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医療事務のための、輸入手続きのやり方

新型コロナウィルスの感染拡大が続き、東京の新規感染者数が4ケタなのか3ケタなのかで一喜一憂する今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
約10ヵ月前には「感染者数が100名を超えた」というのが、緊急速報ニュースになり、日本全国が戦々恐々としていたんですよね。

今や、100名なんて余の裕で超えてるんですよ。もう一桁上のバトル。ドラゴンボール張りのインフレです。

53万ごときのフリーザ様に震えてた頃に戻りたい。

新型コロナウィルスの患者さんって一言でいうけど…

さて、このウィルスは接触感染なので、患者さんに触れるタイミングが最もリスクが高くなります。
ですので、新型コロナウィルスで入院している患者さんのケアに従事する医療者としては、直接接触の頻度を低減させることが、感染リスクを低下することになります。

この疾患は急性増悪が見られるようです。1日程度で肺が真っ白になっちゃって、酸素が全然とりこまれなくなる、みたいな。なので結構な頻度でバイタルチェックを行う必要があります。

若くて比較的軽症な方であれば、ご自身で体温を測定したり、SpO2モニタを黙ってつけてくれたりします。なので、バイタルチェックは非接触で完結出来るケースが多いと思います。

一方、高齢者の方、特に認知機能の低下がみられる方の場合は、医療従事者が体温を測らなければなりません。また、SpO2モニタのコードをひっぱって倒してしまうかもしれないので、監視または適宜の測定が必要です。

人間、どうしても「今の自分」を「普通」だと感じると思います。自分ができることは皆できると思っているし、自分のように振舞えるのが当たり前だと感じることも多いと思います。
でも、ほんとに色んな人がこのウィルスに罹り、その多様性を受け止める医療現場はかなり大変な多様性適応が求められているのです。

医療機器を輸入した理由

当院の場合は、立地的にも高齢者が多いですし、中等から重症な患者さんが転院されてくる病院でもあります。
そうなると、なおのこと高齢な新型コロナ患者さんが集まってきます。
ケアも益々大変です。

そんな中、

この接触機会を低減することで、医療者の負担を減らしたい

と、新型コロナウィルスの患者の診療を行っている医師から依頼を受けました。

Apple Watchとかで運動量や脈拍が計れたりしますね。最近、心電図も日本でのスキル解放に相成ったりしました。

こんな感じで、「コードに繋げず、測定値を自動で飛ばしてくれるセンサが導入できれば、看護師さんの接触リスクを減らすことが出来る」のでいいのではないか、というご提案です。

でも、この手の医療機器って実はまだ日本にないんです。
「患者自身がある程度操作」をすれば、測定できるものもあるにはあるんですが、認知機能が低下している方にはその操作さえ難しそう。

で、昨年GWにAMED申請で取り上げていた海外ベンチャー製のセンサに再度日の目が当たることになりました。

輸入することにしました。これは作成した体に貼り付けるだけで、体温や心電図などを測定できる医療機器になります。日本国内未承認のものです。

提案してくれた医師とも相談し、「是非、導入してみたい!」とトントンと話が進み、輸入することになったのですが・・・

当方、何の知識も持ち合わせていません。
でもやるしかない。そして何でか輸入できた。

そんな、「一介の医療事務である私が、医療機器輸入を体当たり的に対応した」という話です

もし、同じような立場にいらっしゃる方にとって参考になれればと思い、共有させて頂きます。

0.輸入するものと輸入方法

【いずれもコードレス、BlueTooth接続で測定値を飛ばせるもの】
・体温センサ
・SpO2センサ
・ECGセンサ

米国(FDA)、欧州(CE)、中国(CFDA)、豪州(TGA)の医療機器認証は取得済みだけど、日本では承認されていないものです。

また、医療に関するものについては厚生労働省の許可が必要になります。
「薬監証明(輸入確認書)」というものがないと、国内に入れることが出来ません。

今回は「医師等が治療に用いるために輸入する場合」に当てはまりましたので、この手続き資料を作成する必要があります。
(今回は私の経験した上記の場合について書きます)

1.発送手続き

最初の契約だと、「Shippingもお前がやれ」って書いてたんですけど、さすがに現地の配達業者を手配したりするのがよくわからなかったので、「実費プラスα払うからやってくれ!」とお願いして、実施してもらいました。

どうしてもShippingが先方で難しい場合は、相手方の輸出手続きもこちらでやらないといけなくなります。

そういう時は世界各国に配達網があるFedexやDHLを使って手配するのがよいかなと。こういう物流関係の会社は国際空港に通関部を持っているので、ある程度の情報はもらえそうです。

