]

1 アイデア出しとは、なんらかの目的にむけて記憶された知識を引き出し組み合わせること。

2 その作業は脳に負担をかけるので、無意識的に避けてしまいがち。日々トレーニングを重ねて、アイデア出し脳を鍛えることが必要。

3 そのトレーニングとして、現実の世界に一つだけ「嘘(虚構)」を交えた楽しい妄想をする「虚構現実」という習慣をつくることも有効。

アイデア幻想術 ③幻想が捗る「問い」

 ここまでで、アイデア幻想の基礎トレーニングにつながる習慣づくりについて自分なりの体験談をもとに解説してきました。
 ここからはより効率的に私の働き方改革についての幻想が一層捗るためにおさえておくべき問いかけポイントを紹介します。
 問いかけポイントというのは、要は自分の思考(幻想)を進める上でのフレームワークやガイドのようなものです。
 これらのポイントについて自分に問いかけることで、効率的に発想の転換を促し、かつこれまで記憶した素材を引き出し組み合わせながら、働き方改革のアイデアを生み出しやすくなると思います。

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