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白馬と葉山、どちらにも帰る家がある冬

ここ数年ずっと出入りしている長野県白馬村に、この冬ついに部屋を借りてみています。

相変わらず神奈川県葉山町に自宅はあるので「二拠点生活」ということになるのですが、その言葉もなんだかしっくりこないなーなんて思っていたら2ヶ月が経っていた。早くもシーズン中盤だけど(もはや冬終了の空気すら漂っているけど)、近況報告をします。

帰る家が両方にある生活を「はじめました」とも「やっていきます」とも宣言できなかったのは、今この瞬間やってみているという現状しか確かなことがないまま日々が積み重なっていたからです。もともと冬限定のつもりだし、明日には続けられなくなるかも。そんな実験的な日々を選んだ理由や、どんな生活をしているのか、リアルなお悩みとは、を書き残しておこう。

10年目の白馬でフィールドワーク

白馬には実はずいぶん昔から出入りしています。初めて長期で来たのは学生のとき。リゾートバイトしにやって来て、白馬という地域の全体像もわからないまま栂池高原スキー場の麓に籠もってレンタルショップで働いていました。

社会人になってからも年末年始休暇などを利用して同じレンタルショプに戻ったり、知人がレストランを開業するというので手伝ったり、ただのんびりと遊びに来たりしていたら5年ほど経過。そして2018年頃からはご縁あって仕事でもこの地に関わるようになりました。コロナ禍で訪れる頻度が増えていき、気づけばどこに行っても必ず知り合いに会うほどに(ご縁をくれた人たちには心より感謝)。

2022年5月には1ヶ月ほど住んだこともあり、そのときの感想はここに書いています。

そんな白馬になぜ今改めて腰を据えてみたかったのかというと、シンプルに面白そうだったから。「面白そう」をもう少し掘り下げると、社会学のフィールドワークのような感覚に近いです。コロナ禍が明けてインバウンド観光客も戻り、盛り上がりそうな気配があったので、その場にできるだけ長く身をおいて体感しておきたい、という感じです。

仕事に繋げたいといった思惑もないことはないけど、どちらかというと「趣味」の感覚に近い。事が起こっている現地に身を置き、人に話を聞いたりリアルに体験したりしながら、新しい気づきを得続けていたいという好奇心が原動力。私にとってはそれが脳と心の栄養になるので、本を読んだり映画を観たりするときの動機にも似ています。

暖冬の白馬、年が明けても雪がなくて生活面はとにかく楽

海外リゾートのような白馬、かなり面白い

タイトルの「どちらにも帰る家がある」からすっかり逸れて白馬についてばかり語るけど、今冬の白馬は予想どおりとても面白くて好奇心が満たされています。

スノーリゾートのインバウンド観光に興味があるので、その視点で地域を見てみたかったのもあって、白馬の中でも外国人観光客の多いエリアを選んで住みました。歩いていてもほぼ日本人を見かけず、飲食店やBARに入ると100%海外からのお客さんだったりします。

シャトルバスでナイターへ。案内表示は英語、乗客は外国人のみ

外国の方はだいたい公共交通機関を使ってやってくるので、彼らに対応して冬季の白馬には地域全体としてのシャトルバス、スキー場ごとのシャトルバス、ナイトデマンドタクシー、レストランやホテルの送迎サービスなどいろんな交通手段があります。移動手段を変えることで見えてくる世界も興味深い。

ただそんな表面的なこと以上に最近私が思っているのは、直接ビジネスに活きたり具体的なスキルが身についたりすることを目的としない「インプット」って大事だなということ。効率・時短重視の昨今、すぐ身になるお役立ち情報ばかり求めてしまいがちだけど、意味があるかはよくわからないけれど面白そうなインプットが深みを作るし、長い目で見ればいいものを生み出してくれるな、と。

そして「一次情報は現場にしかない」というのも感じていること。PRやメディアの世界でやってきた人間としても、この情報が溢れかえる社会の中で、一次情報の価値は高まり続けると思っています。コンテンツは次から次へと生み出されるけど、実はその大半が二次情報、三次情報な気がしている。現地に足を運ぶことでしか得られない一次情報を生のまま浴び続けることが良い刺激になっています。

