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熊本大学ID公開講座応用編 ID学 vol.16

熊本大学ID公開講座入門編にひきつづき、応用編を受講、デジタルバッチ(Certificate)はとりあえず届いた。なによりの収穫は、講座終了後の懇親会で「鉄は熱いうちに打て」などと籠絡され、みごと科目等履修生に出願してしまったこと。あぶなくDouble Master Degreesもいいかも!と本科生に出願するところを、金額を見てひっそりと断念した。とりあえず4月から「インストラクショナルデザインⅠ」を履修する。とはいえ、この間まで(主にタイで)働きながらオンラインで大学院に在籍し、レポートの嵐を潜り抜け、学生を拝み倒して調査データを収集し、2年で修士論文を書き上げたのだという変な自信があって、なんとなく「ちょろい」と思ってる自分がいる。確実にいる。


学習目標

IDの基礎用語10個のうち1つ以上を応用して、自分の教育事例の改善案を提示できる(知的技能)

https://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/koukaikouza/

おおまかにいうと、自分が関わっている事例の改善案を作成し、それを講座メンバーとのディスカッションや先生への質問を通してさらにブラッシュアップし、改善案完成版を提出という流れ。ZOOMでのワークショップはディスカッションと質問コーナーで、あとは事前課題と事後課題として課される。ということで、入門編よりはちょっと負荷が高いかもしれない。

改善案の作成

自分で見ても、なにを書いたのかよくわからない。

事前課題思考ノート(左)/講座中のノート(右)

もはやあまり覚えていないが、講座で提供されるフォーマットをもとに、今自分がかかえている日本語コースの分析をした。コース概要や学習者分析などを軽くしている。それから、どうやらメーガーの3つの質問をつかってコース分析をしたらしい。さらに、今問題だと自分が思っていることをとにかくぜんぶ書き出して、それら1つ1つについてIDの10の道具(入門編参照)のうち、どれが使えそうかメモしている。ついでに現実的になって、いろいろなしがらみのもと改善可能か不可能かの仕分けも行なっている。しかし、今気づいたが「この過程で現状分析と改善案がごちゃまぜになっている」とのちに反省文を残しているので、まあ、いろいろ思うところがあったのだろう。

これをもとにフォーマットを使って改善案を作成した。こちらは恥ずかしすぎて公開できない。なぜなら、デジタルだから何を書いているかはっきりと読み取れてしまうから(ノートは字が汚ないのと文脈がないとどうせなに書いてるかわからないだろうと高を括っている)。

わかったのは、こういうまどろっこしい手順を踏むと、いろいろと生産的に整理されるということ。めんどうくさがらずに分析して、さらに問題点を自分なりに突き止めたらもう8割型成功といってよい(無責任)。なぜなら、ここまでくると作業が楽しくなるから。だって、あとは解決策を考えるだけだもん、前向きな作業だし、ある意味クリエイティブともよべる作業だから楽しい。

ID理論の使い方

入門編で、ガニェの9事象を使って国際交流基金の「まるごと」と、それを使用した自分の授業デザインを分析した結果、みごとに一致していて「だからID理論って、結局当たり前のこといってるだけなんだよね…」感に陥ったと書いたんだけど、これに関連して応用編受講後のレポートにこんなことを書いている。

受講前は、ID理論の使い方が漠然としており、関連するすべての理論を組み込もうとしていた。さまざまな理論を通すことで、自身の中にはない新しい「モノ」が現れることを期待していたためである。しかし、受講してID理論の捉え方が変わり、自身の中にあるものを分析的・論理的にみるための理論であると納得した。だかこそ信頼できる理論なのだという安心感も得られた(マユツバの魔法の杖ではない)。

何が関連しているかというと、今までIDって自分が知らない新しい理論だと、どこかで思っていたフシがある。理論を学習すれば「おお、なるほど。こうすればうまくいくのか!知らなかった!!」という現象が起きると期待していたフシがある。

でもちがうのです。あなたは知っている。はじめに学生に学習目標を知らせる必要があることを知っている。ながながと口で説明するより、やってみせたほうが早いということを知っている。学生にみずからチャレンジする機会を与えるべきだと知っている。学生にフィードバックを与えたほうがいいと知っている。自己評価させるといいらしいということも知っている。ということなんですよ。もう知ってるの、新しいことはないの。でも本当にできていますか?という話なのです。慣れや経験で授業をデザインして、実は必要なことをすっ飛ばしてないですか? 以前の学生に必要なかったこのステップが、今の学生には必要かもしれない、確認してみませんか? という話なのです(たぶん)。

知っていることとできていることには、実はギャップがあって、分析的にみていかないとそのギャップを見落としてしまうことがあるかもしれない。「だから、もう知ってるんだよね、IDよ…」と落胆するより「3か月であなたの学生も日本語ペラペラ!」というマユツバの魔法の杖じゃないことに安堵しましょう。IDはこれまで実施された大量の実践データから抽出された理論なので、いってしまえば「知ってて当たり前」なのだと思う。ここにくるまで数年かかっちゃったぜよ。

受講後のまとめ

ということで、あまり難しく考えずに、直感的に「この問題点にはこの道具が使えそうだな」と思ったら、それを使って改善を試みる。うまくいかなかったら「むー!うまくいかなかったな… ほかの道具使ってみるか」と乗り換える、そんな感じで進めていけばよくて、そこに正解はない(たぶん)。

現在、この改善案のごくごく一部を日本語コースで実践中。感触はまあまあいいが、改善されたかどうかの調査も実施する予定(かぎりになく夢に近い予定)。どこかに改善されたかどうか測れるアンケート調査フォーマットとかなかったっけというところで思考停止中。ADDIEとかSAMとか学んだんだから、そういうのははじめに作成しておけよと毎日思ってる。