世界のにっぽんおとぎ話

昔々あるところにこぶのついたお爺さんと継母がいました。
ある日お爺さんがカチカチ山に芝刈りに、
継母が川に洗濯をしにいくと、
川の上流から光る竹がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

継母が家に帰り金の斧で竹を割ると、
中から一寸しかない男の子が生まれました。
男の子はとりあえず太郎と名付けられました。
太郎はすくすくと成長しました。
体中から異様に垢の出る体質で、
その垢を使って人形を作って遊んでいました。

太郎は大きくなり、ある日お爺さんと継母に言いました。
「鬼が島にマッチ売りに行ってきます」
継母は太郎に小さなつづらとわらしべを持たせました。

太郎は道中、子供達に虐められている亀を助け、
長靴をはいた猫と七匹の子ヤギと醜いアヒルの子をお供にしました。
どれもおいしかったです。

鬼が島に行く途中、家が三件建っていました。
藁、板、煉瓦で出来たその三軒の家にはそれぞれ豚が住んでおり、
その内の長男が太郎に言いました。
「僕達をあの狼から助けて下さい」

「狼は狼少年の羊を全部食べ、おばあさんと赤ずきんを食べ、
僕達を今夜狙っています。どうかお助け下さい。」
その時何故か豚の鼻が伸びましたが、
太郎は快く引き受け、狼を夜まで待ちました。

夜中に狼が現れると、太郎は枯れ木の上から灰を撒きました。
灰が目に入り狼は辛そうです。
勢いに乗った太郎は枯れ木の上から、
渋柿を投げ栗を投げ蜂をけしかけ石臼をぶん投げました。
死んでしまった狼のお腹をまさかりで切り開き、
意味も無く石を詰め込んで井戸に沈めました。

三匹の豚に別れを告げた太郎は旅を続けました。
途中、猿と豚とカッパを連れた坊主と出逢いました。
坊主は言いました。
「私達は出会う旅人の洋服を脱がせられるか競争しているのです」
太郎は一張羅を盗まれては大変と坊主と戦いました。
足元に燕の死体のあるみすぼらしい王子の像のある公園で決闘していると、
ロバの耳の部分以外全身にお経を書いた裸の王様の行進に出会いました。
王様は言いました。
「そこの旅人達よ、今夜は私の城で行われる、
ブレーメン音楽隊Feat.アリとキリギリスコンサートに来ておくれ。
客人は多い方がにぎやかで良いからな。」

太郎はお城の音楽祭に行くことにしました。
が、その前にとりあえず坊主をぶん殴っておきました。

お城に行く途中、お堀に橋がかかっていました。
何か立て札がありましたが、太郎はろくに見ずに堂々と渡りました。
渡った先で何故か「天晴れじゃ」とか言われました。

音楽祭は贅を凝らしたものでした。
夜が明け、お城を後にする太郎に王様は言いました。
「待ちなさい、土産をあげよう」
太郎は不思議なランプと玉手箱をもらいました。
帰り道の階段にはガラス製の靴が落ちていました。

太郎が鬼が島への道を急いでいると、
前から凄いスピードで因幡の白ウサギが駆けてきました。
そしてその後をかわいらしい金髪の女の子が追いかけていました。
そしてそのずっと後をのろのろとカメが追いかけていました。
「一生懸命頑張れば勝てるんだ」とか何とか、
一人でブツブツ言ってて気持ち悪かったです。

途中、鬼が島の方角が分からなくなったので、
道わきにあった豆の樹に昇って方向を確かめました。
雲の上はとても良い景色だったので、
知り合いの黒ヤギさんに絵葉書を出しましたが返事はありませんでした。

太郎は途中怪しい老婆からリンゴを買いました。
早速食べようと思ったのですが色がおかしかったので、
森の中で出会った女の子にあげてしまいました。
するとその女の子はいきなり死んでしまったので、
女日照りの太郎はこれ幸いとばかりに悪戯をしようとしましたが、
しょっぱなのキスで目を覚ましてしまったので特に何もできませんでした。

遂に太郎は海まで来ました。
ここを渡れば鬼が島です。
しかしどうやって海を渡ればいいのでしょう。
海辺にいたウサギに泥船を安く譲ってもらいましたが、
どうも頼りありません。
そんな風に海岸をぶらぶらしていると、
子供たちに虐められている人魚をみつけました。
「どうしてそんな半魚人をいじめるのだ」と太郎が聞くと、
「今夜の夕飯にしたいのだ」と子供たちが言ったので、
太郎は子供たちにラプンツェルをあげ人魚を助けました。
しかし子供たちはもっと食い物が欲しいと付きまとうので、
太郎は笛を吹いて子供たちを岩場に連れていき閉じ込めました。
人魚は太郎に言いました。
「いまいち釈然としませんが、
助けて下さってありがとうございます。
お礼に海を渡らせてあげます。」

人魚が引っ張ってくれるのか、魚が乗せてくれるのかと、
太郎は考えていましたが、予想に反して助けた人魚は、
三匹のがらがらどんを連れてきました。
「この子たちが水面を走って鬼が島まで連れてってくれます。
一匹目が沈んじゃったら二匹目に乗ってね」とのことで、
案外シビアな渡航に太郎は息を飲みました。
ただで渡らせてもらうのも悪い気がしたので、
太郎はその若くて綺麗な人魚に玉手箱をあげました。

こうして鬼が島に渡った太郎ですが、
近寄って見ると、なんと鬼が島は全部お菓子で出来ていました。
ですが鬼が島の入り口はぴったりと雷おこしで閉じられており、
どうやっても入れそうにはありません。
途方に暮れた太郎が海岸に坐っていると、
里から帰ってきた鬼が入口に近づいてきて言いました。
「開けゴマ」
鬼が島の入り口は音も無く開きました。
どんなセキュリティーだよと太郎は思いましたが口をつぐんでいました。

鬼が島の中には沢山の鬼が山ほどの宝物に囲まれて暮らしていました。
七人の子鬼が村から捕まえた女の子をいじめていました。
ルーベンスの絵の前で泣いている赤鬼もいました。
鳥かごの中には緑色の服を着た少年が捕まっていました。

太郎はここでなら自分の商売も繁盛すると思い、
火をつけると幻覚作用のある非合法マッチを売りさばき、
お腹を膨らませて遊ぶカエルのおもちゃを売りさばき、
虎に木の周りを回らせて作ったバターを出荷しました。
売るものが無くなってきた時には、
近所の地蔵に笠をかぶせると、
次の日には沢山の物資が入荷されるシステムでした。

太郎は鬼相手に大儲けしました。
そこで太郎は村に行き、
野獣を元カレに持つアラビア生まれの人魚を嫁に迎え、
永遠に幸せに暮らしましたとさ。

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