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#ラストdig

▼ざっくり自己紹介

浅井 千寿代(あさい ちずよ)・役者
奈良出身、名古屋在住
名古屋を拠点に活動する劇団わに社の副社長
最近の楽しみは、呪術廻戦と葬送のフリーレン


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一ヶ月程前に、約一年半やってきた一人芝居『I dig』のラストステージを終えました。

この記事も実は、だいぶ前にほとんど書き終えていました。でも、ただの自己満足な内容な気がして公開出来ずにいました。

しかし、今日読んでいた本の一節『奇跡とは「不可能だと信じられているゴールを達成すること」である』って言葉を読んだ時に『I dig』のことを、奇跡だと思っていた夢が叶った最後のステージのことを思い出しました。

久々に読み返してみたら、あの時のリアルな気持ちが書いてありました。愚直でいいと思いました。他人からしたら大したことではないかもしれない。でも、私にとっては奇跡と言ってもいいほど特別なこの経験をちゃんと記録に残しておきたい、誰かに読んでほしいって思いました。

良かったら、お読みいただけたら幸いです!

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11/4(土) 劇団わに社 第三回株主総会にて
一人芝居『I dig』を上演させていただきました。

ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました!!!

演出家である社長(林優)の前説から始めさせていただき、ご来場の皆様には、上演前に“特殊な練習”をしていただきました。(その説明は、後ほど)

社長から「ババロアメンタル」と紹介され、始まった一人芝居。その通り、すぐにでも崩れ落ちそうなくらいの緊張と強い覚悟を持って舞台に立ちました。

2週間経ってようやく心の整理ができたので、当日のこと、それまでのことを書き残したいと思います!




photo:やまだともみ

「ラストdigだな。」


名古屋から始まり、大阪、仙台と、約一年で3度も上演させていただきました。今までのnoteにも書いてきましたが、全て特別で最高の公演でした。

仙台を終えたあと、沢山の株主様(劇団わに社の公演を観に来てくれたことのある方々)から「名古屋でも、もう一度」との嬉しい声をいただきました。

そのおかげで、名古屋で、しかも、自劇団で「株主総会」というこれ以上ないホームグラウンドで最後の締め括りができて本当に幸せでした!

ちなみに、“最後”というのは、自分達発信ではしばらくやる予定はないということです。一生やらないという意味ではありません(笑)

だとしても、これが一つの区切りになるだろうと思いました。社長と「ラストイグ(ジット)ならぬ『ラストdig』だな」と話しました。


photo:やまだともみ

退路を断つ


teamピース(株主総会における私の所属チーム)のみんなのおかげもあって、名古屋での再演が決まったものの…

過去一番の不安に襲われました。

正直にいうと、最後にやった仙台でのステージの記憶が良いものとして残りすぎて、それを超える自信がありませんでした。

頑張り方がわからなくなってしまって、楽しみにしてくれている方々がいるのに頑張れない自分が嫌で、全てを投げ出したくなりました。中途半端なものを見せるくらいならやらないほうがいいと思ってしまった。

そんな時に、腰を痛めて稽古もできなくなって「
あー、やめれる理由ができちゃったな」って思いました。今なら逃げれる、と。それぐらい今の自分の『I dig』を見せて幻滅されるのが怖かった。

一人でいくら悩んでも答えがでなくて、時間だけが過ぎていくのが怖くて、社長(演出)に本心を伝えました。その時は、本気で辞める方向で話を進めようとしました。

社長と沢山話しました。それでも決断できなかった。自分が本当はやりたいのか、やりたくないのかわからなくて。最終的に、こんなに辞める方向で悩んでも決断できないならば、辞めるのを“諦める”ことにしました。

皮肉なもので…退路を断った途端、真っ暗だったところに光が差し始めました。あんなに身動きとれない状態だったのに、急に進む方向がわかって、ゆっくりですが歩き始めることができました。怖い方を進むことに決めたのに、迷っているときのほうがずっと苦しかった。やるしかないとなったら、泣きべそかきながらでも、前を見て進める。こっちのほうが私には合っていました。

photo:岩瀬かえで

スタンディングオベーション?


