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デタラメなあらすじにデタラメな親分。「舶来仁義 カポネの舎弟」

60年代後半、健さんや鶴田浩二が主役を張るキマジメな任侠映画を量産していた東映、の添え物映画として濫作された人情、友情、お色気、お笑い、涙、アクションにあふれたB面コメディ・ヤクザ映画。ここの主役は梅宮辰夫、若山富三郎、菅原文太、といったところ。
このうち、若山富三郎の主演作の一つ「舶来仁義 カポネの舎弟」より。

まずは、あらすじをご覧ください。

あのアル・カポネのもとで修行を積み、はるばる海を渡って日本へ上陸したのは、“カポネ栗山”こと、殺し屋・栗山!シカゴ仕込みの殺しのテクニックを身に付けて初めて踏んだ故郷の土、時はまさに万博ムード一色に沸いていた。カポネの使命は、日本侠客道の危機を救うため、国際秘密結社と結託した日本ギャング団の悪事を暴く事なのだ。

一般社団法人日本映画製作者連盟ホームページから引用

こんなバカを通り越して貧困な筋書きを、無邪気なお山の大将:若山富三郎が演じるだけで、とたんに愛嬌ある愛しいやくざの物語へと、様変わりするのだ。

自称「シカゴのアル・カポネのもとで修行を積んだ」というカポネ栗山(若山富三郎)が、仲間のフランク(山城新伍)&ジョオ(渡辺文雄)を引き連れ来日する。
ボルサリーノを斜に被って、上等なフラノかなんかのスリーピースに身を固め、葉巻を吸って、見た目は立派なシカゴギャング、だがカッコよく決めても、すぐにぼろが出る。

なお、ご存じの通り史実のカポネは1899年1月17日誕生、1947年1月25日逝去。20年間栗山さん何をやってたの?と整合性に突っ込んではならない!

あらすじなんてあってないようなもの。なんせ若山・山城・渡辺の3人が全編を通してカタコトの日本語&テキトーなエセ英語で話して、砕けた調子でリラックスした調子でやれ皇居だのやれ富士山だのニッポン観光に勤しむ映画なのだから。

とはいえ、戦前は日本を体現する女優として鳴らした某田中女史が戦後いそしんで渡米して帰国したときのように(失礼!)カポネ栗山も根っからアメリカに染まっているわけではない!題名通り「ヤマト魂」みなぎる好漢だ。
最初の来日時、飛行機のタラップから降りたときはアメリカン・スタイル。それが皇居にお詣りの際には正規なる和装、帯は巻き込みんで、みかどとくにを思うて地面に膝ついて平服す、本作で数少ない生真面目でそして心現れる、さすがの姿を披露する。その傍で「天皇賞って言うからには、ここから発走するんだよね」とフランクがしょーもないチャチャを入れるんだが!

栗山はヤマト魂が燃え盛るまま、最終的にアンタッチャブルを1/100しょぼくした感じの殴り込み、に興じる。今度は着流しに着替えた栗山を迎え撃つ、悪いヤクザの用心棒は、丸刈り、アメリカンベスト、機関銃というターミネーター感で、強敵、ツーかいつも通り怪物すぎる沼田曜一。
乱暴で、激しく、傍若無人に、悪いヤクザをちぎっては投げちぎっては投げ、悪いヤクザの親玉(演じるは安部徹)をいなしたところで、面白かったけど腑に落ちないまま、映画は終わるのだ。


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