《アリババの金融部門、企業価値はゴールドマンしのぐ可能性-CLSA》(Bloomberg)

アリババの金融部門、企業価値はゴールドマンしのぐ可能性-CLSA

これが、「民は足で投票する」といわれる中国の現実。2000年代の中産階級の成長に伴走し、またその中産階級に支えられてきたアリババ。政府が「たかが地方の民間企業」と思っている間に、あっという間に政府も頼る大企業に。

これまで何度も書いてきました(たとえば「政府も頼る巨大企業『アリババ』を読む」)が、政府が経済の根幹を握って話さず、銀行はすべて国営で左うちわ状態だったところに、消費意識に目覚めた民のために細かな視点から便宜を図ったのがアリババ。当然ですが、一般庶民は横柄な態度であしらわれ、また自分のお金なのに預けたお金を引き出すにも大変な労力を要する(30分並ぶとかザラ)銀行よりもアリババ(アリペイ)を支持するようになった。底力が違います。

未だに銀行は貸し倒れを恐れて中小企業には融資すら渋る。一方でアリババは設立当初から「中小企業のために」をスローガンに、企業向けには海外との取引を紹介したり(実はこれが最初のビジネス)、地方の農家が自分で農産品を消費者に届けたり(タオバオ)、消費者がほしいものをあちこち歩き回ることなく自宅で受け取れるようにしたり(Tモール)、さらには貧弱な公共交通を信用しない人たちに車まで手配(「滴滴出行」)…全てこれ、社会主義国である政府が建前上は整備しなければならいはずのものを、アリババが構築した。今や、政府筋、国有企業系サービス業はアリババの旗色を見てビジネスを進めている。

そのスキにアリババは中国の消費に敏い人たちの情報(噂では「財布の中間で」)をがっちり握り、この国の1億(クレディ・スイス説)とも2億(中国西南大学説)とも3億(アリババ説)ともいわれる中産階級がなにを指向しているのかを存分に分析できるようになっている。

新たに、メディアや娯楽、生活資本の多くに手を出しており、今や中国の社会生活や経済はアリババなしでは動かなくなっている。一部の人たちはすでに「中国人民共和国じゃなくて、アリババ人民共和国だ」と言っています。「アリババ帝国」おそるべし。

#私的NC

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1億とも、2億とも、3億ともいわれる中国の中産階級。
今もっとも消費に敏いこの人たちはどんな情報を手に入れて、
なにを考えているのか。
中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業
(NHK出版新書)
書籍版、Kindle版ともに発売中。
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