腹はくくった!でも、今回の『I dig』をするにあたって私はどうしたい?何をしたい?って考えたときに、まず思い浮かぶのは“スタンディングオベーション”でした。

実はずっと、名古屋での初演から私達の目標はスタンディングオベーションでした。といっても、これは観客の皆様がしてくれることであって私達がコントロールできることではない。だから、スタンディングオベーションしたくなるような作品にするための小さな目標を毎回課してクリアしてきました。

でも、なかなか起こらないんですよね(笑)
私だって劇団四季でしか起こってるの見たことない。素晴らしい作品を小劇場で観てもスタオベしようと考えたこともなかった。そういうものだった。だけど『I dig』が出来たとき、思ってしまいました。スタンディングオベーション目指したいって。みんな感動して泣いてとかじゃなくて「なんなんだよ、こいつは!バカだな、もう〜!笑」って笑ってくれるようなやつ。

社長に「スタンディングオベーションを目指したい!」って初めて言った時は、笑ってました。私も言いながら笑ってました。

そんな奇跡みたいな目標を掲げて、まさかその後、1年半もこの作品を続けるとは思いませんでした。


photo:やまだともみ

目指せ、スタオベ


大阪での『I dig』を終えたとき、その時は今回が最後になると思っていました。悔いがないわけではないけど、最高のステージはできた。自分の限界を超えたし、目標のスタオベはなくとも熱い拍手もいただけて充分幸せだと思っていました。

そしたら「心の中でスタオベをした!」と感想を書いてくれている方がいました。

「いた!!!あの中にスタオベをしてくれた人がいたんだ!!!泣」と社長と大喜びしました。本当に嬉しくて、何度も何度も思い出しては喜びました。


名古屋、大阪、仙台、いつもその時の最高のステージができました。スタンディングオベーションはやっぱり奇跡なんだなと思うようになっていましたが、残念と思うことはなかったです。観客の皆さんが最大限の気持ちを込めて拍手をしてくれているのがわかりましたし、何度も言いますが充分すぎるほど幸せでした!!!!


それがなぜか…
名古屋でのラストdigが決まり、一人で勝手に自信を失い迷路に迷い込んだ。退路を断って覚悟を決めたとき、自分の気持ちを上げるためにも、改めて目標が必要でした。

社長に話すと「やっぱりスタンディングオベーションじゃない?」と言われましたが、私はもう、今までの自分の出せる最高をだしたステージで起こらなかったんだからもう無理だと思っていました。

諦めつつも「どうしたらスタンディングオベーションって起こるんですかね?」って聞いたら「スタンディングオベーションしてくださいってお願いする。」と社長は言いました。

その発想はなかった!!!(笑)
最初に目指したスタオベではないかもしれないけど、めっちゃ面白いなと思いました。スタオベをお願いするなんてふざけた目標ですが、それで良かった。可能性0だと思っていたものがそうじゃなくなった。それは私にとってすごい希望でした。スタオベを目指す!と言い続けてきたけれど、それが私にとって前に進む力になっていたんだなって。それだけのことをしようと思うことで成長してきた。

その可能性が見えなくなったとき、頑張り方がわからなくなった。

いつのまにか、スタンディングオベーションが私にとっての指針であり心の拠り所になっていたようです。

結果的に本番では「拍手以上のものをと思ったら、スタンディングオベーションしてもらえたら嬉しい!もちろんそれだけ良いと思ったら。」と社長から前説でお伝えしてもらいました。(ちゃっかり、スタオベの練習付きで。笑)


オペ席からの景色

すごい景色を見よう


こんな幸せなことがあるのかと。
大満員の劇場で、観客の皆さんが全員立ち上がってくれた。

いっぱい妄想してました。もし、スタオベが起きたらこんなことを言おうあんなことを語ろうとかいっぱい考えてたのに。

いざ、あの光景を目にしたら、胸がいっぱいすぎて声もでなくて必死に振り絞って「ありがとうございます」しか言えなかった。それしかなかった。本当に心から感謝していることだけどうしても伝わってほしくて、ありがとうを繰り返すしかなかったです。

公演が終わる度、節目のタイミングではいつも「もっと、すごい景色を見ましょう」って社長に言い続けていました。

今思うと、すごい景色って具体的には想像できてなかった。でも、もっとすごい景色が見たいとずっと思っていました。舞台に立つのは私だけど、演出の社長にもその景色を見せたかった。

