【ぶんぶくちゃいな】香港の特色ある「民主」の実現…そして誰もいなくなる?

今朝(訳注・3月30日)行われた第13次全国人民代表大会常務委員会第27回会議において、満場一致で『香港基本法』附則一と附則二改定案が可決されました。これにより、香港特別行政区の選挙制度が完備され、『一国二制度」に見合った“憲制”秩序、香港の実際の状況にふさわしく、『愛国者治港』を実現する政治体制が構築されました。わたしと香港の特別行政区政府は新たに制定された附則一と附則二をしっかりと支持します。

林鄭月娥・香港行政特別区(以下、香港特区)行政長官は3月30日午後、遠く北京で開催されていた全国人民代表大会(全人代)常務委員会で香港における今後の選挙制度改定案が可決されたのを受けて、記者会見でこう述べた。

この改定案の可決は、すでに日本のマスメディアでも伝えられている通り、ここ数年来の香港社会の期待を根本からひっくり返すような大ニュースであり、識者もまた「香港の民主化へののぞみは消えた」と論評している。

この改定案によって選挙制度はかなり複雑に切り刻まれてしまった印象である。さまざまな報道資料をもとにその手の入れ具合を理解するうちに、だんだんこれは香港にとって云々という前に、現在の中国政府の「選挙」という概念を反映するものだと気がついた。

中国政府の駐香港特別行政区出張機関の報道官も、同会提案可決についてこう述べている。

(中央政府による選挙制度の改訂は、)合憲、合法、情にかない、理にかなったもので、香港の実際の状況に見合い、香港の特色を持った民主制度の構築に有利で、香港社会のバランスと秩序の取れた政治参与を確保するのに有利で、香港特区の管理統治効率を高め、国家の主権安全と香港の長期的な繁栄と安定を維持するものである。

今後、中国政府はこの新制度を錦の御旗のように振りかざし、香港では「選挙」が行われている、香港では「民主」が維持されていると主張するのであろう。

そこで、先週に続き再び香港の話題で申し訳ないが、今回はこの新選挙制度を通じて、中国の現政府の「選挙」の概念を探ってみたい。一旦その概念を認識し、それが我われの知る選挙や民主といかに違うのかをきちんと整理できれば、中国政府が西洋社会に向かって振りかざす「選挙」や「民主」の詭弁ぶりがよく分かるはずだ。

●民選と功能組の2つで構成されていた立法会

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