【ぶんぶくちゃいな】全国が激震! 米国によるZTE制裁事件

4月16日(北京時間17日早朝)、米国商務部は自国企業に対して、中国の通信機器メーカー「中興通訊 ZTE」(以下、ZTE)を対象にした「直接、間接を問わず、商品、ソフトウェア及び技術を今後7年間提供してはならない」という制裁を発表した。

ZTEは1985年に中国深セン市で設立された通信機器メーカーで、家庭用電話や個人向け通信機器のみならず、大型ネットワーク製品も生産しており、スマホを含めた製品は海外市場でもトップランクに位置している。日本でもソフトバンクなどが提供しているモバイルWiFiではZTE製品が使われている。

このところ、中国と米国の間でヒートアップしつつある貿易戦争がとうとう、個別の民間企業を名指しで制裁するまでになったか——世界的に認知されている大企業ゆえに、この制裁発表は大きな衝撃を引き起こした。

北京時間の翌18日には、2016年に引退したZTE創設者で76歳になる侯為貴氏が事態の収拾を図るためか、米国行きの飛行機に乗る姿がネットで公開された。20日にはZTE本社で記者会見が開かれ、殷一民・董事長が「米国商務部の決定に断固として反対し、不公平で不合理な処罰に反対し、貿易問題の政治問題化に反対する」という声明を発表した。

だが、この記者会見に出席した経済メディア「財新網」は、実はこの会見は通信機器業界を管轄する工業情報化部(政府の省庁に相当)が手配したもので、ZTE関係者が「出席するメディアを我われが選ぶことができない」と漏らしたと伝えている。つまり、「貿易問題の政治問題化」に反対しつつ、その記者会見自体が民間企業の叫びというより、政府のお膳立てによるものだったということになる。

さらにいえば、この制裁は米国側の説明をよく読むと貿易問題とは、直接関係がないようなのだ。

米国の制裁は、米国政府がイラン、北朝鮮向けに通信機器輸出を禁止しているにも関わらず、ZTEが通信機器輸出を行って2017年に処分されたことがきっかけだった。当時、ZTEは罰金処分を受けるとともに念書を提出し、米国法を遵守し、この取引に関わった職員を処分することを約束したにもかかわらず、その後も念書の内容に違反する輸出を続けていると見なされたことが、執行猶予になっていた制裁を今回発動することになった理由とされている。

また、関係取引の責任者たちの処分も実際には行われていないばかりか、対象の一人を除き、全員にボーナスまで支払われていたことが明らかになったことで、米国政府の堪忍袋の緒が切れたという。

つまり、これは時間軸からしても、またその内容からしても、チロチロと火花を散らしあっている貿易黒字問題と直接結びつけることはできないものの、タイミング的にそのインパクトを利用した感はなきにしもあらず、中国国内では「とうとう貿易戦争がIT業界に飛び火」したと騒がれている。

そして最初は「グーグルからアンドロイドOS利用許諾を受けることができなくなってしまったら、ZTEスマホはどうなってしまうのか?」と心配されていたものが、すぐに「米国産半導体チップの提供が止まれば通信機器企業としてのZTEは終わる」という声に変わり始めた。冒頭のZTEトップの慌てぶりはそれを示すものだった。

●湧き上がった国産半導体ブーム

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