もっとも、通関業務をメインでやってる会社を使うのがトラブルはなさそうではありますが。

または病院の出入りしている薬品卸やメーカーに聞いてみるのも手だと思います。

2.仕入書や航空貨物運送状の調整

薬監証明(輸入確認書)取得のために、「輸入確認申請書」や「商品説明書」などの必要書類を作成します。

この中で

仕入書(INVOICE)や航空貨物運送状(AWB)に記載されているものを転記してください

という項目があります。

特に「宛先(宛名・住所)」と「品目名」は、仕入れ元から届いたタイミング、あるいはShippingの際にしっかりと詰めておく必要があります

というのも、「医師が購入し、輸入していること」「その医療機器が何であるかを特定していること」を明示するために、これらの文書が使用されます。

ですので、以下のところは必ずチェックし、異なっている場合は修正してもらいましょう。

・仕入書(INVOICE)の宛名が使用する医師名になっているか
・仕入書(INVOICE)の宛先が使用する住所になっているか
・仕入書(INVOICE)には輸入する物品の商品名が正しく明記されているか
・航空貨物運送状(AWB)の宛名が使用する医師名になっているか
 ⇒仕入書(INVOCE)と同じ医師名になっているかも併せて確認

3.所管の厚生局へ輸入確認証手続きを行う

先方が輸出手続きを完了すると、「○○日に日本に到着する」という連絡が入ります。

もし、輸入日等で不明な所があれば、利用している運送会社(Fedex等)に連絡すれば教えてくれますので、積極的に問い合わせをしましょう。
Fedexであれば、随時配達状況のメールが届くと思いますので、そちらも確認してみて下さい。

この時点で、輸入確認申請書に必要な情報が揃うかと思いますので、適宜資料を準備していきます。

【資料作成で気を付けたこと】
■全般的にいえること
・HPにのっている記載例や注意事項はよく読みましょう!突き合わせしながら作成するのがベターだと思います。
・分からないところがあったら、運送業者の通関部の担当者に相談してみるのも手です。

■輸入確認申請書
・仕入書や航空貨物運送状の内容を転記がベースです。
・英語で書いてあったら英語で転記するようにしました。
無闇に翻訳とかして、「整合性が取れてない」と思われても癪なので。
・複数商品がある場合は別紙となるのですが、これは独自様式でOK。
但し、名称・数量・単位はしっかりと。

■商品説明書
・商品名はINVOICEの転記で。省略せず。和訳とかも不要。
・用途は具体的にどのように使うかを簡潔かつ専門用語控えめに記載。
・効能効果として、今回だと「医療者の感染リスク低減につながる」というメリットを書きました。

■必要理由書
・記載要領に提示されている「ア治療上の緊急性」から「エ輸入する数量の根拠」まで、それぞれ穴埋め的に記載しました。
・「日本にあるものであればそれを使え」となるかも、と思い「何故わざわざ輸入しなければならないのか」のロジックを精一杯ぶち込みました。
・医師の責任については例文にほぼ準じて記載しました。

これらの資料を必要数用意し、所管地域の厚生局へ依頼を掛けましょう。

今回は近畿厚生局に提出したのですが、書類に不備等がなければ、概ね2営業日程度で確認され、結果が返ってくるようです。
基本的にはすべて郵送でのやり取りです。提出から結果返還までは5日程度見ておけば御釣りがくると思います。

4.通関部へ薬監証明(輸入確認書)を提出

無事申請が通れば、当局から薬監証明(輸入確認書)が送られてきます。

「輸入確認書」として行政文書が作られて送られてくるのかな?と思ってたのですが、提出した「輸入確認申請書」に確認済のハンコと当局印が押されたものでした。

最初は「これ、不合格だったのかな?」と思ったぐらいのものだったのですが、それでよかったようです。

到着した薬監証明を運送業者の通関部にFAXまたはPDFを送ります。
これで通関手続きにはいり、関税計算等を行った後、手元まで配送されてきます。

おわりに

振り返って文章にすると、「なーんだ、こんなもんじゃん」って思うのですが、色んな調整がはじめてで、やりかたも分からない中、本当に手探りでやったので大変だった思いがあります。
もう一度やったら簡単に出来そう。

ただ、それは「やったことのない私」と「やったことある私」の実力差であるし、それが成長というものになるのかしら、とも思います。

やっぱり何でも「お初」なものってドキドキするし、不安になりますよね。
だからこそ、「やったことない」ことをやる大切さがあり、経験は財産と言われるのかもしれないですね。

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