《日中の記念撮影時、背後に国旗掲げず かすむ互恵理念》(共同通信 via 産経新聞)

http://www.sankei.com/photo/story/news/160906/sty1609060002-n1.html

G20での日中首脳会談について、日本のメディアでは両国の防衛当局間の「連絡メカニズム」作りなど「成果」を強調する報道が続いたが、この記事は注目したほうが良い(掲載は産経だが、海外のメディアでも同じ内容が「共同通信電」として流れていることに注目されたし)。

特に気になるのが、「中国が「5日夕にセットした」と正式に通知してきたのは、首相が杭州入りした後の4日午後。6日までの滞在中のどの時点で会談が入るか読めず、他国との2国間会談を組めない状況が続いた」という部分。

これまでずっとひっかかっていたのだが、昨年のAPECなどの場での安倍・習会見を日本メディアで読むと、「お互いが望んでいたことがやっと」というムードで書かれている事が多いのだが、日本以外のメディアの論調を読むと、「日本が懇願した」ことをにじませている記事が目についた。

今回、中国は明らかに会談を日本側が強く求めていることを逆手に取り、焦らし続けた。日本はその日程が決まらないために他の首脳との会談をスケジュール化できなかった――つまり、日本にとって杭州G20で習近平との会談が最優先事項だったことがわかる。 明らかにそれをいかに行うかどうかの決定権を中国側に預けきってしまっている。

これは外交において大変不利な立場になっている。さらに言えば、そんな不利な立場に日本が置かれていることを、きちんと国内に伝えようとしない日本メディアの態度も問題だ。会談の内容だけではなく、お互いの力関係が今こうなっていることを伝えるのもメディアの仕事のはずだろうに、メディアは日本大使館によるブリーフィングを伝えることだけに力を注いでいる。

そうした報道姿勢が生むミスリーディングが、国民の外交に対する誤解を生む。自国の国力に対する無知を誘導する。我々は国際外交の場における本当の日本の立場を知らされていないのだ。

「風下にいる者」を翻弄する相手に対して卑屈になれとは言わない。だが、事態をきちんと客観的に捉えて、次の一手を考える必要はあるはずだ。

#私的NC

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