【ぶんぶくちゃいな】「アメリカン・ファクトリー」:問題は米国なのか中国なのか

今年の夏は、ニュースサイトがそれぞれのSNSアカウントなどで自社サイトの新着通知を1週間、2週間、ときには1カ月停止させられるという事態が大変多く起こっていたような気がする。特に海外メディアの報道にヒントを得て、評論したり、サマライズをしたりするサイトがよくターゲットになっていたようだ。

逆に通知が流れてきたのでクリックしたらサイトがまったく開かない、というケースもあった。「404」(not found)と表示されていれば、「ああ、遅かった。記事発表後削除されたのね」と分かるのだが、今回はかなりの読者を持つニュースサイトがいつまで経っても開かない。アドレスを打ち直してみてもいつまでもぐるぐるぐるぐると読み込み続けているのだが、開かない。「サーバーダウンかな?」と思ってその編集長に声をかけたら、「食らったよ、サイトアクセスが2週間できなくなった」と返事が返ってきた。

中国のSNSを使ってその理由を聞くほどアホな話はないので、そこで話を引き取り、SNSに残っているそのサイトの過去通知に並ぶタイトルだけを目次のようにして見直していたら、ははーん、と思い当たる記事があった。中米貿易戦争に関するものだった。日本メディアはまだ「中国共産党が」「習近平政府は」を繰返していた香港デモが真っ盛りの中、中国政府の関心トップはやはり中米関係なんだなと感じる一件でもあった。

もちろん、香港デモは中国ではほぼ「禁句」状態。現状を伝える声だけではなく、あまりに過激で攻撃的な発言も削除されていて、基本的に政府系メディアが流す情報を主軸として多少のブレはゆるす――といった形でネット状の統制が取られていた。

そんなタイムラインが8月下旬、ある話題で盛り上がった。話題の中心になったのは米ネットテレビ局「NETFLIX」(ネットフリックス)が8月21日から配信を始めたドキュメンタリー映画「アメリカン・ファクトリー」。日本でも同時に日本語字幕付きで配信が始まっているが、タイトルには英語名のほかに「美国工廠」の簡体字中国語名が焼き付けられている。

もちろんこれは中米貿易戦争たけなわの夏、中国人にとってなかなか刺激的なタイトルである。

●超米国な工場跡地に中国企業が進出

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