【ぶんぶくちゃいな】笑う門には「禍」来たる? 政府が恐れたおちゃらけサイト

まさか、本当に「段子」が中国共産党に脅威と見なされるとは誰も思っていなかったぜ。

事実は小説よりも奇なり。先月の書評号で紹介した中国作家のSF作品そのままのようなことが現実に起こってしまった。

「段子」というのは「ギャグ」「お笑い」で、もともとは伝統芸能である「相声」と呼ばれる漫談の一部だけを取り出すときに使われる言葉だった。それが昨今、おちゃらけたり、ストーリー性のあるジョークを飛ばすときにも使われる。ほとんどの人が、見て、聞いて、わははと笑って済ませる、たわいのない民間小話である。

もちろん、庶民の知恵比べのようなものだから政治ネタすれすれのものやエッチなものがあったりもする。だが、中国というお国柄、もともと地雷を踏むつもりもない人たちは場をわきまえているし、もしうっかり警戒線を超えたとしても、それはさっと削除されて終わる——そんな中国ネット界の作法はとっくに誰もが知っている。

だから、2012年から続いてきた「段子」作品投稿サイト「内涵段子」が、4月10日に国家広播電視総局(以下、「広電総局」)によってサイト全体の「永久閉鎖」を命じられ、すぐさまサイトにアクセスできなくなったことに誰もが驚いた。たかがお笑い提供サイトじゃないか?!

だが、4月10日午後に「内涵段子」が閉鎖された時、人々の眼はその前日に起こったニュースキュレーションアプリ「今日頭条」「鳳凰新聞」「網易新聞」「天天快報」がそれぞれ、スマホの各アプリストアから突然姿を消したことに気を取られていた。人気アプリが一挙に4本もダウンロードできなくなったことに驚いたものの、その時点ではまだ人々は心のなかで「またニュース配信に対する規制か」と思いつつ、事態を見守っていた。

姿を消したニュースアプリのうち、「今日頭条」は、AIを使ってユーザーひとりひとりの興味と関心のアルゴリズムに従って、ニュースを選び配信するのがウリ。その斬新なスタイルが人気を博して急成長し、月間アクティブユーザーは2.4億人へと膨れ上がり、都会人のほとんどが使うアプリにまで成長した。そして中国IT業界において百度・アリババ・テンセントが形成する「BAT」というトップ企業グループに次ぐ勢いで成長する次世代ビック企業「TMD」(今日頭条、美団、滴滴出行)に位置づけられるまでになった。

だが、「出る杭は打たれる」。3月末に国有全国放送の中央電視台が放送した番組が、「政府の規定に違反した虚偽報告が流れている」と「今日頭条」とGIF編集投稿サイト「快手」を実名報道。続いて、両者の責任者が当局に呼び出されていると政府系メディアが報道し、それを受けて広電総局が「『今日頭条』と『快手』の配信コンテンツに社会道徳に反するものがある」として処分、改善命令を下したことを明らかにした。

外界はこの時点でも「ちょっとグレードアップしたが、また政府による横槍か」という視点で見ていた。両サービスの運営トップも「お約束」どおり、それぞれメディアを通じてしおらしく謝罪コメントを出し、「勧告を受け入れ、より良い方向に改善していく」と前向きな姿勢を見せていた。

●政府系メディアオンパレードでわかったこと

ここから先は

5,139字

¥ 300

このアカウントは、完全フリーランスのライターが運営しています。もし記事が少しでも参考になった、あるいは気に入っていただけたら、下の「サポートをする」から少しだけでもサポートをいただけますと励みになります。サポートはできなくてもSNSでシェアしていただけると嬉しいです。