ドゥ ノット プレイ ボール

よおよおよお
野球なんて時代おくれだぜ
わりいな 正岡さんよお
もう 自由な野っ原なんて
見つけづらいんだ

よおよおよお
ベースボール
環太平洋から あんがとよ
でも
この国は狭いし

なんだかんだで
ユニフォーム着ちまったら
革ベルト
巻かなきゃいけないんだろ

窮屈すぎるぜ

グリンゴって言葉を
教えてくれた
ペルー料理屋の店主は
サッカー気違い

せいぜいが
キャッチボールくらいかな
おれが愛せるのは

サシで
胸元に

だらしないTシャツと
短パンで
革ベルトなんて締めない

高く振り上げて
地面に落とす
利き足じゃないほうの
爪先を

聞こえる方へ 向ける

盲人になりかけの
おれの親父も
上手にやれるんだ

孫の声が聞こえるほうへ

フェルトに包んだ柔らかいボールを

そっと放る

絨毯
足の指がキュッと曲がって
爪先は
音を指して
親父いつから家の中でも
靴下履くようになったのか

暑がりだったのに
身体が冷たくなってきたって
戯けてる

よおよおよお

これからは
キャッチボールだ

投げた球のスピードより

受けるグローブの爆ぜた音に

震えちまうね

現在に放られた球が

未来のグローブで爆ぜる音に

よおよおよお

いまは

バットはいらないな

キャッチボールが終わったら

プレイボール

バットを振らなきゃ

いけないのかな

バットは

過去を繰り返す装置

だから

キャッチボールで

いいや おれは

親父から

バッティング

教わってねえから

いつまでもプレイボールなんか
しないで

球場わきのアスファルトで

ちょぼちょぼ球を

投げ合って おしまい

ってわけに

いきたいぜ

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