立ち上がってくれた皆さんの顔を見たとき、すごい景色ってこれだったんだなぁって思いました。私も社長もばっちり見れました。一生忘れたくないなぁ。そう思えるほどの景色でした。

あの場にいた全員がその価値を感じたとは限らないと思います。それでも立ち上がってくれて本当にありがとうございます。あなたのおかげで幸せだけを噛みしめることができました。

そして、その価値を感じてくれた皆様、本当に本当にありがとうございます。皆さんが叶えてくれたあの夢の景色、一生忘れないです。もう一度、過去に戻れるならもう一回あそこに戻って味わいたいくらい(笑)幸せなスタンディングオベーションでした。

スタンディングオベーションしてくれた皆様、奇跡みたいな私の夢を叶えてくれてありがとうございました!



photo:岩瀬かえで

これはもう奇跡



作品以上にドラマみたいなことが、この公演では起きていました。

公演が終わって落ち着いてから、SNSで皆様の感想を読ませていただいていた中にこんな言葉が

「in22(大阪)では心の中でスタオベしたけど今日は本当にして来た。」

大阪での公演の時「心の中でスタオベをした」と言ってくれていた方が、なんと名古屋まで観に来てくれていました…!!この感想を見たときの私の衝撃がわかりますか(笑)叫びたいほど嬉しかった。いや、叫びました。

私に初めてスタオベしてくれた方が、あの場にいて一緒にスタオベをしてくれていた。一年も前に一度見たきりの、たった30分の作品を観るために名古屋まで来てくれた。そして、今回はみんなでスタオベをしてくれた。

私からしたら、これはもう奇跡です。

あのとき、逃げなくてよかった。
やっぱり、熱意には熱意が返ってくるんだ!(ハイキュー!!の鵜飼コーチが言ってた。)

「I dig」を支えてくれた大好きな人達

また、いつか


最後に、100点の芝居をできたかというと完璧とは言えないものだったかもしれない。でも、あの瞬間できる全てをした。悔いはない。

ゴールする場所は同じでもその時どんな気持ちで到着するかは、毎回その日の愛子ちゃん(主人公)に任せてきた。毎回全て出しきってきた。

「一人芝居がやりたい」「大阪に招聘されたい」「スタンディングオベーション起こしたい」その願望が生まれたときは到底無理だと思っていたことが、全て叶った場所に今いることに不思議な気持ちになります。

沢山の人のサポート、応援、ご尽力があったから叶った。全て叶えていただいたものです。

本当に、ありがとうございました!!!!

そして

『I dig』に、“愛子ちゃん”にも感謝したい。
その名の通り沢山の方に愛された、すごい女の子でした。

楽しかったね!!!
いっぱい穴掘ったな!!(笑)

スコップをギターのように背負って歩くのも、もう終わりか。捕まらなくて良かった(笑)

でも、またいつでも掘りに行けるように大切に閉まっておくからね。また、弱っちくてだめだめな自分が出てきたらウイスキー片手に埋めにいこう。

ありがとね!また会おう!

photo:やまだともみ

最後に


仙台の公演を超えられないと自信を失くしたように、今度は『I dig』を超えられないと悩むのかもしれない。でも、絶対その時の私のほうが強い。また私と社長が心から面白いと思えるものを作ればいい!そこさえ、ぶれなければきっと大丈夫だと信じています。


INDEPENDENT:NGY22
INDEPENDENT:22
INDEPENDENT:SND23
劇団わに社 第三回 株主総会

ご来場いただいた皆様、関係者の皆様、支えてくれた方々、鰐塚先生、社長

本当にありがとうございました!!!!
最高の時間と経験でした。

私、一人芝居好きです!!
めちゃくちゃ怖いし、やらないほうが絶対楽なんだけど、きっとまた懲りずにやります。その時は、また面白がってもらえたら嬉しいです(笑)

次の夢は、一人芝居でもっと全国の色んな土地に行くことです。

ここまで読んでくれた皆様
劇場でお会いできる日を楽しみにしております。
ありがとうございました!!

またねっ。(ヘイッ!!)


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