売上日本一と噂のローソンも学びの宝庫

実験的なワークとライフ、「二拠点生活」への違和感

もともと白馬にも拠点がほしかったのは「仕事と生活が落ち着いてできるプライベートな環境を整えて、好きときに帰れて好きなだけいられる状況をつくりたい」という理由。結果的に葉山の自宅はそのままに、白馬では大きな共同住宅(シェアハウスと呼ぶよりもそんな感じ)の中に一部屋を借りる形に落ち着きました。

便利な立地にありワーク環境も整っているので「白馬事務所」のような気持ちで活用しています。部屋があれば何の外的影響も受けずに集中できるし、予定と予定の合間にサクッと帰ってきたりもできる。この場所にこの空間をもっていることの恩恵がすごい。

洋風和室。モバイルモニター、ロープロファイルキーボード、籐のランプがいい仕事している

ちなみに「住まいが足りない」ことで有名な白馬で、どうやって見つけたの?ともよく聞いてもらいますが、これは10年出入りしている繋がりからの嬉しいご縁と、数年ぶりのまさかの再会があってのことでした。あまり再現性がなく、すみません。

素敵なカフェもコワーキングもあるので、気分転換に外で仕事することもあります。オーストラリアにいても、葉山に引っ越しても、白馬にやって来ても、何年も同じスタイルがぶれなさすぎて不安になってくる最近です。

キーボードを持ち運んで乗っけるようになったことは新たな変化

はじめは「二拠点生活」という言葉を使ったりもしていたけど、意外とこの概念がテンプレ化しているというか固定観念がついていることに気づき、使うのをやめました。長野の各地で出会う二拠点生活者のほとんどは、「都会」と「地方」を行き来している人。コロナで会社がリモートワークOKになったことをきっかけに、都市部にいた人が長野にも居場所を見つけたというパターンが大半です。

だけど私は「海のリゾート観光地」と「雪山のリゾート観光地」を行き来しているし、会社員として働いた記憶はほど遠く、コロナ前から海外に住んでリモートだった、など経緯も特殊で、せっかく仲間意識をもってもらった人と共感しあえる話ができず申し訳ない空気になってしまうのです。

海のリゾート、雪山のリゾート。たまたま同じ構図で撮れた、1日違いの写真。

運転5時間、増える水タンク、冷蔵庫の食材問題

そんな生活、課題もたくさんあります。持続可能性についてはかなり疑わしいので、ぼちぼち春以降のことを考え中。

まずは移動の問題。だいたい車で移動するのですが、太平洋に面した海街からほぼ日本海目前の山まで5〜6時間はかかります。東京よりも1〜1.5時間は遠く、個人的には「5時間の壁」があると思っているので、コツをつかめば慣れるけれど気軽に行き来はなかなかできない。もっと近づいてほしい。

だけどやっぱり車がベスト。秋に体調を崩して運転が不安になったことから、新幹線、高速バス、レンタカーやカーシェアと公共交通機関の組合せなどいろいろ実験しました。その結果、時間を気にせず好きなタイミングで移動できてプライベート空間も保たれるという点で、やっぱり私は車が好きだと気づきました。

そして自宅を空けている時間が長すぎて、いろいろ管理がたいへん。具体的には、郵便物や宅配便、植物の水やり、ウォーターサーバーの管理、食材やゴミの処理など。水タンクが消費しきれないのに次々届いて、休止すればいいんだけどいつか飲む気もして、そのいつかが来ない可能性を考えると怖い。という、よくわからなすぎる悩み。

無限に積み上がるウォータータンク地獄

移動タイミングをあまり決めていないから帰宅しても食材を買い込めないし、滞在中もいかにして冷蔵庫の食材を使い切るかを考えて食事したり、出かける間際にバタバタと1時間くらいキッチンの処理をしていたり。そういうリアルな課題があります。

この身をどこに置いて生きていくか

永遠のホームにすら感じてきた葉山の一色海岸。やっぱり落ち着くんだよなぁ

そろそろ春以降のことを考えないといけないです。

好きな土地はたくさんあるけど、いち生命体として命をはぐくむのに最適な地理環境というのは個体ごとに違うんだろうなとか、長い人類の歴史のなかでつい100年前くらいまでは生まれ育った土地で一生を終えていたんだろうなとか、古代から大陸移動とかもあるけど人間はなぜ移動したがるのかなとか、新幹線や飛行機の発明って生態系的に大丈夫だったんだろうかとか、そんなことを考えたりもして。そういう本があれば読んでみたいので教えてください。

今この瞬間をやってみて、何かいいインスピレーションが生まれたらいいなと思っています。また何か気づいたら書きます!


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